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久しぶりの再会―始まり―

俺は待ち合わせの場所でかれこれ10分待っている。あんなにメッセージを送っているが既読にならない。あいつのことだから寝過ごしたりしたのか?柊は5分前に連絡があって後10分くらいで到着すると連絡があった。


~♪♪~~♪~

『祐樹?どこだ?』

『あ、みどまどの前!』

『あー了解!』


改札から出てきた柊が俺に手を上げてる。周りの女性陣がチラッと柊を見る。手を上げるだけでこんなにも視線を浴びてしまうコイツは本当に罪な奴だ。

「ごめんな。遅れて」

申し訳なさそうに俺に謝罪する目の前の男に全くマイナスの感情が沸かない。

「全然。それより誘ったアイツが来ないんだよ。さっきから連絡してるんだけど、既読もつかないんだよな…」

「こうゆう時ってあんないつも遅刻するのか?」

「いや、そういえばカフェにいた気が…」

「場所は?」



Lee() Ji-ho(・ジホ)と表示された彼の名前とアイコンを見つめながら心の中で彼の名前をつぶやいた。

「…ぉい!!聞いてんのか?」


わたしの前から声が聞こえる。

「あんな!!メッセージ見ろよ!俺たちずっと待ってたんだからな!腹まじへった!」

不満が爆発したのであろう、祐樹がわたしの前でしか見せない顔を見せる。


―今俺たちって言った?


わたしは祐樹の後ろにいる人に目を向ける。


「…柊?」

「久しぶり!」

わたしの目の前に爽やかな笑顔を向けている柊がいた。


「カナダから帰ってきたの?」

「おう!」


「そんな話はあとでいいからご飯行こうぜ!」

祐樹のお腹が限界なんだろう、イライラした顔を私たち2人に見せる。わたしは開いていたパソコンを閉じ、お店を出る準備をする。


「それ、食べねーの?」

「…え?」

―パクッ


祐樹はジホからサービスでくれたケーキを一口で全部食べた。

「なんで全部食べちゃうの??」

「俺らを待たせた罰」

「祐樹しか食べてないじゃん。」


最悪。せっかくサービスでくれたのに…わたしはチラッとジホさんを見る。彼はレジでお客さんの対応をしている。私たちはカフェを出て、人ごみの中を歩いていく。祐樹が海鮮系のご飯が食べられるお店に行きたいと言うので柊がそのお店に電話して予約を入れる。柊の気遣いはわたしには鼻につく。柊の行動に弱い女子はこの世界にありふれているだろう。


「あ、ここじゃね?」

祐樹が店の前で軽くジャンプして私たちに早く入ろうぜと促す。



「で?お前仕事終わったからご飯行こうって誘ってきたんだろ?」

「うん。いつものことじゃん。疲れたし。」


「お前さ、仕事そんなにやってなんか金でも貯めてんの?」

「は?」

「だって仕事量多いんだろ?翻訳の仕事ってお金いいんだろ?」

「別によくない」

「俺よりはいいだろー。まあ、1番稼いでるのはここにいる柊だけどな」


祐樹は柊の肩に腕を回して柊の右肩をポンポンしている。祐樹は何も知らずに柊を尊敬している。わたしも何も知らずに生活してたら尊敬してると思う。まあ、人の人生にとやかく言う筋合いもないし、わたしも尊敬してないわけではない。実際、大手に就職して活躍している姿を見ていると自分ももっと頑張ろうと背中を押されている気持ちになるのは正直あるけどね…


「なあ、柊どこに住んでんの?」

「むさこだけど?」

「むさこ??俺もなんだけど?!」

「あ、そう?奇遇だな」

柊は自分の頼んだビールを飲みながら祐樹を見る。


わたしはこういう奇遇と思われることでさえ。柊に疑問を抱くようになる。高校生の時からね。


「ねえ、何で今日2人一緒だったの?」

「あー俺の会社が柊に仕事依頼してて俺がたまたま担当になった。」


―は?ここまでくると鳥肌もんだ。絶対、柊が裏で手を回してるに違いないのは確かだ。それを知らずに平々凡々と生活している祐樹に苛立ちさえ覚える。


ブッブー

スマホの画面にメッセージが来た。


―今度お茶でもしませんか?


ジホさんからの初めてのメッセージでお茶に誘われた。普通の人なら驚くようなことだが、韓国でも生活してきたわたしには普通のことだった。そう、文化の違い。この人ともっと友達になりたい!もっと知りたい!と思うと誘う文化がある。人それぞれだが、日本人の人より積極的なのだ。


わたしはジホさんに『ぜひ。お茶しましょう』と返信した。


「明日も出勤だし、帰ろぜー」

急に祐樹がお開きの合図を出した。

「そうだな、俺も帰国したことだしこれからは頻繁に会おうぜ」

柊が私たち2人に笑顔を投げかける。


「そうしようぜ!俺1人であんなのおもりはもう勘弁!柊にも半分手伝ってもらうからな」

「昔から思ってたんだけど、俺はあんなの世話なんてしたことないぞ?なあ?」


柊がわたしに問いかけている彼の笑みの奥に隠れている顔が少し怖かった。


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