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変わったことがありましたか?


 翌朝。

 本当は帰らなければならないが、残業を言い訳に残ってデータを漁った。夜勤もあるため泊まることに不都合はない。シャワーを浴びるとかなら話は別だが、その必要もない。

 通常業務と聖女関連の後始末もあったせいでその日のうちに終わらず、仮眠を挟んで朝になってしまったが結果は出た。


「多すぎる……」


 出てきた答えはそれだった。

 チャレンジャーは多すぎる。


 三年間の異世界チャレンジ総数、791465件。

 

 死んでしまった数や個人の数となるともう少し少ないが、それにしても多すぎる。

 今までそういうものだと受け入れていたが、これは異常だ。

 異世界チャレンジ流行前の年間交通事故件数が毎年50万件前後。

 三年間とはいえそれを優に超えている。


 さらにチャレンジャーの年齢構成にも差が出てきた。

 初期の頃は十代中盤に固まっていたチャレンジャーが、全年齢に広がりを見せている。

 今では60代70代もそう珍しくない。十代から四十代くらいまではチャレンジャーの数も同じになっている。


 それだけではない。

 異世界チャレンジの年間件数は増えてきている。

 まだ微増の段階だ。少しずつ増えている、程度だが――


「……マズい」


 月別件数のグラフに異常の兆候が見える。

 気のせいだったらいい。杞憂ならそれで構わない。

 だが、これがもし予想通りなら猶予はない。

 異世界チャレンジ、その発生件数が。


 ()()()()()()増大している疑いがある。


 ”まだ”微増だ。

 ”今は”致命的状況ではない。

 しかし、もしもこれがこのまま指数関数的に増加するとしたらどうなるか。

 仮にチャレンジャーをy、日数をxとして、y=x^2が成立すると仮定すると、1000日程度で日間100万人を超える死者が出ることになる。地球人口が0になるまでそう長くはかからないだろう。

 元々指数関数的に増加すればxが一定値を超えた時点で取り返しがつかなくなるのだから。


「無視は……できない」


 既に増加の兆候は出ている。

 最悪の事態に陥るくらいなら、無駄打ちになっても対策をとるべきだ。

 だが、何をどうすれば対策になる? 転生阻止課として既に対策はしてきた。こんな曖昧な情報で他の人を動かすことはできないし、しかし俺一人でこれ以上できることもない。

 そんな簡単に異世界チャレンジを無くせるならとうに解決している。

 一度流行したものはそうそう止まりはしない。

 そんな、一発でどうにかできるような明確な原因なんて――


 ――どうされましたか?


「っ!」


 振り向いた先には、聖女がいた。

 みると聖女のみならず先輩方の姿もあった。


「早いですね。まだ八時前ですよ」


 ――まだまだ覚えることは多いですから


「素晴らしい心がけです」


 パソコンの画面を閉じる。

 軽く伸びをした。

 深刻な悩みが吹っ飛んだような気分だ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ――何かあったんですか?


「いえ、なんでもないですよ」


 どうでもいいことである。

 今日も仕事だ。チャレンジャーの相手も聖女の相手も頑張らないと。


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