出来立てのポップコーンはいかが?
短編です
照明は消え、空調の稼働する音も聞こえない。昔よく聞いていた二足歩行の動物の足音は、いつしかぱったりと聞こえなくなってしまった。
時折私に、銀色の丸い硬貨を差し出してきた小さな二足歩行の動物たちも、もはや見かけなくなっていた。
二足歩行の動物たちが少なくなってからは、四足歩行の生き物や、飛び上がりながら移動する動物の足音、地面を歩行しない空中を移動する動物が目の前を横切るようになった。
二足歩行の動物たちが行きかっていたころは、大きな音がたくさん流れていた。そのどれもが何の意味を示しているのかはわからなかったけど、にぎやかだったのは確かだ。
ここから動けなくなって、どれほどの時が流れただろう。
以前は二足歩行の動物が私を動かしてくれた。初めは外だった。小さな二足歩行の動物たちが、遊具と呼ばれる道具で遊ぶ場所にいた。いつもの決まり文句を、飽きずに発し続ける毎日。その声につられた二足歩行の小さな動物が、硬貨を差し出して来たら、私は白いふわふわした粒をたくさんカップに入れて交換した。
その場所に二足歩行の動物たちが来なくなったら、次は建物の中に移動させられた。
ほかにもたくさんの自分と似ても似つかない姿をした、小さな二足歩行の動物から硬貨を貰う同僚が働いていた。みな、私のように、体から何か音をたてたり、光を発して、二足歩行の動物を引き寄せていた。
私も負けじと声を張り上げたが、小さな二足歩行の動物しかよっては来なかった。時々私の裏側を開ける大きな二足歩行の動物がいたけど、貰った硬貨をすべて取り上げて行ってしまう。
たくさんある日も少ない日も、構わずそいつは私の硬貨を持って行ってしまった。
しかし今や、その硬貨を持っていく者もあらわれなくなってしまった。
二足歩行の動物が少なくなったころ、一度だけ現れた大きな二足歩行の動物は、何度もボディを殴ったり、蹴ったりして私をまさぐっていたが、何も取らずに行ってしまった。私のボディは傷ついたが、動力は未だ届いている。しかしその時に、少し壊れた部分があったのだろう、私の声は、かすれてしまっていた。
それでも私は、私の仕事を全うせねばならない。
私はそのようにプログラムされているのだ。
たとえ目の前に、何も来なくとも、誰も現れずとも、私は硬貨と小さなふわふわの白い粒を交換する。それが私の“役目”なのだから。
——出来立ての、ポップコーンはいかが?——
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