出会い
約束した通り1週間ごとの投稿
新しい話の展開、マジで悩む
「おーい、無視しないでよぉ~」
女の子は僕の顔を下から覗きこむようにして言ってきた。
なんて説明しようか考えているときにこんな仕草されたら、またドキッとしてしまう。
僕は一度気持ちを落ちつかせるために目を少し逸らしながらゴホンと咳を混む。
「えーと、目が覚めたらここにいてね。その……何も思い出せないんだ、名前も出身地も」
女の子にそう言うと、「ふーん」と言ってとりあえずわかってくれたみたいだった。
女の子がわかってくれたので、僕は胸をなでおろすと次の質問が飛んできた。
今まで考えてた、自分が何者なのか? と同じぐらい重要なことを。
「それはわかったけど、君はこれからどうするの? ここから近い街は歩いて半日以上はかかるだろうし、
それに街についてからどうやって生活するの?見たところどこかの学園の制服っぽいけどもしかして在学生?」
そうだその事も考えなきゃいけなかった……。それにここから町まで半日だって? それはつらすぎる。そしてこの世界に来たのだから、自分でお金を稼いで生活をしなきゃいけない。だけど、この世界のことを何一つ知らない僕はどうやってお金を稼ぐのか、全くもってわからなかった。
「……僕がここにいたのはどっちに行けば人がいる場所にいけるのか悩んでいたからなんだ。その先のことなんて考えてなかったよ」
そういうと彼女は少し悩んだ後、何かイタズラを思いついた子供のような笑顔をした。
「そうなんだ……それだったら私と一緒に学園に行って授業を受けない? もし記憶が戻ったとしても学んだことは無駄にはならないと思うよ。……それにおとうさんとの約束が守れそうだし」
………はい?…今、この人笑顔で何って言ったんだ?
「……今、君は『一緒に学校に行って授業を受けない?』って言ったか?」
「うん、そう言ったね」
この人、断言しちゃったよ! やっぱ僕の聞き間違いじゃないんだ!? それに女の子が小声で言った「おとうさんとの約束が守れそう」に何か引っ掛かるな。まぁ、深くは詮索しないほうがいいしな、人それぞれに事情はあるし。それよりもこの子に何もメリットはないだろうし何とか断らないと……
僕は頭を抱えながら、何とかして断ろうと話を進めた。
「何も思い出せないし、戻らなかった時のために学校には行きたいんだけど、僕そもそもお金とか持ってないから学費とか払えないんだけど……」
「大丈夫よ、そこは問題ないから」
問題ないって……もしかして金持ちの子なのか? まぁ、この世界での一般的な服装とかがわからないけど、見た感じ綺麗だし絹っぽいものが使われているように見えるし。でも、それでも彼女に得なんてない。
「え、えーと、それはありがたいんだけど君には一切メリットとかないと思うんだけど……」
それでも遠慮をしようとすると彼女は目を開いて、「あぁなるほど」と納得したのか手をポンッと叩いて語り始めた。
「その本当は私の従者として一人ついてきてくれる子がいたんだけど、ここに来るまでに魔物に襲われてね、その時に私を庇ってね……それに関しては吹っ切れたんだけど、それ以降で従者がいなくて困ってたの」
何か彼女の地雷というか、あまり思い出したくないことを思い出させてしまったらしい。吹っ切れたとは言っているが、彼女の顔は少し前より暗かった。
「ごめん、その思い出させちゃって」
「うんうん、いいの。彼女は私の身を守るためにしてくれたことだから。それに言われたの『私の命はあなたに預けていました、あなたのために死ねるのであれば私は嬉しいのです。だから、悲しまないでください』って」
この子の従者だった人はかなり忠誠心が高いというか、なにかしら恩を感じていたのかな。そして、僕はそんな彼女に悲しそうな顔をさせてしまった。それにこれは見方によっては僕を窮地から救ってくれるんだ。彼女に対して何かしらの恩返しは必要だ。前の従者みたいに彼女に忠誠を誓い、彼女のために死ねるほどの覚悟が。
「君の考えはわからないけど、喜んでその提案にのるよ。そして、君に従者として忠誠を尽くそうと思うよ。それぐらいの覚悟じゃないと君を命懸けで守った人に失礼だからね」
