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#春樹サイド #ep2

「片付けるの遅いんだけど」

 放課後の教室。

 蒼依がまくった袖を直しながら、不満そうに言った。

「待ってよ。まだ掃き掃除も終わってない」

 日直の仕事である清掃活動。

 外からは、運動部の掛け声と吹奏楽部の練習音が聞こえてくる。


「これでよし、と。あとは片付けたら終わりだな」

 さっさと終わらせてよと催促する蒼依とは対照的に、春樹は窓際でのんびりと掃除用具を扱っている。

「もう、遅い。こういうのは時間との勝負だから」

「無理して急いでも、数分しか変わらないだろ」

 清掃用具を整頓しながら、机を運ぼうとしている蒼依を春樹は見ていた。


「それ終わったら、どっちが早く机を運べるか勝負ね」

「まったく。そうやっていちいち勝負ごとにするなっての」

 渋々付き合ってるんだよという様子だった春樹の手がすこしだけ早くなった——もちろん蒼依も負けじと、机をテキパキと整理していく。


「私の勝ち。春樹よりも、たくさん運んじゃった」

 蒼依が誇らしげに胸を張った。

「勝ちってお前。確かによく働いてるけどさ」

「春樹の負け惜しみかしら?」

 ふふんと、蒼依が鼻を鳴らす。

「子供じゃないんだぞ。怪我でもしたらどうするんだよ」

「今してないから良いの。それに子供じゃないんだから、怪我なんてしないよ」

「屁理屈言うなっての、まったく」

 蒼依が髪を軽くかき上げながら、得意げに微笑んでいた。

「のんびりしてる、春樹が悪いんだから——」

「はいはい、俺は何も悪くないぞ」

 春樹は軽く受け流そうとしたが、蒼依の視線がこちらを捉える。

「ちょっとは察しなさいよ、ばか」

 蒼依が不満そうに頬を膨らませた。その表情が、何かを隠しているように見えたのは気のせいだろうか。


「何に怒ってんだか、蒼依は」

 あっさり言い返す春樹の様子を、蒼依はしばらく黙って見ていたが、すぐに荷物をまとめ始めた。

「なんでもない。私、先に帰るから」

 扉を開けて廊下に出ていこうとする蒼依。その背中を見送りながら、春樹はしばらく立ちつくしていた。

(何なんだよ、あいつ)


 気心知れた幼なじみのはずなのに——その背中を遠く感じているのは、どうしてなんだろうか。

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