4時間目 ホーニー
「How are you ?」
金髪美女が爽やかな笑顔で俺に話しかける。
彼女はマライア。
ALTの先生だ。
「⋯⋯アイム ホーニー」
マライアは「Oh !?」と困ったような反応を見せると、赤面しながら他の生徒に話を振った。
「キミを見てると、アイム ホーニーね。」
俺はそう続けて、愛するマライアにウィンクした。
俺の名前は和田洋平。
中学2年生。
今は英語の授業中だ。
ここは日本。
そして、俺は日本在住の日本人。
それなのに、何故か英語の授業を受けている。
おかしいだろ?
日本にはこんな言葉がある。
「郷に入っては郷に従え」
簡単に言うと、「その土地のルールに従え」という意味だ。
つまり、「日本に来たら日本語を話せ」という意味でもある。
しかし、全ての外国人が日本語を話せるわけではないだろう?
もしも、日本で外国人美女を口説く時に、その外国人美女が日本語を分からなかったらどうするんだい?
ずっと〝アイム ホーニー〟のままだ。
だから俺達は英語を学ぶのさ⋯⋯。
俺はこのクラスの誰よりも、大真面目に授業を受けていた。
しかし、世界はそれを許してくれない。
⋯⋯ワッツ!?
オーマイガー!!
なんてこった!
突然、刃物を持った謎の2人組が教室に乱入し、俺の愛するマライアを取り押さえた。
そして、俺の愛するマライアの喉元に刃物を突きつけながら「動くな!」と怒鳴った。
い、いつの間に!?
授業に夢中だったとはいえ、この俺に気付かれずに学校へ侵入するとは⋯⋯。
コイツら⋯⋯只者ではない!!
謎の2人組は目出し帽を被っているため顔はよく分からないが、声や体つきで2人は男だと分かった。
1人は、紐でマライアの両手を後ろ手で拘束し、さらに背後から手を回して喉元にナイフを突きつけている。
もう1人は、生徒たちを監視しながら周囲を警戒している。
おそらく、コイツらはマライアのストーカーだ。
美しすぎるマライアを攫って、あんなことやこんなことをするつもりなのだろう。
そんなことは絶対に許さないぞ!!
恐怖に怯えるマライアもキュートだが⋯⋯、ここは俺の出番だ。
窓側の1番後ろの席に座る俺は、ストーカー共に気付かれないように〝ほふく前進〟で教室後方の出入口から脱出した。
そして、そのまま教室前方の出入口まで移動し、ちょうど廊下側に背を向けていた監視役の後頭部に打点の高いドロップキックをお見舞いした。
俺の強烈なドロップキックを受けた監視役はそのまま倒れ込み、泡を吹きながら気を失ってしまった。
そして、もう1人のストーカーは慌ててしまい、マライアから手を離してしまう。
俺は気絶した監視役からナイフを奪い、素早い動きでマライアを救出した。
俺はナイフで紐を切って拘束を解き、耳元で「アーユー オーケー?」と囁いた。
マライアに返事はない。
おやおや、俺のあまりのカッコ良さに、俺の愛するマライアは照れてしまったようだ。
すると突然、背中に激しい痛みが走る。
「ぐっ!?」
どうやら背後にいたもう1人のストーカーに、背中を刺されてしまったらしい。
俺はそのまま倒れ込んでしまった。
「Oh !?」
俺の愛するマライアは目に涙を浮かべながら、英語で話しかけてくる。
マライアの英語が速すぎて、ちょっと何言ってるか分からないが、きっと愛のメッセージだろう⋯⋯。
「アイ⋯⋯ラビュー⋯⋯トゥー⋯⋯」
俺はマライアの腕に抱かれながら、彼女の膝の上で永い眠りへと⋯⋯
「Hey ! YoHei !」
「⋯⋯オウ イエス⋯⋯」
気が付くと、そこは俺の愛するマライアの膝の上ではなく机の上だった。
「Hey ! Fucking guy !」
え!?俺とヤりたい!?
さっきまで見ていたのは妄想のはず⋯⋯、まさか俺の想いが届いたのか!?
『キーンコーンカーンコーン』
おっと、タイムアップのようだ。
「ソレデハ〜、今日ノ授業ハ、ココマデネ〜」
そう言ってマイハニー⋯⋯俺の愛するマライアは教室を出て行った。




