番外編・小さな呟き
我がこの国へ来て8年になる。
故郷の森にて木の実を集めていたはずが、いつの間にやら見たこともない森にいた。
食物を探して彷徨っていたところ、森が途絶えて拓けた道に出ていた。
「あっ!ちょっと待って」
適当に歩いていると、背後から声をかけられた。
振り向けば見たこともない生きもの。
後足で立ち、体には毛ではなく別の素材を複雑に纏いわずかな金色の毛は頭部にのみ生えている。
それは瑞々しい草の新芽のような色の目を大きく見開いて、我を見ていた。
「森から出て来たね!うわ本物だ!変わった生きものだなぁ。初めて見たよ!」
無遠慮に前足を伸ばして触れながら、我が思ったのと同じようなことを言う。
我らの出会いはそのようなものだった。
あのパイクという生きものは大きさが変わって長くなった。
我はあれの言うことはわかっているが、我は言葉を発することはできないので、意思の疎通はかなわない。
しかしあれの我を見る目は変わらない。好奇心と喜びに満ちている。
同居している大型の獣とはお互いに意志が通じないが、おとなしいので問題はなかった。
最近、我らの部屋に二足の生きものが二匹来た。
パイクは我らに触れて、
「この子たちを頼むよ」
と言って笑った。
二匹ともおとなしいが、毛の長いほうは視線が危うい気がする。
我を見ては「モップ」というのは、名付けたつもりであろうか?
もう一匹はパイクと似て、我に触れたがる。
親元を離れて不安な子供等のようだ。
髪の短いほうは、我を腹の上へ乗せて眠る。
いつしか我もそれに慣れ、いつも心地よく眠れるようになった。
パイクにとっては、現代の人が遺蹟でお宝を発掘したような気分だったので、大事にはしているけど名前を付けてかわいがる、という感じではなかったのです。




