第五章 古代魔術とゴーレム
「な、なんであれがここに居やがるんだ?!」
男は叫びながら驚いた。一旦魔術の解析は後にしこの場から跳躍して後退した。
――途端、男が居た場所に大量の石と砂が飛んでいった。飛来した石と砂は少女が居た場所を砂埃で立ちこめ視界を悪くした。
(危ねえな……アレは無事かも知んねぇが、下手すりゃ死ぬな)
男は訝しむように砂埃――少女が居た場所を見据えた。砂埃が晴れると無傷な少女の姿があった。男は舌打ちをし、闘技場の中央を見た。
この闘技場は横が百メートルほどの楕円方であり、かなり大きいはずなのだがこのゴーレムもかなりでかいため闘技場が小さく見えた。
ゴーレムは少女には目もくれず男へ向き直っていた。
「ちっ、先にこいつを殺るか」
男は闘技場の観客席を駆け抜けゴーレムの死角へと回り込んだ。手すりの上に足を掛けゴーレムに飛び乗り魔法を放った。
「これでもくらっとけ! 『紅蓮羅岩』!」
ゴーレムの首に一千度以上の熱を持った岩を連射式に複数回当てた。男は魔法を発動すると同時に後ろへ飛び下がり高い位置からもう一度狙った。さすがに二度目は躱され岩の拳で粉砕された。
「くっ……こっちに来やがれ!」
男は『氷槍』を撃ちながら少女の居ない方へ誘導した。『空歩』で空中へ足場を作り駆け上がる。男は口端を吊り上げるとにこやかに笑いながら言った。
「詠唱はとうに終わってんだよ──俺のとっておきだ。『冷槍百式・氷焔』」
男の周囲から幾つもの『氷槍』が現れ、全て出現するとその『氷槍』は紅い、業火に咲き誇る焔を纏った。普通なら氷が燃えるなどあり得ないだろう。
だが、これが異世界。
非科学的こそ、この世界。
この世界だからこそ、絶対的な不可能が存在しない。
──そう、これこそが『魔法』人々が追い求めし強大な力の根源。
男の放った魔法はゴーレムの頭上へ降り注ぎ、抵抗虚しく一瞬にして氷像となった。そこへ追い打ちを掛けるように焔が氷を触媒としながら延焼していく。急激な温度変化によりゴーレムを形作っていた岩は粉々に粉砕され、破裂し四方八方へ吹き飛んだ。
地面へ降り立つとゴーレムの核である魔石が先の魔法で露見していた。魔石に手を当てると独特な魔力波を流し破壊した。
男はため息を一つ零すと闘技場の端へ歩いた。すると瞳を閉じゆっくりと詠唱を始めた。
「――汝、死を知るか。汝、絶望を知るか。我は困窮を生き抜きせし死者を葬る者。今一度、彼の者に安らぎを与えよう。『死者魂魄蘇生-Ⅰ』」
詠唱が終わると再び目を開け魔法陣が出現したことを確認した。
まだしばらく主人公は出てこないかも知れません
7章か8章辺りまでには現代の話に戻します
あ、あとここらへんは結構重要な話ですよ
ではまたいつか──




