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クロード学園街

30分も遅刻してすいみませんでしたぁ!


 クロード学園、シューラ王国が出来上がって直ぐに建てられた学園の一つ。七歳から入学出来、十八歳で卒業。日本でいう小学校、中学校、高校が合わさった学園。

 その学園の周りを囲むようにして発展していったのがクロード学園街。最初は教師と生徒が不自由なく暮らせる程度の街だったが、様々な場所から来る新しい住人たちによって街が少しずつ大きくなっていき、今では都市とも呼べるほどになったらしい。それでも『街』と付けるのは当時の名残りを残しているためだとか。

 そして街はクロード学園を中心に四つの区に分かれている。北側に商業区、東側に研究区、南と西側に訓練区と居住区よいった具合に。さらに区の中でも分類によって細分化されていて、例えば商業区だと、武具店や市場、家具店それに奴隷店となっている。

 これらの知識はクロード学園街に入る手前の検問所で並んでいる間にレナから教わった。検問所に出来ている列は長いわけではないが一つ一つ丁寧に積み荷を確認する為時間がかかる。御者のおじさんによると、この列だと一時間ぐらい並ぶと言われた。で、待っている間暇だから、レナから学園のことと街のことを詳しく教わっていた。

 そして今は、この世界の金銭関係を教えてもらっている。


「え~と、貨幣は下から石貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨になっていて、石貨十枚で銅貨一枚、銅貨十枚で銀貨一枚のように両替ができるの。大体銀貨が二、三枚あれば余程のことがない限り一カ月は生活できるよ」


 そういいながらレナは自分が持っている貨幣を出して教えてくれる。それを僕は頷きながらこの世界での貨幣価値を学ぶ。今のところ石貨が十円でそこから一桁ずつ上がっていく感じなのかと理解した。そして、物の値段とかは低めだというのも。

 そんな感じでレナからじっくりとこの街の歴史と金銭関係を教わっていると、僕たちの番になった。馬車を進めて、おじさんは兵士にリストと何か紙のようなものを渡して一言二言話した。そのあと、簡単な積み荷の確認と僕たちの簡単な確認をして、検問所を通してもらった。この間僅か四、五分。

 前の人は十数分以上掛かってたのに五分で終わらすって、このおじさん一体何者だよ。


「おじさんって一体何者? こんな簡単に通してもらえるということはかなり有名な人なんだろうけど……」


 思い切ってそう聞くとおじさんはワハハハと笑いながら答える。


「儂はここら辺では顔が広いってだけの爺さんさ。それだけを知っていればいいさ」


 そう話をしながら検問所を通りすぎると、そこは商業区の中の飲食店が多い場所だった。もう日が落ち、夜になりはじめた時間帯、多くの飲食店が外にテーブルを設置したりして客を集めていた。御者のおじさんは依頼された荷物をある場所に納品するため、僕たちはおじさんの馬車から降り礼を言って別れた。

 その後僕とレナは今居住区へと向かっていた。何でもレナの知り合いが住んでいるとのこと。


「そいうえば知り合いの人ってどんな人?」


 向かう最中に会う人物について質問を投げる。レナはうーんと人差し指を顎に当てながら少し考え答える。


「私の叔父なんだけど、誰とでも親しみやすくいろんなことを楽しそうに教えてくれるんだけど……魔法とかの話になると止まらなくなる人でね。私にも教えてくれたんだけど、あの時はつらかったな……」


 そう遠くを見るような目をしながら言い、「楽しそうに魔法言語とか歴史を一方的にね……」とその時のことを思い出しながら語る。そこだけを聞くとただ魔法を愛する魔法オタクに聞こえる、ただし愛する次元が通常の人とは違うという点。

 そんな話をしながら、レナの案内で目的地まで向かうと一つの大きな屋敷の前にたどり着いた。門の隙間から見えるのは白い外装の洋館と暗いので詳細までわからないが奇麗に整えられている庭園。

 傍目から見たら金持ちが住んでいると言わんばかりの屋敷だった。


「ここがレナの知り合いが住む家……というか屋敷?」

「うん、昔からここに住んでいてね。前回来たのは五年ぐらい前だったけどそんなに変わってなくて安心した」


 レナはㇹッと安心の息をつき、門に備えられたベルを鳴らす。そして数分もしないうちに一人の男性が現れた。レナの顔を見て柔らかい目つきをしてにっこりする。


「おや、レナじゃないか。遠路遥々ようこそ。……そしてそこの君も」


 ここで僕はこの世界で人間以外の種族を見た。僕やレナより耳が長く先が尖っており、金髪の長い髪を結んでいる。そう彼は異世界ものでよく登場するエルフなんだと。

 そんなエルフの言葉にレナは笑顔になり彼に抱き着く。


「叔父さん!また会えて嬉しいよ!」


 彼もレナの背中に手を回し抱き締めた。だが、エルフは笑顔だけじゃなく少し涙も流していた。久しぶりの再会だったから流した涙と勝手に決めつけた僕はしばらく何も言わず見守った。久しぶりに再会したのだから、邪魔するのはなんか嫌だし。しばらくしてレナがエルフに抱き着くのを辞め、改めて僕のことを紹介した。


