第一章 始まりの時(6)
不穏な気配がしている。 過去は変えられる 未来は変えられない
未来が確定したとき、過去が定まるのだから……
私は、あの世界が愉しかった。20年前――に――されて、その世界でいろんな人に会った。いろんな事をした。沢山の人が……ったのも見た。あの頃の私は臆病だったし、皆に頼ってばかりだった……けど、今は違う。あの頃の私を知っている人はもういないだろうし、仮に居たとしても私とは気付かない。絶対に――
今から20年前、私はこことは別の世界。ラノベで言うところの『異世界召喚』というものに遭った。『召喚』と言うことはつまり、その世界の住民では倒せない(抑えられない)から『異世界召喚』を行い、助けを求めてきている。ということ、この後の王道的な展開としては「地球に戻せ!」や「死にたくない!」など反発をする。もしくは、言葉巧みに操られ強制的戦わせるなど例を挙げれば幾つか出てくるが、今あげたものとしては中高生のクラスごと異世界に召喚されるたりする『クラス召喚』というのが最も適しているだろう。
私の場合はそうではなかった。勇者1人を召喚する言わば『勇者召喚』特定の人物だけを呼び寄せるものだった。でも『勇者召喚』には欠点があった。特定の人物の近くに人が居ると巻き込んでしまう、王道と言えば王道だ。更に言えば、なぜか巻き込まれた人の方が勇者より能力が強かったりする。
そう。私は巻き込まれたのだ、勇者召喚に。20年前、私がまだ中学生の時のことだったね。あの世界で10年も過ごしたのだから、逆に言えば地球に帰るまで10年も掛かったってことだね。
「出来ることならもう一度、あの世界に行きたいな」
なんて、ため息を漏らしながら呟いてみる。私は“あいつ”に言われていた時間をもう一度確認して時計を見た。
残り5分
私は壁に吊された時計を見ながら深呼吸をして、降りる準備をした。
「そろそろ、かな」
私はゆっくりと立ち上がり、部屋の電気を消して1階へ降りた。1階の灯りは見たところほとんど消されていて妙に薄暗かった。
ザザー
すると奥の方から水のような音が聞こえた。私は風呂の灯りが付いていることに気付き、ドアの前までゆっくり歩いた。中の音はシャワーのせいで全く聞こえず、私はどうしようかと悩んだ。ふと、時間が気になり身に着けていた腕時計を見た。指定の時間まで残り2分を切っていた、私は意を決してお風呂のドアを勢いよく開けた。
ザザー……
何も聞こえなかった。私はリーリィが何かしら声を上げると思っていた、いや普通はそうだろう。浴槽の扉を勢いよく開かれ、悲鳴の1つもあげない女性がいるだろうか。
少しすると霧が晴れ、浴槽内部がよく見えだし始めた……がそこには誰もいなかった。シャワーの音だけが浴槽を木霊していた。
私は訳が分からずそのまま立ち竦んだ。数秒後やっとこの状況の意味が分かった。
「ま、まさか……逃げられた!?」
瞬間、微かだがサイレンの音が聞こえた。私は耳を澄ましてその音を聞いた。救急車、パトカー……そして市民の声。私は咄嗟に2階へ上がり、自分の部屋へ向かった。
私の部屋に着いている窓は丁度玄関前の道が見えるようになっていた。
『なんだなんだ?』
『ここから先は通行止めです! 迂回してください』
『こりゃあひでぇな……』
それぞれが口々にこの有様を見て発している。玄関前には地面に寝そべった『人』がいる。それを囲むようにして、救急車とパトカーがおりその周りに人だかりが出来ていた。暗くてその『人』はよく見えなかったが……、悪い予感がした。すると突然周囲が明るくなった、私は空を見上げた。雲で遮られていた月が姿を現していた。それにより月明かりが『人』を照らす、私はその『人』が女性だと気がついた。それと同時に、この『人』が誰かも分かってしまった。
「リー、リィ……?」
私は思わず彼女の名前が口からこぼれ落ちた。私は悟ってしまった。これから私が殺すはずだった人を殺されてしまった。それは即ちあいつとの約束がこなせなかったと言うことだ。私はその事が無性に悔しくなり、そして激しい怒りも覚えた。だがそんな感情がどうでもいいことはすぐに分かった。なぜなら私はリーリィを“殺そう”としていたのだから。
「まあ、いいわ。あとであいつに報告しておかないと……、さよなら理恵。向こうの世界で会えるのなら会いましょう――」
そう言って私はこの家を後にした。
これは、うん。大変だったね(書くの)だって、ねぇ、ネタバレをしないように気をつけつつ、次の展開の予想が付くように書く。難った。
さて、次はアルファポリスのホラー系の投稿だ笑 これは年が明けてから投稿だけどね
えー、ではまた再来週――




