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9・ジルさんのハーレム

姉 弟 の順に視点変更です


すばらしい筋・・いえ、ラーソン隊長との対面からしばらくして、私達は少しだけどお手伝いをするようになっていた。


パイクさんは「予算があるから大丈夫だよ〜」といつもの笑顔で言ったけど。


服とか日用品だとか細々したものを揃えてもらって、ただ世話になるというのも居たたまれない。ぶっちゃけ暇だし。


暇があると両親のこととかいいところだったドラマとかやりかけのゲームとか諸々を思い出してしまい、柄にもなくイライラしてしまって。




「トモ、食堂で一緒に働いて欲しいんだけど」


弟が頼んだのか、パイクさんが見るに見兼ねたのか、ある朝ジルさんに言われて食堂に連行された。




エプロンを着せられ、スカーフのような布で髪をまとめられ、くるっと体をまわされた。ちなみに私はパンツスタイル。この辺りでは女性もはかないことはないけど、ワンピース姿が主流だ。私は動きにくいので好きじゃない。



「よし!」

「私は何をすればいいんでしょうか」


よく解らないが勝ち誇ったようなジルさんと、他の職員に囲まれている。



「トモにやってほしいのは奥から出る料理を、カウンターに来る人に渡すこと」


なるほど。それなら簡単。キッチンとカウンターに距離があり、ファーストフード店のようだな、と思っていたシステム。たまにキッチンに手伝いに入ったりしてカウンターの人が不在のことがあったから、その補充なんだね。

やったことないけど。スマイルいるのか?


「経験ないけど、頑張ります」

「一度に来たりして大変な時もあるけど、何かあったらすぐ呼んでね」



ジルさんは皆に飲み物を配ったりテーブルを拭いたりする係。食べに来るのが男ばっかりで大変忙しい。

騎士の人たちは乱暴ではないけど、夜はお酒が許可されてるのでそれなりにはじける。





「あれ、君初めてだね」

「新人さんがいる!」

「どこの子?隠し子?」



誰のだよ。


来る人ほとんどに興味津々の目で見られて疲れる。愛想笑いも引きつった頃、弟とパイクさんが来た。



「トモ、大丈夫?変なことされてない?」


何言ってんのこの子。食堂で何をされるというのか。ここ最近心配させすぎた?


「大丈夫。そっちは」

「楽しいよ〜」



弟はパイクさんの助手として、例のペット達の世話や観察をしている。今まではパイクさんの仕事中放置だったらしいので喜んでいるらしい。ちなみにまだ同じ部屋だ。

躾けたので朝のベロベロはなくなった。



「じゃあ、食べてくるね」

パイクさんは挨拶もそこそこに、ジルさんを見つけてふわふわ近寄っていった。

なぜかニヤリとして弟も続く。



客?が途切れたので観察していると、そこのテーブルにはだいたいいつも見掛ける顔が揃っていた。


ボッシュさん(いつの間に?)、パイクさん、隊長室の警備をしているラテン系のレオさん、そして赤毛の長髪(珍しい)で私と似たような紅茶色の目のケラーさん。この人は騎士じゃなく、事務関係の仕事らしい。上着がチュニックみたいな長めので、腰のベルトには剣ではなく筆記用具やポキポキ折れて小さくなる定規等が入った筒をぶら下げている。



これでジルさんのハーレム完成。なんで弟が笑ったかわかった。

他にもジルさん目当てはいるけど、この人達に対抗する覚悟はないらしい。

なかなか強烈なメンバーだわ。

弟は同じテーブルの少し離れた席で食べていた。将来の参考にするんだろうか?勘違いされていじめられなきゃいいけど。


食事をしながらジルさんに話し掛けたり無言の牽制したりと、離れてみてると面白いけど、まわりからは人がいなくなっている。


ジルさんは誰がいいんだろう?どの人にも笑顔で優しい。


もっと仲良くなったら教えてもらおう。




○ ○ ○ ○



帰ることが(多分)出来ないとわかって、姉の機嫌は悪くなる一方でした。僕にしても、強制的に進路変更させられた現状はとても不愉快で不安で、この年で胃痛に悩まされることになってしまいました。


