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【書籍化】なんちゃって伯爵令嬢は、女嫌い辺境伯に雇われる(Web版)  作者: 合澤知里
本編

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26.昇格試験

(ふう……流石に疲れたな……)


 無事に初日を終えて、帰宅した私はベッドの上に身を投げ出した。お行儀悪い気もしたけれども、誰も見ていないのだからと内心で言い訳をする。


(こんなに沢山おまじないをしたのは初めてだからかな……。模様が複雑だから、結構集中力がいるんだよね……)


 何だか身体が怠くて知らず知らずのうちにうとうとしてしまい、何時まで経っても夕食に下りて来ない私を心配したハンナさんとアガタさんが呼びに来てくれるまで、そのまま一眠りしてしまった。


 その日は早めに寝たにもかかわらず、翌朝になってもまだ何となく疲れが抜け切っていないように感じた。だけどこれくらいで休んでなどいられないので、気合を入れて起き上がる。


「サラ。昨夜は疲れた様子だったとハンナ達から聞いている。無理はするな」

「ご心配をお掛けしてしまったみたいで、申し訳ございません。少し集中力を使い過ぎただけですから、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


 ご心配をお掛けしてしまって申し訳ないと思いつつも、旦那様が気に掛けてくださっている事が嬉しくて、疲れも何処かに吹き飛んで行ったような気がした。


 出勤した私は、旦那様やテッドさん達と一緒に、昨日のおまじないの効果の検証で、救護室を再訪された兵士の方々の怪我の状態を確認していく。おまじないをした人達の怪我は殆ど治っていて、同じような怪我でもおまじないの有無で差があるのは歴然だった。


「サラのおまじないは、普通の怪我でも効果を発揮するようだな。テッド、今日は重傷の怪我だけに絞れ。やり過ぎると疲れるようだから、あまり無理はさせるな」

「畏まりました」


 旦那様が気を遣ってくださったお蔭で、その日は昨日よりも疲れずに済み、正直助かったし有り難かった。だけど、おまじないに効果があると分かった以上、一回でも多くおまじないができるようになって、より多くの人々を助けられるようになりたい。早くこの環境に慣れていかないと。


 そして後日、遂に昇格試験も最終日を迎え、テッドさんの許可を得て、私は実技試験が行われている訓練場へ見学に向かった。私が着いた時は、丁度ジャンヌさんとラシャドさんが手合わせをしている所だった。


 ジャンヌさんが作り出した無数の風の刃を、ラシャドさんは何重もの土の壁で防ぎつつ、作り出した土の塊をジャンヌさん目掛けて放っていく。ジャンヌさんはそれを風の刃で砕いたり、竜巻を起こして巻き上げつつそのままラシャドさんに叩き付けたりと、息もつかせぬ展開で目が離せない。


(凄い……! お二人共、とっても強い……!)


 聞いた所によると、訓練場は魔法の壁のようなもので覆われているらしく、観客席には影響が無いとは言え、目の前で繰り広げられる大迫力の試合に、私はすっかり圧倒されていた。

 やがて試合は、ラシャドさんが起こした地割れにジャンヌさんが足を取られた一瞬の隙に、ラシャドさんが剣を突き付けて勝敗は決した。


「はあ……。悔しいけど、流石ですね、ラシャド隊長。以前よりも腕を上げられたんじゃないですか?」

「実力は左程変わっていないと思うが、左目が見えるようになったのが大きいな。これもサラさんのお蔭だ」

「完全復活されたラシャド隊長相手じゃ、もうお手上げですよ」

「ジャンヌも大分腕を上げたじゃないか」


 ラシャドさんがジャンヌさんを助け起こしながら、何やら会話されているようだけど、遠過ぎる上に大きな歓声に掻き消されて、観客席には全く聞こえなかった。


 次の試合は、ジョーさんとラシャドさんだ。遠目からでも、二人共やる気満々だと分かる。


「ジャンヌの仇は、俺が取ってやるぜ!」

「ジョー副司令官。貴方の礼儀知らずな態度は目に余ります。私が再び副司令官の地位に返り咲いて、再教育して差し上げる!」

「へっ! やれるもんならやってみな!」


 こちらの試合は、先程よりも凄まじかった。ラシャドさんが作り出す土の塊は、ジャンヌさんの時よりもずっと大きくて数も多く、一斉にジョーさんに襲い掛かる。それをジョーさんは、炎を纏わせた剣で切り砕いたり避けたりしながら、負けじと炎の塊をラシャドさんに向けて放っていく。ラシャドさんは土の壁で防御するけど、間合いを詰めたジョーさんが壁を剣で次々に切り崩す。ジョーさんが起こした大きな火炎がラシャドさんを飲み込んでしまい、本当に死んでしまわないかとハラハラする一面もあった。ラシャドさんは間一髪で土の壁を作っていたようだけれども、酸欠になってしまったのか、一瞬足がふらついた所でジョーさんに剣を突き付けられてしまった。


「クッ……またも不覚を取るとは……」

「クッソ……相変わらず守りが固すぎて嫌になるぜ……」


 お互い死力を尽くしたのだろう。暫くの間、お二人共肩で息をしていた。


(次はいよいよ、旦那様の番だ……!)


 無意識のうちに、私は胸の前で両手を組んで握り締めていた。旦那様はお強いのだから大丈夫だと信じているけれども、部下の方々がこれだけ凄い力を持っておられるのだから、万が一にも怪我をされてしまわないか、気が気でならない。


 だけど、私の心配は杞憂に終わった。試合が始まった瞬間に、旦那様がジョーさんを氷漬けにしてしまったのだ。


「流石総司令官……。格が違うよな……」

「ああ。あの副司令官が、手も足も出ないんだもんな……」


 私は魔法に詳しくないが、確か人一人を、それも一瞬で氷漬けにするには、かなりの魔力が必要な筈だ。それを涼しい顔で指一本動かさずにできてしまう旦那様……やっぱり凄過ぎる!!


 すっかり興奮してしまった私は、救護室に帰ってテッドさんにその話をしたけれども、もっと大きな魔獣を数匹同時に氷漬けにしたという旦那様の逸話を聞いて、開いた口が塞がらなかった。

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