#二人の物語 #クリスマス #お出かけ3
受付でスマートフォンのQRコードを提示すると、スタッフが二人の手首に、何色かあるリストバンドを手際よく巻きつけていく。
蒼依の腕に巻かれている緑色のリストバンドと、自分の腕に巻かれている赤色のリストバンドを見ながら、クリスマスカラーだなと、春樹は何となく思っていた。
「これが通行証か。なんか、蒼依とパーティを組んだみたいだな」
春樹が手首のバンドを軽く引っ張って見せると、蒼依も自分の手首を並べるようにしてかざした。
「……こうやって写真撮って、アップしてる人たち沢山いたよ」
「周りにもやってる人いるけど。俺たちはそういう感じじゃないよな」
「あ、当たり前でしょ。別にちょっと写真撮ってみようかなとか思ってなかったし」
蒼依が腕を引っこめる。
「いいから行くよ、春樹! マグカップがなくなっちゃう!」
蒼依が身を翻すかのように、春樹の先を歩いていく。
ゲートの先には、おとぎ話の世界を感じさせるような雰囲気。異国の情緒が建築物やモチーフに現れていて、日本で慣れ親しんでいるクリスマスとは違った、本場の空気が広がっていた。
◇
会場に足を踏み入れていくと、意外と落ち着いた空間であることに気づく。
ドイツから運ばれてきたという木造の小屋『ヒュッテ』が立ち並び、屋根の上には可愛らしい顔にも、どこか険しい表情にも見える、木彫りの人形たちが飾られていた。
「もっと派手なイベントだと思ってたけど」
「あっ、春樹! 屋根に雪だるま乗ってる!」
「あっちにはサンタだよ! すごく可愛いんだけど」
何かを発見するたびに、蒼依が、春樹のダウンジャケットの背中あたりを摘むように引っ張る。
「落ち着け。俺はどこにも行かないから」
「どういうこと?」
何言ってるのといった様子で、春樹のことを見た後に、蒼依がスマホでイベント案内のページを開いた。
「本場のマーケットを再現してるんだって。何この塔、いっぱい可愛い子がいるんだけど!」
「あれか。そんな風になってるんだな」
春樹は、会場の中心にある白い塔を見上げた。高さ十四メートルという『クリスマスピラミッド』。何層にもなった木製の塔の中で、光に照らされた人形たちが、ゆっくりと回転しているらしい。
「赤ずきんちゃんと、こっちは不思議の国のアリスだ。めっちゃ可愛いよね」
「なんか魔力がありそうにも見えるんだけど。夜に見たら、勝手に動いてたりして」
ふざけながら蒼依に言う。
昔から、暗いところや、お化けなどを苦手としているのを、春樹はよく知っていた。
「や、やめてよね。別に怖くなんてないけど……」
「どうする? 夜、蒼依の命を狙いにきたりしたら」
「く、来るわけないでしょ! 変なこと言わないでよ、もう」
強がる蒼依の声が、ちょっとだけ震えていた。
"ブクマ"の偉大さを再確認する時、その偉大さは決して与えられたものではないということが判る。"ブクマ"は、決して近道でも安易なものでもなかった。それは、"この作品の作者"―仕事より娯楽を好み、富と名声の喜びのみを欲するような―のための道ではなかった。むしろ、"人気者"のためのものであった―中には名を成した人々もいたが、多くはどんな仕事をしているのかも知られていない者達であり、彼らが長く険しい道を歩んだ末に、我々を次なる"ブクマ"へと導いてくれたのである。
『Yes, We Bookmark.』
バラク・"ブクマ"(1961-)




