#春樹サイド #ep5
ある日の休日。
駅前を歩いていると、親子連れと出会った。
自分の子どもを熱心にスマホで撮影する父親。画面越しに子どもの姿を確かめながら、何度も角度を変えて撮っていく。
父さんも、よくこんな風に写真を撮っていた——
カメラを構えて、ふとした瞬間を切り取っていく。自分が小さい頃に、そうやって撮られた写真がたくさんあった。
「父さん、なぜかカメラで撮るのが好きだったんだよな」
ふと壊してしまったカメラのことを思い出す。
動揺していた俺に、父さんは『そろそろ買い替えようと思ってたんだよな』と優しく笑っていた。
でも、本当にそれで良かったのだろうか。
あの後、父さんは、新しいカメラを買うことはなかった。
「悪いことしちゃったよな。壊すつもりなんてなかったんだけど……」
確かに、俺は許されたはずだった。けれど、ずっと心のどこかで引っかかっている。
壊してしまったことだけじゃなくて、それ以来、父さんがカメラを持たなくなったことに。
日常を切り取るようにシャッターを切っていた父さんの姿は、もうない。
それが、ただの偶然だったのか、それとも——
『き、今日のことは忘れていいから』
蒼依の言葉が、不意に頭をよぎった。
忘れていいものと、忘れられないもの。
——言えなかったことが、ずっとそこに残り続けてしまうのだとしたら。
きっと簡単な一言で済んでしまうのに、どうしても言えない。
勝負とか試練とか、いつだってそんな理由に流されてしまう。
ずっと重く残るのは、言えなかった後悔の方だって、俺はよく知っているはずなのに。
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