HR 大親友
「それではHRを始めます」
やれやれ、やっとHRか⋯⋯。
長い1日だった
俺の名前は和田洋平。
中学2年生。
今はHR中だ。
今日は忙しい1日だった。
1時間目は不法侵入の不審者退治。
2時間目は織田信長の救助。
3時間目は毒殺計画の阻止。
4時間目は美人教師との禁断の恋。
5時間目は忍者との激闘。
6時間目は魔王討伐。
どれも夢や妄想のなかでの話だが、俺は確実に強く成長していた。
ドッドッドッドッドッ!!
廊下のほうで階段を駆け上がっているような足音が聞こえた。
どうやら人数は1人ではないようで、4~5人はいるだろう。
「「「きゃあああああああ!?!?」」」
女子生徒の喧しい悲鳴が校舎に響き渡った。
その瞬間、黒い目出し帽を被った全身黒ずくめの4人組が俺の教室に乱入してきた。
体格からして全員が男だろう。
「なっ!?何なんですか!?あなた達」
担任教師の黒井先生が慌てふためくと、4人組のうちの1人が「うるせぇ!」と怒鳴りながら黒井先生の喉元に刃物が突きつける。
(いかん!黒井先生が人質に取られてしまった!)
「動くな、ガキ共ッ!!妙なマネしやがったら、この女を刺し殺すぞ!!」
(なんて酷いことを⋯⋯、いや待てよ?これって本当に現実なのか?今まではずっと妄想や夢だった。ということは⋯⋯)
俺は頬を思いっきり抓ってみる。
(イタタタタタ!!)
(⋯⋯アレ〜?覚めないなぁ)
次は腕を思いっきり抓ってみる。
(アウチッ!!)
(⋯⋯アレレ〜?覚めへんなぁ)
その次は鼻の穴にペンを思いっきり突っ込んでみる。
(オーマイガー!!)
(⋯⋯アレレのレ〜?覚めへんがなぁ)
(ってことは⋯⋯まさか、現実!?)
「オイッ!そこの小僧!さっきから何してやがる!?」
(ヤバい、バレた!)
男はズカズカと俺の前まで歩いてきた。
そして、俺の胸ぐらを掴み、目の前で刃物をチラつかせながら「死にてぇのか!?」と怒鳴り散らかす。
(こ、怖ぁ〜〜)
(どうしよう〜、黒井先生の命はどうでもいいが、俺の命はとっても大事だ。死にたくない死にたくない死にたくない)
俺はビビりすぎてしまってブルブルと震えが止まらない。
もはや電マだ。
(なんとか自分だけでも助からないかな〜?)
俺は周囲を観察する。
敵の数は4人で、そのうち1人は人質として黒井先生を捕らえている。
さらに、敵は4人ともナイフのような刃物を持っており、安易に近付くことはできない。
俺の周りには、今にも泣き出しそうな美女・望月さん、ビビって大泣きしている厨二病・土田くん、いつも寝ていて今もスヤスヤ寝ているヤンキー・光石くんがいる。
どいつもこいつも役に立たなさそうだ。
おや?光石くんの足元に、俺の大親友・モップくんが倒れている!
ほほ〜ん、光石くんは今日の掃除当番だから、早く終わらせようと既にモップくんを準備してたってわけか!
そのモップくんは俺の唯一の友達であり、なんでも話せる大親友だ。
よし!ここは大親友・モップくんの力を借りよう!
俺はこっそりモップくんを手に取り、「キィィィィィ!!!!!」と奇声を上げながら4人組に向かっていく。
相手は刃物を持った大人の男性4人組。
圧倒的に不利な戦いだが、俺とモップくんの絆の力を舐めるなよッ!
これまでの妄想と夢のなかで培った戦闘技術を駆使し、アレヨアレヨと4人組を地獄の底に叩き落とした。
「そこまでよ」
「はにゃ?」
振り返ると、このクラスで1番ブサイクな毒島さんを人質にとる黒井先生の姿があった。
なんと!黒井先生もグルだったのだ!
「それ以上、動くと毒島さんの命はないわ」
「いいよ、ブスだから」
俺は黒井先生の脅しに屈することなく、毒島さんもろともモップくんで地獄の底へと突き落とした。
「フゥ⋯⋯、終わったな」
俺は警察の事情聴取を終え、自宅へと帰ろうとしていた。
「待って!」
小鳥の囀りのような声で呼び止められ、振り向くとそこには望月さんの姿が!
「私達を助けてくれてありがとう!あの、せめてお名前だけでも教えてください!」
「フッ⋯⋯、名乗るほどの者でもないさ」
俺はそう囁き、ハードボイルドに立ち去る。
名前、知られてなかったのか⋯⋯。
まぁ、いいだろう。
俺は名乗るほどの者ではない。
これからも、俺はこの学校を守っていく。
名もなきスーパーヒーローさ。




