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#二人の物語 #クリスマス #約束2

 翌々日の放課後。

 終業式を明日に控えた中学校の昇降口は、帰宅する生徒たちで賑わっていた。


「蒼依には、あとでメッセ送っとけば良いかな」

 春樹は下駄箱から、ちょっと汚れている通学用のスニーカーを取り出しながら、この前の話を蒼依にどう伝えようかと迷っていた。


「春樹まだいた! 一緒に帰ろ」

 春樹が振り返ると、蒼依がベージュ色のマフラーを揺らしながら、階段の方から駆け寄ってくる。


「ちょうど俺も蒼依に用があったんだ」

「用? 今のうちに聞いといたほうがいい?」

「歩きながらでいい。早く帰ろうぜ」

「うん。ちょっと待ってね」

 蒼依が下駄箱から、赤と青のラインが入ったスニーカーを取り出すと、大掃除の後で、風で舞ってきた落ち葉くらいしかゴミがない床にそれをゆっくりと置いた。


「明日で学校終わりかー。クリスマスにお正月〜」

「春樹は何貰うか決めてあるの?」

 スカートが広がらないように、ゆっくりとしゃがんだ蒼依が靴を履き替える。


 ぱっと立ち上がると、お待たせという言葉と共に、春樹の隣に並んだ。


「特に決めてない。ゲームも貯金で買ったし、今欲しいゲームソフトも特にないからな」

「だよね。春樹って、そういうのに浮かれたりしないし」

「楽しみにはしてるけどな。俺だって、普段と違う空気感とか好きだぞ」

「えー、どうだろう。あんまりはしゃがなくてもいいと思うけど」

「何なんだよ、まったく」

 二人は並んで校舎を出る。正門からの長い坂道を下りながら、春樹はタイミングを見計らっていた。


「あのさ、冬休みのことなんだけど」

「ゲーム三昧の日々だよね。知ってるけど」

 蒼依が不思議そうに首を傾げる。春樹はポケットに手を突っ込んだまま、そうじゃないと目で合図をした。


「クリスマスマーケットって知ってるか」

「聞いたことある。すごい人気だってニュースで見たけどっ!」

 じっと見つめられると、やりにくいんだよなと思いながら、春樹は話を続ける。


「蒼依と一緒に行ってこいって。うちの母さんから言われた」

「ふーん、春樹のお母さんからかぁ。春樹からじゃないんだ……」

 蒼依がつまらなさそうに、マフラーへと鼻先まで埋めた。


「当たり前だろ。そんな混雑する場所に、俺が率先して行くわけない」

「そもそも存在すら知らなかったくらいだぞ」

「だったらいい。無理してまで、私たちが行くようなところじゃないと思う」

「じゃあ勉強のお礼は別の形でするから。クリスマスプレゼントとかで良いのかな」

「だから何もしてくれなくて良いって、何度も言ってるのに……」

 何故か歩幅を広げた蒼依を、春樹は急いで追いかけながら、声を掛けた。


「どうしたんだよ。行くのが嫌って訳じゃなくて、ただ人混みが苦手なだけで」

「蒼依だってこういうの好きだろ。うちの母さんがそう言ってたからさ」

「……違うよ。春樹は何も分かってない」

 振り返りもせずに、蒼依がぼそりとつぶやいた。


「ほら、俺も興味はあるんだ。スノードームとか作ってみたいなって思ってたし、このサンタクロースが載ったホットチョコレートとか、蒼依が好きそうだなって思ったし」

 春樹はスマホを取り出すと、開きっぱなしになっていたブラウザのページを、蒼依に見せる。


「……高い。入場料も電車賃もかかるよ」

「もしかして、拗ねてるのか?」

「拗ねてないし! もう春樹なんて知らないから!」

 腕を組みながら、徹底抗戦といった様子の蒼依に、春樹はまいったなと頭をかいていた。


「ごめん。俺が悪かったから、もう一度だけ聞いてほしい」

「……うん。クリスマスマーケットだっけ」

「好きだろ、こういうの。蒼依となら楽しめそうな気がするんだ」


「もう良いよ。無理はしないで」

「いや、だからそうじゃなくて」

 蒼依が振り返りながら、春樹の前で立ち止まった。


「違うよ、春樹。ふ、普通に誘って、って意味……」

 うつむいた蒼依が、視線を外しながら、マフラーに顔を埋めていく。


「今度のはさっきのと違うから。行くかどうかを決めるのは、私の気分次第だけど」

 その様子をじっと見つめていた春樹と、二、三回だけ視線が合ったが、そのまま二人の間では沈黙が続いていた。

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


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