「えっと彼はロイって言って私が従者として連れて行こうと思ってるの。ロイ、この人は私の叔父でオリバー・ハイムって言うの」


 そう紹介され僕は深めにお辞儀をした。すると、彼は僕を一瞬見てからレナに視線を戻しこう聴く。


「そういえば従者の子は女性と聞いてたけど……そういうことかわかったよ。書類に関してはこっちでなんとかしとくよ。それよりお腹が減っただろう? 今日来るってことだったから御馳走を用意しておいたよ」


 オリバーさんはレナの出した一瞬の表情から何があったのかを悟り、深く聞くのは得策じゃないと会話の矛先をずらした。レナはうんと頷き屋敷へと入る。僕もレナに続いて入ろうとしてオリバーさんの横を通り過ぎようとした時声を掛けられた。


「君、ご飯を食べた後でいいんだけど私の部屋に一度来てくれないかな。君についてやらレナのことを聞きたいからね」


 僕は彼の顔を見て、うんと頷いてレナの後を追った。レナは何度も来ているようで迷わずにダイニングルームへと向かっている。そして、部屋に入る直前にこの屋敷で働く一人のメイドと出会う。


「レナちゃんじゃない。元気にしてた?」


 白と黒のメイド服で丸眼鏡を掛けた犬耳の獣人。エルフを見てから獣人もこの世界にいるのだろうとは思ってたけどまさか直ぐに会えるとはなぁ。

 そう一人思っていると、レナは元気そうな笑顔をして答える。


「はい!あ、お久しぶりですマーサさん。彼はロイって言って私の新しい従者です」

「そうなの。あ、先に部屋に荷物とか置いてきた方がよさそうね。ご主人様、お部屋の方ご案内してきます」

「うん、そうだね、頼んだよ。私は先にダイニングで待っているから荷物を置いたらここに来なさい」


 そう言われメイドのマーサさんに案内される形で二階にある一つの部屋の前に来た。

 部屋に入るとその規模に驚いた。部屋には大き目のクローゼットに化粧台、机やソファー、そして壁一面にある本棚。……そして、キングサイズともいえる別途が一つ。


「そういえばご主人様からくるのは二人とも女性って聞いていて、一人は従者だから私たちの部屋の方に用意していたからあのベッドしか準備してないのだけどいいかしら?」


 部屋の規模に唖然していると、マーサさんは困ったような表情をしながらそう僕たちに聞いてきた。僕はそれを聞いて少し眉を顰める。

 いやいや……女の子と、同じ部屋って良くないでしょう。断って違う部屋にしてもらおう、うん。


「僕は他の━━━」

「うん、一緒でいいわよ。ってどうしたの、ロイ?そんな顔をして?」


 断ろうとマーサさんに言っている途中で、レナにシャットアウトされてしまった。レナは何か問題でも?と言わんばかりに顔を傾げている。これは説明するのがめんどくさくなりそうと予感し、意見を言うのをやめる。


「もういいよ‥‥‥。部屋は一緒でいいけど、僕はソファーで寝るからね……あ、あとで毛布を一枚用意してもらえませんか」


 そう言うと今度はレナがえぇ~っと信じられないみたいな顔をしてるけど、気にしないったら気にしない。マーサさんは「わかったわ、ありがとうね」そう言って部屋を出た。レナはぶぅっと頬を膨らませながらも荷解きを行う。僕はそれを見て苦笑いをしながら装備していた剣とマントを外してレナのことを手伝う。

 そんなことをして荷が解き終わったので、一緒に階段を下りてダイニングルームへと向かい入る。部屋にはオリバーさんが一番奥の座席に座り、マーサさん以外のメイドが十数名がその近くに立って僕たちを待っていた。マーサさん以外のメイドはどうやら普通の人間もいれば、猫の獣人や狐の獣人、ハーフエルフっぽい人など色々な人がいた。僕たちはオリバーさんと対面する形で座席に座るとオリバーさんがメイドに声を掛ける。すると、メイドは次々と料理を運んできて僕たちの前に置いた。

 料理はデミグラスソースっぽいものがかかったハンバーグに付け合わせの野菜、フランスパンに近いものに暖かい赤色のスープだった。

 他のメイドたちも一緒に食べるのか、空いてる席にも料理が置かれていった。少ししてメイドたちも全員揃い、全員の前に料理があることを確認してからオリバーさんが神に感謝して、食事が始まった。

 数十分かけてとった食事は僕の自己紹介やレナの旅での話をして盛り上がった。そして僕は食べ終わった後、レナに一言を言ってオリバーさんの後を追いていく。階段を上がっていき、二階の一番奥にある部屋へとたどり着き中に案内される。部屋内は執務をするために必要な大きめの机とたくさんの蔵書が置かれた本棚、そして客人を対応するための小さいテーブルと二つのソファー。

 そんな部屋を観察していると、オリバーさんは窓際にある棚に近づき、二つのカップと黒い液体が入った透明の入れ物を用意する


「おもしろみもない部屋だけど、そこに座って。あぁ、君は豆水……いや()()()()はいける口かい?」


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