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18・迷子その2

弟視点です


前話の裏で弟くんはこんなことしてました


いつものように朝が来て、僕はもふもふ達の世話を始めます。

水と食事を用意して、綺麗な毛並みを保つためにブラシをかけて。毛が飛び散るので寒いけど外でやるんですよね〜。


まずは大変なロボから。この子は犬で言うところのダブルコート。柔らかな短い毛とサラサラの長い毛の二重構造です。抜けた毛は集めてクッションにしたいくらいぽわぽわで、気を抜くと風に飛ばされるので要注意なんですよ。

ロボはやっぱり犬っぽく、目を細めてうっとりと伏せていました。垂れた耳がたまに動いて、なんだかとっても癒されます。

ようやく終わって、モップに取り掛かろうと思ったら

あれ?いない・・・?



普段はほとんど動かない置物みたいな良い子なのに!鳥籠と並んで日向に寝てたのに!

探さねば!ヤバいでしょうこれは。誰かに踏み潰されたらどうしよう!


僕は急いで鳥籠を持ってロボを急かして部屋に戻り、戸締まりをしてから探しに出かけました。



トカゲっぽいから、物陰とかに隠れてるんじゃないかと思って、岩影や薪の積まれた辺りを必死で探しました。



「リョータ何やってるんだい?」



ほとんど腹ばい状態になっていた僕に声を掛けてきたのはパイクさんでした。会いたかったような会いたくなかったような。


恐る恐る振り向くと、片膝をついて不思議そうにこっちを見ているパイクさんが目に入りました。今日もキラキラしてますねむかつく



「じゃなくて、あの、申し訳ありません、モップがどこかへ行っちゃいました」



貴重な生物を逃がすなんてしかもこの人が子供の頃から大事にしていた不思議な生きもの。

怒られるのは当然、これまでの無条件での保護がなくなったらどうしようとか、一瞬で最悪な未来を想像してしまい、もうパイクさんの顔を見てられなくなりました。



「あぁ、ずっと閉じ込めてるからなぁ。退屈だったかなぁ?それじゃあ、探そうか」



パイクさんはいつもと変わらない調子で言うと、膝をバシバシ払って立ち上がりました。僕に笑いかけて。いつもは頼りないのに、この時ばかりはかっこよく年相応に見えました。




「すみません、モップ見ませんでしたか」



通りすがる騎士に声を掛けたのは何回目か。もう陽は高く、僕の真上に来ていました。



「モップ…かわからないがさっき黄色い毛がその辺りに落ちてたよ」



そう言って髭面の騎士が指差したのは、厩舎の方角でした。僕はパイクさんと一緒に急ぎます。モップは馬の見物でもしてるんでしょうか?

騎士が教えてくれた地面には、確かに黄色い羽毛が散っていました。まさか何かにむしられたんじゃ…?馬に蹴られてたり?


血の気がひくような気分で呆然としていると、パイクさんに腕を引っ張られました。



「リョータ!ほら、あれ」



厩舎の中、僕の世界の牧場のように整然と区分けされた通路の真ん中に、捜し求めていた姿がありました。時々長い首を伸ばした馬に突かれながら、挨拶をするように顔を合わせていました。



「何やってんのーもぅ」



力が抜けて、引っ繰り返った変な声がでてしまいましたよ!

走り寄ってそっと抱き上げると、じっと僕の顔を見上げてきます。くぁ〜かわいいけど!心配したのに!



「はぁ、よかったね。馬が好きなのかな?昔は時々巡回にこっそり連れて行ってたんだ」



じゃあもしかしてパイクさんの馬に会いに来てたのかな?やっぱりモップは知能が高いような気がします。偶然来たのでなければ、自分で厩舎まで辿り着いたわけだし。




モップを連れ戻したらもうお昼で、そのままパイクさんと食堂へ向かいました。さんざん変なところを捜し回ったので、お腹は空きすぎて痛いくらいです。



「ハハ、リョータよく食べるようになったね!背も少し伸びてるし、段々男らしくなってきた」



お気付きでしたかパイクさん!多分、2、3センチは伸びてますよ!発言の後半が微妙に引っ掛かりますがね。



「食べて、訓練してるからだと思います。パイクさん達のお陰ですね」



めざせ隊長!ですからね。


「そっかー。訓練といえば僕の入隊の時の先生が、今日ここにいらっしゃる予定なんだ。多分リョータとトモに会いにくるよ。鍛えてもらう?」



人のよさそうな顔で言うパイクさん。鍛えられるのは嫌いですよ。なんで嬉しそうなんだろう。いつもボッシュさんやレオさんにのされてるのに。

それに、僕には目標ができたんですよ。だから必要なのは知識なんです。



「パイクさん、僕はロボやモップだけじゃなくて、馬なんかの医者になりたいんです。僕の世界には獣医といって、動物専門の医者がいたんですよ。騎士にとって馬は大事でしょう?他にも農耕に使う牛だとか鳥だとか・・・」



厳密には馬とか牛とか微妙に違う気がするんですけどね。



「それは…素晴らしいね。うん、応援するよ」



うまく整理できずに語ってしまったけど、パイクさんには伝わったようです。

さすが同志。解ってくれると思ってました!



満ち足りた気分で食事を終えて、僕は部屋へ戻りました。疲れたから昼寝させてもらいましょう。



このあとパイクは午後の訓練に向かいました。

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