終<子>を裁くモノ:04 兎河うさぎ
「友人として、情けと警告よ。その娘から離れなさい」
推理草チエミは言った。
「もう、敬語めんどいから自然体で話していい?」
「えっあ?はい、気にしませんのでどうぞ・・・」
俺はチエミを無視して、謎のことわり文句をいうと、高森ミサキは答える。
彼女は平常心を装っているように見えるが声が震えていた。
「兎河くん、うさぎくん、いいえ、こうさぎくん」
「うるせえーよ、言い方統一しろよ」
声の主の方を見ると、仁王立ちでボンネットの上に薄い笑みを浮かべて立っていた。
「民間の建物を破壊して登場とは、探偵名乗る、ましてやWSOの人間がやることじゃねえーだろ」
「探偵は、自分を探偵と呼ばないわ。兎河くん。それと、これは事故よ事故」
推理草は「新人くん」というと、黒のセダン車から20代くらいの小柄な青年がでてきた。そばかすに塗れた額の汗を拭いながら、青ざめた表情をしてる。
「ここの処理と本部への連絡よろしくね。あと、次からはヘマしないこと」
「りょっ了解です。きっ気を付けます!」
その部下は返事をすると、急いで喫茶店内から外に出ていった。
店内には、騒ぎで客や店員もいなくなり、俺と高森ミサキ、推理草だけだ。トイレに行ったまま、姿を見せないメイのことは省くとして。
「新人君のミスか」
「ええ」
推理草が厨房の方へウィンクすると、そこにいたマスターが慣れたように、デバイスを耳に当てると、後ろに引っ込んでいった。
「マスターもあんたらの一員ってことね」
彼女はボンネットの上から降りた。短いスカートから一瞬、パンツが見えかける。
「どこみてるんですか?」
隣にいたミサキは呆れ気味にジト目で言う。
「別に何もみてねえよ」
俺がそういうと、今まで黙っていたニャーがいう。
「草っち、ずいぶんな挨拶にゃ!」
ニャーが怒って推理草の方を見ていうと、彼女は笑みを返す。
「ニャーちゃん!ごめん。今は仕事中だから、終わったらもふもふしてあげるね」
「ごっごめんだにゃ・・・」
ニャーはひきつった表情をすると、俺の後ろに隠れた。
「キャラ変わってるぞ」
推理草の表情がグダけたアホヅラに変わっていた。ニヤつきながら草さんがいう。
「兎河くん。よくいうじゃない?プライベートと仕事だと人は態度が変わるって。全ての人間の前で同じ態度じゃないでしょ?」
「同じ態度のやつもいるだろ。世界をてめえ基準で測るんじゃねーよ」
「まあ、それは置いといてーー」
俺の主張を無視すると、真剣な面持ちで言った。
「その娘を渡しなさい」
「なんでだよ?」
「時間がないの」
腕につけたデバイスを指で当てつついう。
「引き渡すっていうなら、もう少し穏便でもいいだろ。らしくないな」
「変なとこに頭が回るわね」
片手には青いリボルバーを手にしている。
「彼女は抹消対象なのよ。以前のあなたと同じ」
「この子や俺に否はない」
推理草はため息をつく。
「前にも言ったでしょ?この世界のシステムからの逸脱、維持と発展の障害になるイレギュラーは存在してはならないの。今後の人類の進化と繁栄の邪魔なの」
「だから、はい、わかりましたって渡すと思う?」
「悪いようにはしないわ」
ミサキの方を見ると、彼女は怯えきった様子だった。
「ああ・・・私」
「身を守らないの?ミサキさん?それでも閻魔一族の人間?終わりのマガンを持つ人間にはみえないわね」
青い銃をこちらに向けると、
「兎河くん。あなたも知ってると思うけど、ソレは『終わり』そのものよ。悪いけど邪魔するなら、あなたであろうと消すわよ」
推理草は鋭い目つきでこちらを睨む。
「草さんらしくないな」
「無職のぼんくらに言われたくないわよ」
「無職じゃなくて作家!まだ結果が出てねえだけ!あと俺まだ学生だし!」
隣にいたミサキは一瞬、驚いた表情をしたが、すぐに俺に向き直って言った。
「早く逃げないと!!」
「この銃で撃たれるか?彼女を引き渡すか?経緯はどうであれ、高森ミサキ、これは、アナタ自身が引き起こしたことよ」
「なんのことです?」
ミサキは震えた声で言った。
推理草は、一瞬、考えると、何かに気づいたのか苦々しい顔をする。
「記憶がないのね・・・」
「いいわ、すぐに楽にしてあげる」
銃口をミサキに向けると、音声が流れる。
『 対象:レッドクラス<危険因子>。現実認識の破綻を確認。理<システム>維持のため、対象存在をリセット<初期化>してください』
俺は、咄嗟にミサキを突き飛ばした。
銃弾が肩をかすめると、衝撃波で俺は柱の方に叩きつけられた。
「ぐはっ……」
俺たちが立っていた場所の机や物が綺麗さっぱり粉微塵に消え失せてた。
「兎河さん!」
ミサキが慌てて駆け寄る。
額から血が流れてる。衝撃波で壁に叩きつけられたせいだろう。
「・・・私のせいで」
「アンタが気にすることじゃねぇーから」
ミサキは肩を貸してくれると、ゆっくりと立ち上がる。左腕も出血している。相手が知人だからって油断したのが原因だ。
それにしても、ミサキ目掛けて本気で撃ってくるとは思わなかった。
俺が忘れてただけなのかもしれない。
推理草チエミは、危険人物相手には容赦がないことを。
「ただ、ぶっ放すだけだと、品がないわね」
『もう少し品があるように努めます。マスター』
すると、推理草の文句に返答するように、その銃は喋った。
「別に責めてないわ。ただの独り言」
手にしてる銃が喋るのに動じない。それが当たり前のように振舞う。
「兎河くん、降参したら?」
「すげえな・・・なに、そのどっかのSFアニメででてきそうな銃は?」
「ええ、私のお気に入りよ」
草さんはあたりを見渡すと言った。
「メイはいないみたいね、残念」
「俺じゃ不満か?」
「ええ、反撃しようとしない今のあなたじゃね」
「あいにく、美少女と戦いたくない」
「そこは変わらないのね・・・」
推理草は悲しそうに言うと、
「悪く思わないで」
ミサキに銃口を向ける。
「やめて・・・」
ミサキは消え入りそうな声で訴えた。
「消えなさい」
銃口を向けられ、もう終わりかと思ったがーー。
「そうか。なら、てめえを消してやるよ」
その声がするとともに、風が勢いよく舞った。
銃口を構えてたはずの推理草が、手にした銃で額に向けられた刀をガードしていた。
素早く背後にのけぞると、乱れた髪を後ろに回す。
「遅かったわね。何してたの?メイ」
推理草は顔色ひとつ変えず、涼しい顔で言った。
「ああ、えっーと、べんっいやーーー」
2人の邂逅によってたてられた土煙が晴れると、声の主が言った。
「う⚪︎こしてた」
美貌にそぐわないことを言う白髪に青い瞳をした少女、イザナミメイがそこにいた。
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