番外編・永遠の二番手
なんでもそつなくこなす
目立たない男
皆さん、おはようございます。
私はガルニエ砦警備隊副隊長のハリー・リヴァン、41歳です。
本日は私の独り言にお付き合いください。
私の職務は隊長の補佐でありますが、今は戦中ではありませんので主に総務を担当し、文官の長ケラー君と一緒に仕事をすることが多いですね。
備品の管理、食料の管理、管轄内店舗の監督指導等。ただ隊に領主の子息が在籍しているので、非常にやり易いです。
他の地域では、管轄と重なる地方領主に賄賂を要求されただのと、よからぬ噂があるものですから。
半年ほど前に『森』から出てきた姉弟は、最近ではすっかり砦に馴染み、皆から可愛がられています。どうもこの国の人間に比べると骨格自体が華奢で弱々しく感じられますが、出身国ゆかりの武芸を身につけており、なかなか興味深いことです。
うちの隊ではマイヤーに近いでしょうか。彼も小柄ですが恐ろしく機敏で、独特の剣技を習得しています。
そう言えば、2人は私と初めて会った時に、『ルイージ』と呼び掛け嬉しげにしていました。故郷に似た人でもいたのでしょうか?
望まずに故郷を離れるとは不憫なことです。
先だって、近領の若い貴族にトモ嬢が誘拐されるという事件がありました。
隊員の活躍により無事解決しましたが、禁制品の使用が確認されましたので調査が必要です。使用者が領主の後継ぎであったのも由々しき問題ですが、事件後幽閉されましたので本人への接触が原則として不可能なのが歯痒いことです。
甘やかされて育ち、頭の中に飴が詰まっているような者こそ厳しい牢獄で労働の辛さとすばらしさを叩き込めば良いと思うんですが。
トモ嬢は隊員のボッシュとお付き合いされているようで、たびたび噂を耳にします。
ボッシュは恐らく本気になれば隊長をも負かすでしょうが、殆ど彼の本気を見たことがありません。入隊時から苦労したようで、与えられた任務を消化するだけの無気力な青年となっていました。それでも訓練だけはきちんとしていたようです。
守るものができて、彼も成長すると良いのですが。
私も、離れて暮らす妻と子のことを思えば、単調な暮らしにも耐えられるというものです。
本編には多分でない人です
実はジルの初恋の人