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19・危ない時は徹底抗戦

ずっと姉視点です


素晴らしい朝が来た。

日々寒くなるけど、私は最近ドキドキしてあったかいよ。気持ち的に。むしろ熱い。

何日か前、ボッシュさんのお父さんが来た。ボッシュさんは末っ子らしくてもうお爺さんなんだけど―― 70歳位かな――優しくて格好いいお爺さんなんだわ。

ボッシュさんと似てるし。親子だから当たり前か。


それで何か解んないけど、ボッシュさんにちゅーされた。うあぁぁぁ。

思い出すたびになんか頭に血がのぼって思考停止してしまう。

あの後は親子喧嘩が始まって、結局ちゃんと話せてないんだよね。


なんで私に?好かれていると思っていいのだろうか。男は好きじゃない相手にも手を出してくる、とクラスメイトが言っていた…。


あれ以来仕事の時間が微妙にずれてて会えていない。

テンションが上がったり下がったりするので弟に変な顔をされた。これ以上心配かけられないし、なんとなく言うのが憚られる。


お姉ちゃんボッシュさんにキスされたんだけど、どう思う?



死んでも言えるか!!





「君がトモかい?」



自分の想像で何となく落ち込みながらいつもの切り株に座ってたら、誰かが声を掛けてきた。またこのパターン?

邪魔しないで欲しいんだけど。

一応挨拶しようと思って振り返ったら、知らない人だった。制服じゃないからここの人じゃないっぽい。



上等そうな、装飾の多い服装は、貴族ですか?

お爺さんと同じように、私達を見に来た人かな。珍獣扱いですかコラ。



「こんにちは」



睨み付けないように、立ち上がって会釈しておく。後で怒られたら嫌だし。



相手は若くて20代前半、くせのある金髪を長めに、ちょっと垂れ目は明るい青。甘めの美形、だけど趣味じゃない。髪伸ばすなら結びなさいよ。



「意外に普通に見えるな。おとなしそうだし。持って帰るなら、男よりは女だよねぇ」



は?何言ってんのこの人。なんか、ヤバい。



思わず後ずさると、横から手が伸びてきた。掴んでそのまま引っ張って、体勢が崩れたところを逆に捻る。無我夢中で掴んだ方の肩に蹴りをいれると変な音がして悲鳴が上がったけど知るもんか!


逃げなきゃ逃げなきゃ


貴族っぽい人と逆に走りだしたら今度は黒っぽい人が立ちふさがって、思わず息をのんだ、その瞬間にお腹に衝撃。


声が出ない 息ができない

痛い 気持ち悪い


パパ  リョータ


  ボッシュさん


そして私は目の前が真っ暗になった。







頭がガンガンする。お腹痛い。腕と肩も痛い。

要するに全身痛い。


何だか固い床の上に寝てるみたいなんだけど、その床が揺れている。

目を開けるとぼんやりと誰かの顔が見えてきた。誰?



「おわっ!突然何をするんだっ」


「誘拐犯のアホ面に蹴りをいれようとしましたが、何か?」



金髪男目前でごつい手に足首をはたき落とされて失敗しちゃった。

容赦なく叩かれて、じんじんする。

睨み付けると、推定お貴族様の隣の男は全体的に黒っぽい服を来てて、焦茶の髪は坊主っぽく短くて、同じ色の目は無表情で私を見下ろしている。コワ。

あの時私をぶん殴ったのはこいつだ。

怒りも不審も哀れみも、私を見る目にはなんにも感じられない。この人目茶苦茶怖い。イメージ的にお庭番とか忍者とかそんな感じ。


でも何をされるとしても、殺されたとしても、私の辞書に無抵抗という字は無いの。黙って馬鹿男にされるがままなんて、プライドが許さない。



「まったく、見た目と違って狂暴だな!足も縛っておけ」



お馬鹿がそう言うと、怖い人は無言で私の両足を掴んでぐるぐる巻きにした。即ロープ出てくるって、常習かよ。



「ずいぶん手慣れてるけどよくやるんですか、誘拐犯さん」



お馬鹿はちょっと引きつって私を見た。ますます馬鹿っぽい。変態な上に馬鹿って最低だな。



「人聞きの悪いこと言わないでもらいたいな。ガルニエ家が独占するあの『森』から人が出たとあっては、確かめずにいられないじゃないか。領内というだけでなぜあのような貧しく下流の家が全て保護するのだ」



そう言いながら手を伸ばして私の頬を触る。

全身鳥肌!気持ち悪い!

ボッシュさんが触った時はあんなに暖かくて幸せになったのに!

離れようとして後ろに下がったら、壁で後頭部を打った。女なんだからせめて座席に寝かせてくれない?

痛みと情けなさで目がじんわり滲んだ。



「君を持って帰ったら我が家の素晴らしい所蔵品として披露するつもりだよ。もっと綺麗にしてあげるからね」



「人を珍獣か何かと勘違いしてませんかこの野郎」



思わず低〜い声が出る。

話の筋からして、ガルニエ家っていうのはパイクさんちのことだ。お馬鹿の家はそこよりも格が上で、あの森の珍獣(私達含む)が羨ましかったので今回強行手段に出た、と。


あの砦の中は、少なくても表面上は身分のことを鼻にかける人はいなかった。騎士や文官に、ジルさん達一般人が遠慮するくらいで。騎士の中にもパイクさんみたいないいとこの坊っちゃんや、平民出身の人が混ざっていたけど、同じように訓練して同じご飯を食べていた。

きっとラーソン隊長の指導が行き届いてたんだね。


ずっとあそこに居たかったよ。変な話、ある意味理想的だったのに。同年代の女子がいないのはちょっと困ったけど。

みんな優しくて仲良くて、好きな人が居て。



ぐるぐる考えてたら、また気が遠くなってきた。


あぁ、リョータが泣いてなければいいけど。

知らない世界でたった二人の家族なのに、離れるなんて。




何事もなくいちゃつかせませんよ

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