14・天才がデレた?
ずっと弟視点です
滅多に無い興奮状態のケラーさんに引きずる様にして連れてこられたのは、鍛冶屋さんや武器職人さんのいる区画でした。
危ないのとうるさいので、砦の本棟や食堂など生活区域からは離れた位置に建っています。暗い道程を迷うことなく突き進んで、ようやく手を離してもらえました。
「見てくれ、リョータ」
なにやらごついおじさんやお爺さん達がしゃがみこんでる中心を指差して、ケラーさんは誇らしげな顔をしました。いやほんとこんなに感情をだしたのは初めて見ました!子供みたいですよ?
ケラーさんに急かされて、おじさんの固まりを掻き分けて進むと目に入ったそれは、
「ポンプだぁ・・・」
まさしくポンプでした。にょろっとした把手を何回か上下さすと、ややぎこちなくですがシュコシュコとポンプっぽい音がします。
おじさんが本体を持ち上げて桶に張った水に下部をつけ、促されてまた手押しをすると、吸い上げられた水がちゃんと出てきました!
すごすぎます。去年僕が自由研究で昔の道具を調べた時に、たまたま見た手押しポンプの構造。シンプルだから今もまだ使われているけど、設計図を覚えていただけで、細かいところや造り方は当然わからなかったのに。
「これはまだ試作品だからな。改良をしていくんだ」
ちょっと落ち着いたケラーさんが、ポンプ第一号を撫でながらそう言いました。
「ケラー様は流石だねぇ!仕事がお忙しいのにこんなもんまで造っちまうんだから」
おじさん達が頷くのに僕も当然同意です。ダメ元で頼んだのに、やつれるくらい真剣に取り組んで、実現させたケラーさん。かっこいいですね。人知れず働く大人の男って感じです。
「ジルさんも喜びますね」
そう言ってみたら、顔色が悪かったケラーさんはみるみるうちに赤面して黙ってしまった。デレ?うわ〜。からかってごめんなさい。
短いですがキリのいいところで