#蒼依サイド #一歩目
きっかけは些細な喧嘩だった。高校に入っても、恋人がいないことを揶揄われて、つい売り言葉に買い言葉で応じてしまった。
本当は——
いや、誰にも絶対言えないけど——むしろ好きってくらい。
でも、それを直接伝えるなんてできない。
何かが変わるのが怖い——良い方向ならともかく、悪い方向に進むなんて嫌だから。
そんなわけで、結局こうなった。
「だから勝負ってこと。春樹が私を好きになったら私の勝ち。私が春樹を好きになったら負け」
「勝負って——」
「れ、恋愛って、ゲームみたいなものだから」
軽く言ったつもりだった。
ゲームという言葉だって、素直になれなかっただけ。だって、もし告白なんかして、春樹と普通に話せなくなっちゃったら——
だから、こういう風にすれば——もうすこしだけ、近づけるかもって。
春樹の目が一瞬泳いだ。変なの——戸惑ってる。それでも、真面目に返してくるのが春樹らしい。
「恋愛って、もっと真剣に取り組むもんだろ」
「真剣ってどういうこと?」
「結婚を前提に付き合うとか——」
春樹が頭をかきながら目をそらした。
まったく。結婚って、そんな先の話は——
「なによ、それ。真剣に考えすぎだよ」
思わず、私も視線を落としてた。これ以上、あいつの目を見ていたら、顔に出ちゃいそうで怖い。
「ばーか」
春樹が一瞬ポカンとした顔をした後、呆れたように笑った。
でも、やっぱり——
そんなちょっとバカなところが、好きかも。




