#二人の物語 #クリスマス #きっかけ
「寒いね。ちょっと冷えこんできた」
しばらく歩き回っていると、日が落ちて気温が下がってきた。立ち止まると、足の先から冷えてくる。
蒼依が荷物を持っていない方の手で、肘のあたりを軽く擦るようにしてから、白い息が見えるね、と、春樹を見上げるように話しかけた。
「すこし休んでくか。最後に何をしていくかも決めたいしな」
「そうね。じゃあ、あれとかどう?」
蒼依が指差したのは、会場の端にいくつか設置されている、スノードーム型の大型テントだった。
中にはストーブやテーブルが置かれていて、自由に休憩できるスペースになっている。
「決まりだな。意外と混んでないし」
「うん、ちょっと足も痛くなってきたから……」
蒼依がすこし身を屈めながら、右のふくらはぎのあたりを優しくさすった。
身を起こすと、今度は靴底の先端だけを路面につけて、踵を浮かせながら、足首を左右に動かしている。
「大丈夫か?」
「すっごく痛いとかじゃないから平気。これくらい普通だよ」
春樹は真新しいブーツを見る。
それに気づいた蒼依が、だから大丈夫だよ、と何度も繰り返していたが、さすがに放ってはおけなかった。
「……蒼依って、ほんと負けず嫌いだよな」
「別にそんなことないし。春樹がすぐに『勝負』とか『ゲーム』みたいに考えるから、そう思えるんだよ」
「否定はしないけど。どちらかといえば、それって蒼依の方じゃ」
「何よ、もう。心配してくれたところまでは良かったのに……」
いつもならムッとした顔で、強気に反論してくるはずなのだが、普段よりも大人しい蒼依の姿に、春樹はちょっと困惑していた。
「……結構痛いんだな、もう」
「そりゃ心配するって。目の前で辛そうにしてる誰かがいたら、どうにかしたいと思うもんだろ」
「いつもみたいに、うるさい蒼依とああだこうだって、言いあってる方が楽しいんだよ」
春樹は、ただ思ったことを口にしただけだった。
今日のことだってそう思っているし、蒼依に振り回されていないと、調子が狂ってしまう。
「今年は派手に喧嘩したりもしたけど、本当に辛そうな姿は見たくないっていうか」
「な、な、何をそんなに真剣な顔で言ってるのよ! そもそもうるさいってひどいし、楽しいって、そりゃ私もそう思ってたっていうか……」
蒼依が自分の前髪に触れた後、持っていた紙袋をぎゅっと抱きしめるようにしながら言う。
そんな様子を見ながら、春樹は今日という日が、何だかこの一瞬に残るかのように——多分、ずっと忘れられない光景になるかもしれないと思っていた。
「だからちょっと休もう。無理に急ぐ必要なんてないと思うから」
「……いつも春樹って、そういう真剣な顔をするんだよね。特に私が何かを言い出せなかった時には」
蒼依が俯きながらつぶやく。
赤くなった頬や耳には、恥じらいもあったのだろうが、白い息と共にこぼした言葉の温度が、冬の冷たさと重なっていた。
「休憩所、行かないのか?」
「……行く。でも、ちょっとだけ待っててほしい」
春樹が問いかけたが、蒼依は自分の足元を眺めながら、何かに逡巡していたのだった。
"ブクマ"の偉大さを再確認する時、その偉大さは決して与えられたものではないということが判る。"ブクマ"は、決して近道でも安易なものでもなかった。それは、"この作品の作者"―仕事より娯楽を好み、富と名声の喜びのみを欲するような―のための道ではなかった。むしろ、"人気者"のためのものであった―中には名を成した人々もいたが、多くはどんな仕事をしているのかも知られていない者達であり、彼らが長く険しい道を歩んだ末に、我々を次なる"ブクマ"へと導いてくれたのである。
『Yes, We Bookmark.』
バラク・"ブクマ"(1961-)