僕にとってはかわいいもふもふ達に囲まれているのは癒しであったのが、姉にとっては苦痛でしかなく、このままだと何かされるんじゃないかという予感がしてきたのです。ゾクっと。



そこで動物の様子を見に来たパイクさんに、どこかで働かせてもらえるように頼んでみることにしました。


「パイクさん、お願いがあるんです。僕達をどこかで働かせていただけないでしょうか?」


「うーん、そうは言っても丁重に扱うようにって言われてるし、予算が組まれてるから君らにもっと贅沢だってさせてあげられるよ」


なにげにすごい事聞きましたけど、僕達はどちらかというと貧しいのに慣れているから、至れり尽くせりは逆に嫌なんですよ。



「そういう事ではなく、僕達は受けた恩はきっちり返すように躾けられまして、今の状態は心苦しいのですよ。非力で世間知らずなので大したことは出来ませんが・・・。それに、じっとしていると故郷が思い出されて」


ここで俯いてため息〜。 


「あ、あぁそうだね、ごめんよ。立派なご家庭だったんだね」


そうでもないです。



「あ、そう言えば、ジルさんが食堂の手が足りないとおっしゃってましたね。彼女がいれば姉も働きやすいかもしれません」


「ジルさん・・・」



パイクさんは僕の顔を見ながら長考に入りました。



「そうだね、トモは食堂にお願いしようかな。リョータには、別の仕事を頼みたい」



チッ。どんだけベタ惚れなんですか。興味無いんだけどな〜。姉を見張れないじゃないですか。



「僕の仕事というのは?」

「うちの子達の世話と観察をして欲しい。僕は警備の仕事があるから殆ど時間がとれないんだ」



うわーうわー!トモごめん僕はこっちに行かずにはいられない!! 


「じゃあ明日からね」






翌朝、姉はジルさんに連れていかれました。

僕はもふもふの採寸をしたり撫でたりして楽しみました!


「よく懐いたねぇ!頼りにしてるよリョータ。

じゃ、食堂にいこう」




「これが今日のメニュー。おいしいよ」


姉は疲れてはいるものの、上手くやっているようでした。やっぱり若い男が多いので心配です。



パイクさんがいつものようにジルさん狙い御一行様のテーブルに向かったので、僕もついていきます。



「みなさんお疲れさまです・・・ジルさん、今日のワンピースも素敵ですね」



一番若いパイクさんは丁寧に挨拶してから座ります。ジルさんの前だとキラキラ度がアップして、見えないしっぽが振られている気がします。



ボッシュさんは軽く頷き、僕に視線を移してニヤっとしました。



「リョータも働きだしたらしいな。しっかりやれよ」

大人の対応です。少し離れて座ったのがよかったのでしょうか。いつもながらすかしてますね。





「あぁ、新顔な、この前隊長室で会った。姉ちゃんはしっかり者のジルが面倒みるから安心だな」


さり気なくジルさんを誉めるレオさん。この人はシャープな雰囲気がボッシュさんに似ているけど、陽気な色気がダダもれでとてももてるらしい。男くさい人がもてる国だそうですよ!僕だって年をとればきっと・・・。



「ジルは只でさえ忙しいのに、あまり世話をかけるなよ」


ちょっとパイクさんに釘をさすのはケラーさん。文官で、僕達に関する書類を整えたり戸籍のようなものを申請してくれた人です。

やせ形で眼鏡がきっと似合う、日本だと人気に違いない美形です。目の色や表情が姉に似てます・・・きっとツンデレですね。



ジルさんは誰を選ぶんだろう。

それぞれに優しく丁寧に返事をしたり微笑みかけたりするこれが、計算だったら目茶苦茶怖いですよね。



「トモはよくやってくれてるわ。リョータも無理しないで?あと、もっと食べないと大きくなれないわよ」


あんまり構わないで〜視線が四方から刺さります!



ちらっとカウンターの姉を見ると、こっちを心配そうに見てたんで手を振りました。


「おぉ、笑った」


珍しくにっこり笑うのでざわめきが!しまったまだ残ってる奴いたんですね!

このテーブルから発生したブリザードで粗方退散してたのに。



ああ、胃が痛い。これから毎日食事時も気を抜けません。


私のお気に入りはボッシュさんですよ!




読んでくださってありがとうございます。

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