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~極道の娘は転生幼女~


 そよ風が心地良い午後、畳の香りが風に乗って小町の所にも届いてくる。


 (あぁ~いい天気~♪♪)


 懐かしくも落ち着くその香りを、いっぱい堪能しながらポカポカ日差しにうとうとし始める。

 その姿は───誰も彼もが構いたくなる程に愛らしい、玉の様な赤ん坊であった。


 その可愛らしい姿にそぐわない、まるで成人した者の様な思考を小町は持ち合わせていた。




 それもそのはず。──小町は転生し赤ん坊からリスタートした元成人女性なのだ。

 



 小町は”前世の記憶”を大部分持って生まれてきた。

 所々抜けている記憶もあるが…恐らくこの小さな体に28年間もの膨大な記憶は入りきらなかったのだろう。

 今現在も、時間が経つにつれてポロポロと記憶が零れていってるもの分かる。

 いつまでこの前世の記憶を覚えてられるのか、どのくらいの記憶を覚えてられるのかは分からないが、小町は”絶対に忘れたくない”と思うことは毎日毎日心の中で思い返したりして記憶を定着させていた。


 

 

 暖かい日差しを浴びて気持ち良くなっている小町は、生理現象である大きな欠伸が出た。

 その際小さなお手々では口も押えられないし、ダラダラと伝う涎も満足に拭けない…。


 (くっ!涎が!!赤ちゃんってこんなにいっぱい涎出るって知らなかったよーー!!)


 どうにか拭いたいが、ぷにぷにした可愛い短いお手々では…どうすることも出来ない。

 小さく絶望している時、傍に控えていた青年が小町がぐずっていることに気がついた。


 「おっ!お嬢、眠たそうだなぁ?ん?なんか機嫌悪そうだな…涎を拭いてと…よしっ大丈夫っす!さぁ、お休みになってくだせぇ。」


 「んぅ~、ぁう~」(気になってたからありがたい~これで寝れ…る)



 青年が小町の様子を見て、口から出ていた涎を丁寧に拭ってくれた。

 小町は反応を返すと、ポカポカ日差しに誘われ「すぅー、すぅー」と眠りについた様だ。



 そんな気持ち良さそうに寝入った小町を見つめ、その強面の顔をニマニマと締りのない表情に変えた青年は一時眺めていたが、ようやく自身の作業に戻った。


 その手にはナイフ、メリケンサック、万年筆と思いきや中には尖った刃物があった。

それらを一つ一つ手にとっては、鼻歌を歌いながら磨いたり欠陥がないか注意深く確認している。

器用に手入れをするその手を観察するが、おかしなことに手で動かしていないはずのモノまで動いているし…そもそも宙に浮かんでいる。



 ───そう、この世界にはいわゆる”魔法”と呼ばれる特別な力が存在する世界で有り、さらにこの青年はこの地域で昔から根を張っている”亀城組”に所属する極道者だ。


 

 見るからに怖そう、強そう、なんかヤバそう…と堅気の人間だったら尻尾巻いて逃げる様な人物に、小町はお姫様のごとく大事に大事に世話をされているのだ。


 初めは小町も(なんか凄いヤツいるやん)と思っていたが、前世の記憶があるからなのか赤ん坊だからなのか…特に嫌がりもせず大人しくしている。

 そんな自分を怖がりも拒絶もしない小町を見て、青年はホッとしたし…めちゃめちゃ嬉しくてデレデレ顔でしっかりとお世話をしている。


 本当はもっとチュッチュチュッチュして猫可愛がりしたいのだが…そうもいかない。




 先程青年は小町の事を何と呼んでいただろうか?

 ”「お嬢」”である。



 お気づきの通り、小町はこの亀城組の組長の孫、若頭の娘という立ち位置であり、ただの舎弟である青年がおいそれとベタベタしてはいけない存在なのだ。



 



 



  



 

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