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15・大事なのはあのこの気持ち

姉 ボッシュ視点です


今日はパイクさんはお休みらしい。朝早くからきて弟と獣達と遊んでいる。

本人達は遊びじゃなくて調査だとか言ってたけど。

最近はモップには触れるようになった。肉食じゃないというのもあるけど、たまに何か言いたげに見てるんだよね〜。ロボは隙を見せるとじゃれようとするからだめ。


部屋が狭いから散歩でもしようかな。



今日はもうずいぶん寒い。もう一枚くらい着たほうがよかったかな。

そういえば、騎士にはマント、て思ってたけど、この国では使わないらしい。ボッシュさんに聞いてみたら『そんなひらひらしたものつけて戦えるか』と言われてしまった。確かに。風の抵抗強そうだ。

王様とか、王宮で身分の高い人が儀礼服として使うんだって。


実戦重視なのは、20年くらい前まで頻繁に隣の国と戦争をしてたかららしい。


わりと最近だよね。戦争があったらパイクさんやボッシュさんも戦いに行くんだろうか?すごく、いやだ。



気分転換の散歩で暗くなってしまった。何やってんだろ。こんなだから弟に妄想するな〜とか言われるんだね。はぁ。



「ため息ついてどうしたのトモ」



急に話し掛けられて飛び上がりそうになったよ、ジルさん!


お茶に誘われたので有り難く押し掛ける私。だって寒かったから。

初めて入るジルさんの部屋は、物は少ないけど清潔で花柄でかわいくて、イメージ通りだった。窓辺に小さな一輪挿しがあって、綺麗な朱色の花が生けてある。


「この花って」


「パイクさんが下さったのよ。この季節にしか咲かない花」



やっぱり。パイクさんが浮かれて花持ってるのを見たんだよ。それにしても。

聞いていいよね。誰もいないし。ガールズトーク!



「あの、さぁ。ジルさんは誰が好きなの?」



直球過ぎたかな?ちょっとびっくりした顔のジルさんかわいいんだけど。



「誰って」


「ジルさんなんで誰も選ばないのかな、て。なんか陰でこっそり賭けの対象になってるの、知ってる?」



ジルさんはなんでか困った顔をしている。まさか気付いてない訳じゃないよね?あれだけアプローチされてて。



「パイクさんと、レオさんと、ケラーさんと、」



指折りながら言っていくとジルさんが笑った。



「ボッシュさんね」



・・・なんでだろう今ちょっとイラッときた。

ジルさんが続けて何か言うのかと思ってお茶を啜ってカップ越しにじーっと見ると、悩むように首を傾げていた。




「選ぶなんていうのは、皆さんに失礼だわ。身分が違うもの」



悩んだ挙げ句それですか?他に好きな人が…とかじゃなくて?



「本気の人にはそっちのほうが失礼だと思うけど。好きじゃないとか嫌いとか、ジルさんの気持ちが知りたいと思うよ」



あの中で少なくともパイクさんは本気だ。純粋に高校生みたいに。身分というなら無理矢理ジルさんを手に入れられるのに、それをしないじゃないか。パイクさんは恩人だから、できるなら幸せになって欲しいんだけど。

ボッシュさんもだけど。ボッシュさんかぁ。うーむ。



「本当はね、今仕事してて楽しいの。誰か一人の手を取って、それが壊れるのが嫌なのよね」



ため息混じりにジルさんは言う。でもそれって。



「すっごいヤな感じ。もてない女のひがみだけど。かわいそうだよ」



ジルさんは笑って、『そうね』って言った。大人の余裕?というか、私はなんでこんなに余裕無いかな。

我に返るととっっても恥ずかしくなって、ジルさんに謝って部屋を出た。




ちょっと反省などしつつ散歩を再開。


他人の色恋でむきになるなんて、初めてだわ。恥ずかしい。生意気なこと言っちゃったし。あぁ。



「今晩パイクはどうする」

「あいつなぁ、来るか?誘うだけしてみるか」


「リョータと一緒だった。あいつも誘うか」



若い騎士が木の柵に座って話してる。なんだろ。あ、この二人も休暇の人ね。弟も一緒に遊んでくれるの?



「どこに行くんですか」



後ろから声をかけると、二人はビクッとした。



「あ、トモさん?いや、ちょっと男同士親睦を深めようかと。な?」


「そうそう!ここじゃリョータは恋人もできないし」



へー ほー ふーん…なにやらイカガワシイ所にパイクさんと弟を連れていこうということなんだ。



「リョータは子供だから夜の外出はダメです。代わりに私を連れていってくれます?」



仕事で鍛えた胡散臭い笑顔で言ってやると、二人は真っ赤になって口をぱくぱくさせてから、手と首を振った。フン!やらしい!







○ ○ ○ ○



午前中の巡回から戻ると、トモがやけに赤い顔で歩いているのを見かけた。やけに薄着だし、風邪ひいたらどうするんだ?

馬を小屋に返してから、トモの歩いていたほうへ行ってみた。


あまり人の来ない所、建設時の資材がそのまま置かれた場所で、トモは大きな石に腰掛けていた。

考え事をしているのか、ぼんやりと空を見上げている様子はひどく小さく、無防備に見えた。



「風邪ひくぞ」



驚かさないように近づいて声をかけると、振り返った顔が赤い。やはり熱でもあるんじゃないか?

無いよりはましだろう、俺の上着でも着せておこう。トモは無言のままだが肩から羽織らせた。



「すいません。…私に優しくしなくていいです。今日の私は嫌なやつです」



俯いたまま、そんなことを言うので困る。随分弱っているようだ。


突然見知らぬ世界にやってきて、帰ることもできない子供だ。不安にもなるだろう。いつも淡々と仕事をして過ごしているから、気遣うことも忘れていた。 

手を伸ばして頭を撫でる。いつものように笑うかと思えば、さらに泣きそうな顔になってしまった。


もうどうしていいかわからない。


とっさにもう一方の手も伸ばして、小さな体を両手の中に閉じ込めていた。宥めるように背中を優しくさする。昔に親からそうされたように。


この気持ちはきっとそう、そういうことだ。

気持ちも色々ありますね


ジルさんはほんとに選べないんです。嫌われそうですけど。そういう人いるんですよね。自分を偽れないある意味正直なのかな?



トモとボッシュは甘いんだかなんだか…

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