表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】なんちゃって伯爵令嬢は、女嫌い辺境伯に雇われる(Web版)  作者: 合澤知里
続編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/75

29.帰還

「出口だ!」

「ようやく帰ってきたぞ!!」


 やっと森を抜け、キンバリー辺境伯領に帰って来た私達は、まずは国境警備軍の砦に向かう。砦が近くなると、私達に気付いた兵士の人達が、砦から出てきて迎えてくれた。


「キンバリー総司令官! お帰りなさいませ!」

 強面のラシャドさんが、珍しく満面の笑みで出迎えてくれた。


「ラシャド、長らく留守をした。そちらは変わりなかったか?」

「問題ありません。少々時間はかかりましたが、森の入り口周辺の魔獣達は、全て討伐完了致しました」

「そうか。ご苦労だったな。お蔭でこちらも助かった」


 どうやらキンバリー辺境伯領が近くなってきた辺りで、魔獣に遭遇しなくなったのは、ラシャドさん達が頑張ってくれていたからのようだ。砦に残った兵士の人達も、きっと大変だったことだろう。改めて、国境警備軍の人々全員に感謝の念を抱く。


「サラさんも、ご無事で何よりです」

「ありがとうございます。皆様には本当にお手数をおかけしました」


 アガタさんに支えられながら、私が馬車から顔を出すと、砦に残っていた兵士の人達に、安堵の笑顔が広がった。


「帰って来られたばかりでお疲れでしょう。キンバリー総司令官、詳しい報告は後日致しますので、まずは奥様とご自宅に帰られて、ごゆっくりお休みください」

「ああ。そうさせてもらおう」


 お言葉に甘えて、国境警備軍の人達と別れ、私達はキンバリー辺境伯家へと向かった。


「サラ、これは返しておく」


 セス様も乗った馬車の中で、魔石のブローチを手渡された。


「正直、魔力が残り少なかったから、これのお蔭で助かった。礼を言う」

「いいえ。でも、まだ持っておられた方が、体調が楽なのではありませんか?」

「いいや、俺なら大丈夫だ。魔力もまだ少し残っているからな。後はお前が使って、回復に専念しろ」

「……では、そうさせていただきます」


 改めてブローチを胸元に着けると、身体が少し軽くなる。セス様の方は、流石に疲労の色が見えるが、それ以外は本当に問題なさそうだ。きっと日頃から鍛えているからだろう。本当に凄いと思う。


(……私も見習って、体力を付けなければいけないかしら)


 暫くすると、キンバリー辺境伯家が見えてきた。ようやく帰ってきた我が家に、思わず安堵の笑みが零れる。


「旦那様、奥様!! お帰りなさいませ!!」

「アガタ!! 怪我はないか!?」


 家に着くと、リアンさんやハンナさん、ベンさん達が飛び出てきて出迎えてくれた。ハンナさんは、目に涙を浮かべている。


「皆さん、ただいま帰りました!」

「ベン!! 私は大丈夫よ!」

「良かった……ッ!!」


 ベンさんに抱き締められて、アガタさんは顔を赤くしながらも、嬉しそうにベンさんの背中に手を回している。


「フィリップさん、怪我は大丈夫ですか?」

「はい。テッド様が治療してくださいました」

「ハンナさんは?」

「私もフィリップの後に、テッド様に治療していただきましたので、全く問題ありません」

「そうでしたか、良かった……!」


 心配していた二人の怪我が問題なく、私はほっと胸を撫で下ろす。後日、私からもテッドさんに、お礼を言いに行こうと思った。


「旦那様も奥様も、お疲れのご様子ですが、お怪我はございませんか?」

「ああ。俺達は少し魔力を使いすぎただけだ。問題ない」

 心配してくれるレスリーさんに、セス様が答えてくれて、私も頷く。


「さあさあ、お三方共、久し振りのご自宅でごゆっくりおくつろぎください。今日は腕によりをかけて、ご馳走を作っておりますので」

「わあ、楽しみです!」

 久し振りのケイさんの料理に、私は目を輝かせる。


「留守中、皆も大変だっただろう。今日は皆で無礼講としよう」

「「「はい!!」」」

 セス様の言葉に、皆が満面の笑みを浮かべた。


 ハンナさんに手伝ってもらって、久し振りにゆっくりと入浴し、着替えて食堂に向かう。ケイさんの言葉通り、テーブルには数種類のワインに、香ばしい匂いの鳥の丸焼き、焼き立てのパンに、色鮮やかなサラダや具沢山のスープ等、沢山のご馳走が並んでいた。皆でワイワイ騒ぎながら、お腹いっぱいになるまで食事を楽しむ。


「いやあ、旦那様も奥様もアガタさんも、ご無事で何よりです!」

「奥様、お守りできず、申し訳ありませんでした」

「私もそばにおりましたのに……」

「いいえ、フィリップさんやハンナさんのせいじゃありませんから。お二人共ご無事で、本当に良かったです」

 何故かフィリップさんとハンナさんに謝られてしまい、戸惑いながらも、お互いの無事を喜ぶ。


「アガタ、守ってやれなくてすまなかった」

「ベンはあの場にいなかったんだから、仕方ないわよ。気にしないで」


 アガタさんとベンさんは、少し離れた所で二人で話している。久し振りの夫婦水入らずなのだから、そっとしておいてあげたい。


「リアン、留守中は変わりなかったか?」

「はい。後でご確認いただきたい書類が、少々溜まっておりますが」

「そうか……」


 セス様とリアンさんは、もう仕事の話をしているようだ。セス様もお疲れだろうし、今日くらいはゆっくりしてもらいたいのだけど、キンバリー辺境伯としての仕事のことを考えると、難しいのかもしれない。

 そんなことを考えていたら、いつの間にかセス様が歩み寄ってきていた。


「サラ、大変だっただろう。今日はゆっくりして、早めに休むといい」

「ありがとうございます。セス様も、今日くらいはお休みになって下さい」

 半ば懇願するように口にすると、セス様は少し困ったような表情を浮かべた。


「旦那様、奥様の仰る通りです。書類は明日以降でも問題ありませんから、今日くらいはゆっくり休まれてください」

「……そうか。礼を言う」


 リアンさんに後押しされて、セス様は口元を緩めて頷く。そんなセス様を見て、私も嬉しくなって表情を綻ばせた。


(やっぱり、我が家が一番だわ)


 セス様と、キンバリー辺境伯家の皆さんと、楽しいひと時を過ごしながら、改めて帰って来られて本当に良かったと実感する。


「皆様、そろそろデザートはいかがですか?」

「わあ、凄い!」

「とっても美味しそうですね!」


 ケイさん特製の、色とりどりの季節のフルーツを使った、ミニパフェやケーキを目にして、私を始め女性陣から歓声が上がる。

 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、その夜は夢も見ずに、朝までぐっすりと眠ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