「ありがとう、でも命懸けはやめてね。あんな思いはもうしたくないしね。さ、時間結構かけちゃったし、詳しい話は馬車に乗ってから話すからついてきて」
僕はうんと頷き、女の子と一緒に馬車へと歩いた。その後、女の子は御者のおじさんに事情を話して、僕を乗せてくれた。
そして、僕たちを乗せた馬車はゆっくりと速度を出して進みだした。御者のおじさんにどれぐらい馬車に乗るのか? と聞くと今の場所から目的地までこの速度で向かえば夕方ぐらいには着くと答えてくれた。
「さて、まずは私の自己紹介ね。私はレナリア・ヒルズ。レナって呼んで」
「よろしく、レナ。僕は……記憶を取り戻すまでの名前どうしようか、レナ?」
正直なところ適当に自分で名前を考えてみたけど、どれも厨二臭くてそれを使うのが恥ずかしくてやめた。だからこの際、彼女に名付けをしてもらうことにした。その方が一層彼女に対して忠義が尽くせそうだし。
そういうと彼女はうーんと悩み始めた。そして、数分経った後彼女は口を開いた。
「そうだ、ロイってのはどう? この世界では有名な名前だよ。神々に才能を与えられて英雄となった人の名前だよ。下の家名は……ないところから来たていうことにすれば問題ないかな」
ロイか、いい名前だな。なんかこうグッとくる感じ。記憶を失う前からその名が自分のだったような感覚。
「ありがとう、レナ。僕は今日からロイって名乗ることにするよ」
そう宣言した時、急に自分の周りが白く眩しい光を放ちはじめた。僕は咄嗟に目を強く瞑り、レナが眩しさのあまり「きゃぁ」と驚いた声を上げ、御者のおじさんはなんだなんだと馬を止め、こっちに振り返った。
少しして光はおさまりはじめ、目を開けると二人がなにか唖然とした表情をしていた。まるで何かを見て驚きのあまり反応ができていないような感じ。
「あのーなにかあったの?」
「……ロイの髪の毛が白に近い灰色になって、瞳が暗めの青色になったの」
またまたそんなことがと思いながら、前髪を見れるようすこし引っ張ってみると確かにレナが言った色になっていた。気疲れによって見間違えたんだそうに違いないと思いながら目を一度ほぐしてから見ると変わってなかった。
そこで御者のおじさんが言葉を挟んだ。
「いやぁ、まさか伝説の英雄と似た姿を観れるとは運がいいな」
「英雄と似た姿?」
そう返すと伝説の英雄についてを昔話のような感じで語ってくれた。
「昔神々が混沌と争っていた時があった。その争いにより世界は荒れ果て人が生き抜いていくのが難しくなっていった。そんなか神から直接寵愛を受けた人間がいたんだ。その人間は寵愛を受けると髪色が白に、瞳が透き通った青色になったそうだ。それがロイ・エクス。それから彼は神の寵愛によって得た一騎当千の力を持って混沌を倒し、世界を救った。それから彼を『初代勇者』と讃えたのさ」
話を聞く感じでは今の僕と似た容姿のようだ。でもまぁ昔話のようなもの、今の僕には関係ないようのものだ。
「それでステータスの確認方法ってどうすればいいの?」
「ステータス確認方法は『ステータス』って言うか、頭の中で唱えるかのどちらかをすると自分の目の前に表示されるの。ちなみになんだけど他人のステータスを見る場合は高レベルの鑑定スキルが必要になるの」
まぁ異世界って感じだな。とりあえず自分のを確認するとしよう、ステータス。
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名前:ロイ
種族:人間 LV.1 職業:魔法剣士 年齢:14
筋力:B+ 耐久力:B+ 速さ:A
魔力:A- 運:ー
称号:「異世界人」「???からの寵愛」
スキル:「剣術LV.2」「四大魔法LV.1」「鑑定LV.1」「隠蔽LV.MAX」「異空間保管LV.MAX」
装備:「異世界の服」「異世界の靴」
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名前は確認できたが・・・。何、このステータスチート過ぎないか?
