二人の昼休み
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ホームルーム後、授業中に紙が回って来た。紙には、
『話がしたいです。お昼休み中庭に来てください。羽多』
と書いてある。
私は、
『C館非常階段前に行ってください。』
と書き足して、紙を折って、返して欲しいと隣に渡す。
お昼休みは、羽多ちゃんを非常階段前へ行かせて、私は美術室へ来ていた。
こっそり美術室でお昼を食べいたら、しいちゃんが準備室から出てビックリした。
「相田さん、ちょうど良かった。」
「あ、ごめんなさい。勝手にここでお昼……」
私はお弁当箱を片付けようとすると、
「いいよ。別に。ここは飲食厳禁じゃないから。」
そう言ってくれたから、お弁当はそのままにした。
「お弁当、手作り?」
「最近は帰りが遅くなる事もないし……時間に余裕があって……」
「時間余ってるの?じゃあ、ちょうどいいかも!学園祭の展示、パネルに書くのはどうかな?」
パネル?
「学園祭に展示するなら、大きい方がインパクトあるでしょ?それに相田さん描くスピード早いし、普通のサイズの紙じゃ2、3日で完全しちゃうでしょ?」
確かにそうかも。まぁ、演劇部で忙しい予定だったからそれでもいいと思ってたけど……。
「パネルを作って、紙張って、その紙に描くの。大きいから描くの難しいかもしれないけど……」
「演劇部の看板もそうやって作ってました。じゃ、釘とノコギリとなぐりを……」
「なぐり?」
は!っとした。普通の人はトンカチをなぐりとは言わない……。
「トンカチの事です。」
「うーん。どれもいらないかな?このサイズの木を大きいホッチキスで止めて、紙もホッチキスで止めて、周りをテープで止める。こんな感じ。」
しいちゃんは小さいサイズの完成したものを見せてくれた。
「なるほど……。強度はあんまり必要無いんですね。ああ、ダメだ……私かなり頭が演劇部に浸食されてる気がする。発言が普通じゃない。」
私が頭を抱えていると、しいちゃんが笑った。
「あはは。そうね。だいぶ普通の女子高生の発言じゃなかったね。」
しいちゃんに手伝ってもらって、なんとか畳1枚分くらいのパネルができあがった。汚れひとつない、真っ白な世界ができあがった。
「何を描けばいいのかな?」
「別にテーマは決めてないから自由だよ?好きな物を描いてね。」
「好きな者……?わかりました……!描いてみます!」
私はいいことを考えた!
昼休みにC館非常階段前へ行くと、そこには晴喜がいた。
晴喜は私が近づくと振り返って言った。
「やっぱり来てくれたんだ!ひらりちゃん!……なんだ。羽多か。え?羽多、何でここに……?」
「ひらりちゃんがここに来るようにって。ひらりちゃんは?まだ来てないのかな?」
私がそう言うと、晴喜は肩を落とした。
「はぁ……もうだめだ。完全に嫌われた。ひらりちゃんマジ切れなんだ……。」
晴喜は膝を抱えて落ち込む。
「は?何言ってるの?マジキレなのは、昨日のあの様子からわかるでしょ?普通。」
「あーあ、羽多にここを教えたって事は、ひらりちゃんはもう二度とここに来る事はないのか……。」
そう言うと晴喜は、今度は手足を伸ばしてだらけた。
「どうして?」
「ここが二人の秘密の場所だから。いつも二人でここでお昼食べてたんだ。」
「そうなんだ……。」
さっきは落ち込んでたけど、今はもう平気そう。晴喜はひらりちゃんの事、本当はどう思ってるんだろう……。
「晴喜はさ、ひらりちゃんの事……好き?なの?」
「好きだよ?」
かっるー!軽すぎるよ!晴喜は私の質問にいとも簡単にアッサリ答えた。これじゃ、晴喜が本気なのか、いつもの遊びなのかわからない。
「ひらりちゃんのどんな所が好きなの?」
「なかなか格好いいって言ってくれない所。」
うーん。意味不明。
「他には?」
「いじめても這い上がって来る所。」
いじめてるの?
「他には?」
「本音を……本当の僕を見たがったから。中に踏み込んで来たのはひらりちゃんが初めてだから。」
「本当の晴喜?私は……本当の晴喜を知らないの?」
私の質問に晴喜は笑い出した。
「あははは!何言ってるの?全然知らないよ。羽多は他の女の子と同じで、外っ面ばっかり見てるから。勝手に理想の僕を押し付けて来る。ひらりちゃんといると、僕は自由でいられるんだ。」
「…………。」
わからない。晴喜が言ってる意味が……いつも優しい晴喜は本当の晴喜じゃないの?私が押し付けてる?理想を?わからない。全然わからない。
結局、その日の昼休み、ひらりちゃんは来なかった。




