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かれんの告白

 のんのとかれんを乗せたパトカーを運転する山根がチラリとルームミラーを見ると、後ろから数台の車が追跡してくるのがわかった。


「課長、マスコミらしき車が何台かついてきているようです」


 山根が助手席の倉橋課長に告げると、


「構わん、ぶっ飛ばして振り切れ!」


と指示が飛び、ペダルが床に着くほど山根の右足がアクセルを踏み込んだ。


 ⌘


「さっき言ってた、お店で聞いた話って聞かせてもらえる?」


 署へ向かう車の中でのんのが言うと、かれんは少しためらったがポツポツと話し始めた。


「あたしが働いてるガールズバーでね、ちょっと気分悪くて店の裏で休んでたのさ。そしたらさ、店長といかにもって感じの人相の悪い男が裏口で話してるのを聞いちゃったの」


 そこまで言うと、かれんが少し黙った。話していいのか迷ってる感じだ。そんなかれんの気持ちを察したのんのが、


「絶対私たちが守るからさ、安心していいよ。だから話して」


と優しく水を向けると、かれんも意を決したように一回頷くとまた話し出した。


「あの店、お店で働いてる女の子を薬漬けにするらしいの」

「薬? 覚醒剤、とか?」


 のんのが聞くと、少し首を振りながら、


「クスリの種類まではわからないけど、その類みたい。それで、目をつけた女の子を系列のホストクラブに誘い込んで貢がせて、男に弄ばれて、そのうち薬漬けにされるんだってさ。店長と男が馬鹿な女がいくらでも釣れるって話してた」


と怯えた様子でかれんが話す。


「悔しいな、そんなの。その女の子たち、どうなったんだろ」


 のんのがポツリと言うとかれんが、


「売春の売り上げがどうとかって言ってたんだよ。そういえば、お店の人気のあった子が、突然お店に来なくなることが何回かあって。なんか自殺したとか、そんな噂はあったんだよね」

「それ、怪しいね。その男の組織ってどこだろ」

「それがさ、その店長と話してた男の顔が見えたんだけど、普通にお店でお客にきてたやつだよ、絶対。半グレみたいな集団で。なんか見たことあったもん」

「じゃあ、女の子を選びに来てたの、か。正体はわからないの?」

「うん。そこであたしが近くにいるのに気がつかれちゃって、それ以上は知らない。あたし、さすがにまずいって思って店から逃げ出したの。そしたら何人か追いかけてきてたみたい。この格好だし、逃げ場がなくなって、そんであのビルに隠れたの」


「おい、姉ちゃん。面白い話をしてるじゃねえか」


 助手席にいた倉橋課長が聞き耳を立てていたらしい。話に首を突っ込んできた。


「あんた、誰」


 何このおっさん、という顔をしてかれんが聞く。


「いいから、詳しく話せ」

「やなこった。なんであんたに話さなきゃなんないのさ」

「なんだ小娘、その態度。お前、ブタ箱に突っ込むぞ」

「やれるもんなら、やりゃいいじゃん。あーもう、こんなおっさんには絶対喋んない」


 かれんが膨れて課長から目を逸らした。


「おー、上等じゃねえか。おい、山根。署に帰ったらなんでもいいから理由つけて、この女を逮捕しとけ」


 課長が山根巡査部長に怒鳴る。もう無茶苦茶だ。言われた山根も返答に困ってしまった。のんのが一生懸命かれんをなだめていた。そんな課長とかれんの口喧嘩が始まったところで、車は東江戸川署に滑り込んだのだった。

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