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#二人の物語 #クリスマス #ファミレス3

 春樹の美味しそうなハンバーグが半分くらい減った頃。蒼依が頼んでいた料理が、配膳ロボットによって運ばれてきた。


 指示通りにトレーから、釜焼き風パスタを手に取ると、蒼依はそれを自分の前に置いた。


「ねぇ、これすっごく美味しそう」

「頼んだの正解だったかも。正解だよね、春樹!」

 美味しそうな香りが食欲を刺激する。空腹なのもあってか、蒼依のテンションが普段よりもだいぶ高かった。


「それは分かるけどさ、絶対に熱いからな。本気で火傷する」

 焼き目のついたチーズが、赤い陶器の器のてっぺんで泡立っている。まだ熱々だからか、器の縁から溢れるように溶け落ちていた。


「でも、チーズは熱い方が絶対に美味しいし……」

 蒼依は、さっそくフォークを手にして、今すぐ食べる準備を整えていたのだが、ちょっと冷静になった。

 家ならまだしも、熱いものに翻弄されてる自分の姿をこんなところで披露したくはない。


「ここにきて、まだ、私食べられないの……?」

「頼んだのは蒼依だからな。どんまいだ」

 春樹がライスを頬張る。蒼依はほんのちょっとだけ羨ましかったが、頼んだ料理が食べられる程度にまで、早く冷めてくれることだけを願っていた。


「もう、春樹食べ終わっちゃう」

「冷ませばいいじゃん。息吹きかけて」

「嫌だよ。他の人もたくさんいるのに」

 春樹がよく分からんといった様子で、食事に戻ろうとする。


 確かに蒼依も細かいことを気にしすぎだとは分かっていたが、食べられるまでずっと息を吹きかけるのは、やっぱりちょっと恥ずかしかった。


「……ちょっと待ってるから。一人だけ食べてるのも、なんか変だろ」

「ありがと。一人だけ食べてるのは気まずい」

「俺的には面白いけどな。蒼依が食い意地張ってる感が出て」


 からかうような春樹の物言いに、思わず、ムキになって言い返しそうになったのを、蒼依はぐっと堪える。お腹が空いているので、本気の喧嘩になりかねない。


「……良いじゃん、別に。好きなもの食べて、何が悪いのよ」

 ちょっと悲しくなってきた蒼依は、気を紛らわせるかのように、もう一度、料理を見てみた。


 湯気はのぼっているが、さっきのように、いかにもオーブンから出したばかりといった様子ではない。

「大丈夫かも。お腹ぺこぺこだよ、もう」

「……じゃあ、いただきます」

 フォークを入れて、焼き目のついた表面のチーズを軽く避けていくと、えんじ色のボロネーゼソースの層が見えてくる。


 蒼依は、さらに奥にあるパスタをフォークで軽く巻き取ると、それを丁寧にチーズとソースに絡めてから口へと運んだ。


「美味しい。春樹もちょっと食べてみる?」

「いや、いいよ。あんな風に待ってたのに、ここで俺が食べるのは気が引けるし」

「遠慮しなくていいから。こうやってチーズとソースをバランスよく絡めると美味しいんだけど……」

 パスタにチーズとソースを絡めながら、フォークに巻きつけていく。一番いい塩梅になったのを、蒼依は春樹に差し出した。


「こんな感じで。ほら、食べてみて」

「あー、分かった。次来た時にでも、頼んでみるから……」

 蒼依の予想とは違って、春樹の反応が悪かった。


「もしかして、お腹いっぱいなの?」

「そうだな。もう食べられない」

「でも、まだハンバーグ残ってるけど。ライスも食べ終わってないし……」

 蒼依が不思議そうに見つめていると、春樹が、何かを言おうとしては思いとどまることを繰り返す。


「そっちは別腹だから。ちゃんと食べるよ」

「……なんか春樹ちょっと冷たいかも」

 蒼依は、春樹のために巻いたパスタを頬張りながら、ちょっとだけ落ちこんでいた。思わず、子供っぽくテンションを上げてしまったことや、ああいう行為は行儀が悪かったこと。


「……美味しい。でも、春樹待たせちゃうし、行儀悪かったし」

 ちょっと非常識だったかなと、後悔しつつ、蒼依は黙々とパスタを食べ進めていく。


 そういう余計なことを考えると、また落ちこんでくる。蒼依がちらっと見てみると、春樹もこちらを見ていたのか、目が合ってしまった。

 何かを言いにくそうにしながら、春樹が頭をかいていた。昔からの癖で、変なことを考えてる時に、こうするのを蒼依はよく知っている。


「……間接キスになっちゃうだろ。さすがに俺もそういうのは気にするっていうか」

「な、なんでそんな変なこと気にしてんのよ! 別にそんなつもりないし、か、考えすぎなのよ、春樹は!」

 蒼依は動揺していた。言われてみればそうだった。


 取り皿に分けるならまだしも、自分が使っていたフォークで差し出すなんて、たしかにあり得ない。


「気にするだろ! 俺たちだって、もう中二なんだぞ?」

「知らない! 気にしすぎ! これくらい普通よ!」

「顔を真っ赤にしながら言うセリフじゃないぞ」


「もう、このバカ春樹っ!」

 蒼依もよく分かってはいたのだが、正直にそれを口に出すと負けた気がして、やっぱり素直になれなかった。

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