いや、この世界の住人の基本ステータスを知らないから何とも言えないだけどさ。
後この『???』って誰? この世界の神様かな?
「……名前はロイになってるね」
そういうとレナは僕の顔により近づき、ワクワクした表情で詰め寄ってくる。
「他に何か書いてなかった?職業とか、スキルとかあとは…称号とか!」
やっぱそういうとこ気になるんだ。
「職業は魔法剣士で、主なスキルは剣術、四大魔法、鑑定、異空間保管かな。称号は……特に珍しいものはないかな。あ、質問なんだけど異空間保管ってどう使うの?」
ステータス見たときからの疑問だった異空間保管。他のスキルはなんとなく名前でわかるんだが、異空間保管だけ使い方よくわからない。……ステータス開くときと同じか?
「え~と、私は異空間保管はもってないからよくわからないんだけど、取り出し方はステータスの『異空間保管』を押して、中に入っているものを確認して取り出したいものを選択するだけらしいよ。で、収納の仕方は収納したいものを触れながら『収納』と唱えると出来るらしいよ。」
レナに言われた通りにやってみると、異空間保管のメニューが開けた
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異空間保管(LV.MAX)
・鉄の剣×1 ・漆黒のマント×1 ・???の指輪
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中に入っている鉄の剣、漆黒のマント、???の指輪を選択してみた。すると、僕の目の前に選択したものが出てきた。レナは「おぉー」と言う。僕は出てきたものを異空間保管と確認するとそれらは僕が今さっき異空間保管で選択したものであると確認できた。
選択した装備をレナに聞きながら試行錯誤し装着していると、馬車を操作してる御者のおじさんが話しかけてきた。
「ほら、お嬢さんたち。目的地のクロード学園街が見えてきたよ」
レナとともに馬車から見ると、そこには大きな壁に守られた街があった。遠くから見ただけじゃわからないが街自体大きいのはよくわかった。なんだろう東〇ドームの10個分の大きさ…いや、それ以上か。
そして、街の代名詞ともなっているクロード学園の校舎らしきものが街の真ん中に建てられていた。周りは屋根が赤やオレンジなどの暖色系に対し学園らしきものは青や白と寒色系で目立っていた。
僕は「あの目立ってるのがクロード学園か?」っとレナに聞こうと横を振り向いた時、思わずドキッとした。今さっきまで話していたお転婆な雰囲気とは違って、何か決意に満ちた顔をしていた。
レナも僕の視線に気付いたのか、いつもの雰囲気に戻って、なにかあったの?って顔をしながらこっちを見た。
僕はなんでもないと言って、視線を街の方に向けた。街は夕暮れのおかげでオレンジに染まりキレイだった。
僕たちは充分に景色を楽しめたので、座っていた元の場所に戻ろうとした。その時、馬車が小石でも踏んだのかガタンという音ともに揺れ、レナはその時の振動で体勢を崩し倒れようとしている。
「危ない、レナ!」
そう声を上げると同時に僕はレナの体が倒れないように上半身を支えた。
レナが倒れる前に支えれたおかげで、怪我はなかったが僕の体と密着する形になったのが恥ずかしかったのか、小声で「ありがとう」と頬を赤らめながら言って馬車の後ろの方に座った。そして、心を落ち着かせるためか髪先をしきりにいじって僕の顔を見ないようそっぽを見る。
僕は僕でドキドキと鳴る心臓を落ち着かせるため、胸に手をあて必死に深呼吸をしていた。
咄嗟のことだったのでレナを支えた瞬間は気にしていなかったが、よく考えれば女の子の体を密着する形で触れたのだ。しかも顔と顔があと数センチという距離まで近づいている。その時、レナの髪からふんわりと甘い匂いもした。これでドキドキしないわけがなかった。
僕もレナを見ないようにもう一度クロード学園の方を見直す。今見たらまた恥ずかしい気持ちになってくるだろうと思い。でも、レナからありがとうと言われたのは心の底から嬉しかった。
外はもう黄昏時でクロード学園街はもう目と鼻の先だった。
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