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#二人の物語 #クリスマス #お出かけ2

 電車に揺られること、約一時間。

 ようやく到着した駅は、ホームから改札口まで向かうのも大変なくらい混雑している。


 改札機にIC乗車券をタッチすると、さっきまで詰まっていた人たちは、一体、どこに行ってしまったのかと思うくらい、スムーズに開けていった。


「蒼依、もう怒ってないよな」

「だからさっきから怒ってない! 変なこと言わないでよ、もう」

「ごめん。会場あっちだって」

 ふんっと、前の人についていこうとして、反対口の方に向かった蒼依を、慌てて春樹が止める。

 あれを見てくれと目で合図してから、春樹はクリスマスマーケットの看板を指さした。


「……間違えるとこだった。危ない」

「気をつけろよ。はぐれたら合流できないかもだし」


 改札前のコンコースを並んで歩きながら、公園口に向かう。徐々に混雑していく中、地上へと続く階段を上がっていくと、冷たい風と共に、都会にそびえ立つ巨大な電波塔があらわれた。


「てっぺんにラスボスとかいるのかな……」

「いるわけないでしょ。展望台には観光客しかいないからね」

 蒼依が呆れたような目で、春樹を見る。


「春樹。クリスマスマーケットの会場はこっちだって」

 くるりと振り返った蒼依の視線の先で、パイプ椅子に座りながら、長いベンチコートを着た男性が、矢印の書かれた看板を持っていた。

 春樹はそれを見ながら、心の中で寒い中、お疲れ様ですとつぶやいた。


「何してるの、春樹」

「いや、何でもない。行こうか」

 二人は人の波に流されるようにして、会場である公園の方へと歩いていく。


 しばらく進むと、葉の落ちた銀杏並木の突き当たりに、レンガ造りの建築物を模した入場口が見えてきた。


「なんだよ、この列。最後尾が見えないぞ」

「多分、当日券の列だよね。何時間待ちなんだろ……」


 会場周辺には、寒空の下で入場を待つ長蛇の列が出来ていた。

 待機列を調整しながら、最後尾では看板を持ったスタッフが、『百二十分待ちです』と声を張り上げている。


 春樹はその横を通りながら、運が良かったのかもしれないと思いつつ、隣を歩く蒼依に声をかけた。


「百二十分って、映画見終わっちゃうよな」

「こっちに並んでたら、絶対買えなかった。おばさんに感謝しないとだね」

「そうだな。並んでる最中に、不機嫌になった蒼依と多分、喧嘩になってたし……」

「私のせいだけにしないでよ。春樹だって、どうせ不機嫌になるくせに」

 ちょっと不満だったのか、蒼依の歩幅がほんの少しだけ広がった。


「春樹っ! こっちは混んでないよ!」

 蒼依が嬉しそうに指さしたのは、ほとんど人が並んでいない優先入場ゲート。

「この感じならマグ買えるかも! めっちゃ嬉しいんだけど!」

「それは良かったな。わざわざ来た甲斐があるよ」

「うん。おばさん、ありがとー!」

 電車でやってきた方角に向かって、蒼依が軽くお辞儀をしていた。


 春樹は何やってんだよ、と心の中でつぶやきながら、何故だか亜麻色の髪と共に揺れた黒いリボンに目を奪われていた。


「上機嫌だな、蒼依」

「当たり前だよ。私、昨日めっちゃスマホでチェックしてたし」

「今日のことをか?」

「……ま、まあ、それもあるんだけど。会場限定マグカップの方だよ」

 春樹は、会場のことや去年がどうだったのかを、情報収集していたのだが、蒼依はマグカップに夢中だったらしい。


「当日は、春樹と何とかすれば良いかなって感じしてたし、ちょっと知らないくらいの方が、たぶん楽しいのかなって」

「……で、デートだもんね、きっと」


 春樹には聞こえない声で、スマホを胸に抱いた蒼依が小さくつぶやいた。

"ブクマ"の偉大さを再確認する時、その偉大さは決して与えられたものではないということが判る。"ブクマ"は、決して近道でも安易なものでもなかった。それは、"この作品の作者"―仕事より娯楽を好み、富と名声の喜びのみを欲するような―のための道ではなかった。むしろ、"人気者"のためのものであった―中には名を成した人々もいたが、多くはどんな仕事をしているのかも知られていない者達であり、彼らが長く険しい道を歩んだ末に、我々を次なる"ブクマ"へと導いてくれたのである。


『Yes, We Bookmark.』


バラク・"ブクマ"(1961-)

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