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獣落ちその1

 聖女が常駐していないこの村では、数ヶ月に一度教会から聖女の訪問があり、患者の病気診察と治療がある。

 その訪問日には教会本部から聖女が数名派遣されてくる。


 今日は聖女たちがやって来る日である。

 マリカは久しぶりに聖女たちに会うのが楽しみだった。


 多くの患者や診察待ちの村人で混雑する村の教会、そんな中で忙しいが楽しそうに働くマリカ。

 人のために働けることは喜ばしいのだが、心はやはり揺れている。

 先日の白属性の判断、自分にも与えられた仕事があるのだと言い聞かせ納得しているつもりだった。

 それでも聖女と聞けば心が揺らぐ、だから今も何度も何度も自分は聖女ではないと言い聞かせていた。


 村の教会から聖女たちの乗った馬車が見えて来るとお迎えの準備を始めるマリカ。

 マリカはグレンダール神父とともに教会の前まで迎えに出た。

 馬車から降りて来たのはサフル司教と三人の聖女たちだった。


「それでは、私はグレンダール神父を話があるので」

 そう言うと先に降りたサフル司教はグレンダール神父と共に教会の執務室に入って行った。


 残された聖女たちはマリカはお出迎えした。

「「「マリカ、久しぶり」」」

 三人の聖女たちはマリカに挨拶した。


「皆様、遠いところお疲れ様でした」

 マリカは久しぶりに会った聖女たちに挨拶をするが少し様子がおかしかった。


 そのマリカの様子に気がついた聖女のレナが声をかけた。

「どうしたのマリカ元気がないじゃない」


「そうですか?

 おかしいな・・・

 でも大丈夫です。

 実は嬉しい良いことがあったんです。

 あっ、でも今は、まずは皆様は長旅でお疲れでしょうから一息ついてください。

 それから治療を待っている人が沢山いるので、私の話は治療の後で話しますね」


「ふうん、本当に嬉しいことなのね。

 分かったわ、あとでゆっくり聞かせてもらうから」


 マリカは客室に聖女たちを通すとお茶とお菓子を出した。

「うん、やっぱりマリカの焼くお菓子は美味しいわね」

「そうなのよね、レシピ聞いて作ってみたけどここまでおいしくないのよ」

「なんかマリカの作るお菓子は違うのよ」


 聖女とは言え、中身は間違いなく少女だった。

 マリカは、いつものように話の中に入ることもなく、今日はそんな聖女たちを見ていた。

 自分と同じような少女たち、でも彼女たちは間違いなく聖女だった、

 今は白属性かもしれないとわかったのだ。

 聖女ではない自分にも使命があるとわかったのだ、こんな嬉しいことはない。

 嬉しいことだ、嬉しいことなんだと自分に言い聞かせ、聖女たちをみていた。


 その後聖女たちは患者たちへの治療を始めた、もちろんマリカは患者の治療の支援や手伝いをしました。


「乾かしている包帯をとって来ますね」

 そう言ってマリカが外に出た。

 包帯は物干しの奥に陰干しになっていた。

 このためシーツのような大きなものの奥で見えにくいところにあった。

 そこにある包帯や三角巾を取り入れる準備をするマリカ。


 不意に誰かに羽交い締めにされた。

「マリカおめでとう、今日誕生日らしいね、そう成人だね」


 その声はサフル司教のようだった。


 その後マリカを羽交い締めした腕に力が入った。

「おおなんと良い体をしているんだ、立派に育ったね」


 口を塞がれていても必死に抵抗するマリカ。

「ふぁなぁしぃてぇ~」


 だが司教の力は強くマリカでは振り解けなかった。


「今日は成人だね、だから、もう聖女ではないとルカ位できて諦めているだろ。

 残念だったね、聖女になれないかったんだね。

 でも安心していいんだ、これからは大人の女として私を癒しておくれ」

 その言葉を発するとマリカの服の中に手を入れ始める司教。


 必死に抵抗するマリカ。

 必死に口を塞がれている手を払い除けると叫んだ。

「お戯は、おやめください!!」


「いつも聖女たちが、私のそばに沢山いるんだよ。

 その子たちは旅の間も馬車の中で着替えしたり湯浴みをしたりするんだ。

 私だって生身の男だ、こんな蛇の生殺しのような状況は我慢できなくなるんだ。

 だが、神に選ばれたものたちに手出しはできないんだよ。

 でも、君は神に選ばれなかった普通の女だよね。

 だから分かるだろこの気持ち、神に選ばれなかった者同士さ。

 さあ私を癒しておくれ」


 そう言うと司教はマリカの服を脱がせようとボタンを外し始めた。


「いや!!、やめて・・・」

 どんなに叫んでもその声は、この場所からは誰にも届かない。


 しかし、その声尾に反応するものが現れる。

 その証拠にシーツを干した陰から唸り声が聞こえて来る。


 ウゥ~、ウゥォ~、ウォ~~ッ、ワォ~オォ~ン!!


 大きな動物の唸る声が響いた。

 そして唸り声と共に司教に、なにかが飛びかかって来たのだ。


 マリカも最初は何かわからんあかったが、司教の片手が離れた。


 それは痩せた汚れた犬であり、その体には大怪我の痕があった。

 その犬は片足を引きずりながら必死に司教に食い付きマリカを助けようとしていた。


 その犬の助けもあってマリカは司教の手を振り解くことができた。

 そのまま司教から距離をとった。


 司教も手が自由になると犬をはたき飛ばす。


 マリカは痩せ細った犬を見て驚いた。

 その痩せた犬、その犬には見覚えがあった。


「バズー、バズーなの?」


 バズーは司教を睨み飛びかかるように威嚇していた。

「バズー?

 あの時のバカ犬が生きていたのか、いいだろう今度は引導を渡してやるよ」


 司教はマジック・ドライバーに火炎の魔法陣カードを表示すると詠唱を始めた。


「誰か・・・誰か・・・」

 恐ろしいことを見ている、信じていた司教に恐ろしい目に会わされた。

 そんな思いからか声が全く出ないマリカはそれでも声を張り上げて叫ぼうとしていた。

 もちろんそんな声では教会内にまで届くはずはなく、誰も気が付かなかった。


 このままではバズーが、そう思うのだが大きな声は出ないままだった。


「誰か・・・誰か・・・お兄ちゃん!!」

 

 詠唱が終わりかけ、バズーへの法撃が始まろうとするその時声が響いた。


「マリカ!!」

 その声はシャインに間違いなかった。



 シャインは間に合い、マリカの声は届いた。


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