24・泣く暇があったら考えろ
姉視点です
二日くらい、意識がなかったような気がする。
まだ喉は腫れてるし、体に力が入らない。唇も乾いてカサカサ。
相変わらず豪華な首輪は着けられたまま、だけど服が変わっている。ドレスから寝巻みたいなやつに。
え?いつの間に?
メイド部隊が着替えさせてくれたんだろうか。
もし、馬鹿男や忍者もどきがやったんなら、どんな手を使ってでも後悔させてやる。
お昼にメイドその1とその2が食事を持ってきた。
私が食べられないのが解っているので、水とお粥状の何かと摺りおろした果物。あれかな、悪名高いオートミールっぽい。まっずい。
「あの、あなた達が着替えさせてくれたんですか」
かすれる声で話し掛けてみたら、その1がむっつり頷いた。そういや初対面で私がドロドロだったのを洗ったのもこの人だった。
馬鹿様達、命拾いしたね。
ちょこちょこ話し掛けてもメイドのおばちゃん達は返事をしてくれない。たまに首を振るだけ。命令されてるからか、私なんかと喋りたくもないわ!ということなのか。
後者なような気がする。人間扱いされてる気がしないし、普通主人が未成年の少女を攫ってきて鎖で繋いだらリアクションするよね?しかも熱だして倒れても医者を呼んだ気配もない。
私がいるのが外部に洩れないようにしてるのか。まぁそうするよね。少しは世間に顔向けできないことをしている自覚があるのか。
窓の前は鎖がギリギリ届くライン。多分、ここから飛び降りて逃げてたのを告げ口したんだろうな。ムカつく!外の空気が吸いたいのに首輪が食い込んで、それ以上進めない。
心配してるだろうなぁ。捜してくれてるかな。ケータイもネットもないのに、捜せるんだろうか。でも鬼平とかホームズだって自力でやってたよね。
ん?ホームズは小説の人だったか。
待ってりゃいいよね。
リョータも、ボッシュさんも、砦の皆も。
びっくりするほど優しいから、私を独りぼっちで放置なんてしない。きっと。
「ようやく起きられるようになったんだね。あーぁ、まだ顔色悪いなぁ。前より痩せちゃってるし」
キラキラしながら馬鹿様がやって来た。自宅だからか真っ白な長いフリフリシャツの腰に青や緑、金色の紐を絡めたものをゆるく結んで、細身の紺色のパンツに手入れの行き届いたブーツを履いている。久々に見ると眩しくて不愉快。
この世界ってボタンがないんだよね。考えてみたら、機械がなければ作るのにすごく手間がかかるもんね。いつもの彼はいつものように黒いプルオーバーに黒いパンツ、黒いブーツ。黒にこだわりがあるとしか思えない!
私がこっそりファッションチェックをしていると、馬鹿様は長椅子に座って長い足を組んだ。絵になる。黙って何もしなければいいのに。
「どうやら屋敷のまわりを鼠がうろついてるようだ。鼠が多い時はどうすれば簡単に始末できると思う?」
にやけた顔で私を見つめるお坊っちゃん。鼠?鼠ってそれはまさか。
「私を捜してる人が来てるんですか?」
ちょっとテンションあがったよ?
でも、金髪男は私に返事をしないで、後ろに控えている忍者もどきを振り返る。
「数が多いのであれば、餌を仕掛けて一ヶ所に集め、まとめて仕留めるのが無駄のない方法かと」
淡々と、まるで本当に害虫か何かを退治するみたいに言う。でもそれって、あれだよね。
騎士の皆のことだよね。
強くて優しくて、厚かましいくらいに、フレンドリーで大好きな人達。
リョータやボッシュさんが来るかもだよね。
それを、まとめて仕留めるって?
「ふざっけんなっ!!何なんだ、あんたは!ヒトを何だと思ってる?!」
怒りで涙がにじんでくる。反対に背筋が冷える。ガラガラ声で喉から血が出そうだけど、思わず絶叫した。
「やだなぁ、そんな声で叫ばないでくれよ。喉が潰れちゃうよ?
前から騎士は邪魔だったんだ。戦うしか能がないのにのさばってさ。ちょっと減らすくらい何ともないさ。邪魔がなくなったら、君のことをゆっくり考えよう。飾っておくもよし、どなたかが、欲しがるかもしれないねぇ」
白い手をひらひら振って、頬にあてる。後半は独り言みたいに、ぼんやりと。その姿はとても綺麗なのに、なんで、こいつはこんななの?
「新しい衣裳を用意したからね。淡い、薄紅と白を重ねた美しい品だよ。髪飾りも用意したからね。君のその首輪にぴったりの。ふふふ、君はとてもいい餌になるだろうね」
首輪基準か!
解ってたけど私が餌になるんだ。こいつは、皆が救けに来るのを待ってたの?
罠に掛けるの?
私のせいで皆が傷つくのは嫌だけど、是非救け出していただきたい。
だんだんこいつは気持ち悪くなってきたし、相変わらず体調は悪い。
どうしよう。
落ち着け、私。
レヴァイン家長男キモいですね
書いてて嫌ですわ
今後の展開ではR15にするかもしれません。