公演1日目
7
何とか……何とか初回の一回が終わった。今度こそ……今度こそは、こっちを向かせる!そう、思ってやったけど…………こっちを向いてくれたのかな?公演終了後、役者全員が舞台に出て挨拶をする。
「人数も少なく、力不足な部ではありますが、少しでも興味のある方は入部よろしくお願いします。」
部長の挨拶の後は、よく覚えてない。片付けして……早く帰りたい……。今日はお父さんが早く帰れる日だし。お父さん、今日学校に迎えに来てくれるかな……?
「ありがとうございました!」
受付が客出しをしてくれて、やっと外に出られると思っていたら…………
「ひらりちゃんお友達~」
受付の先輩に呼び止められた。私はジャージを肩に羽織って、外へ出た。
「ひらりちゃーん!」
あ、チラシをもらってくれた男子……?本当に来てくれたんだ。
「観に来てくれて、ありがとう。」
寒い……。寒気がする……。
「最初全然ひらりちゃんだってわからなかったよ。いつもと全然違うから。」
「役で違う人だからね。」
嬉しい!見てくれた人がいる……!せめて名前ぐらいは訊いておこう。
「えと……名前は……?」
「僕?僕は白石 晴喜」
背の高い男子は白石君って言うんだ。
「僕の事は晴って呼んでよ!みんなそう呼んでるし」
晴…………心の中では呼んでみたけど、この人は苦手だなぁ……もう1人はもっと苦手だけど。
「こっちは春壱。須藤春壱。みんなはイチって呼んでるよ。」
「ハル……イチ君……。」
何故かそっちの人の名前は思わず口に出してしまった。
「須藤。」
へ?
「須藤って呼べ。」
「あ、須藤君もありがとう。」
何で?何だか微妙な雰囲気……。なんか……気難しい人……。
「ひらり!衣装脱いで!そろそろ片付け!」
部長に声をかけられ、やっと抜け出せた。
「はーい。もう行くね。二人とも今日は観に来てくれてありがとう。」
だって、クラスの男子と何をどう喋っていいかわからない。
「ひらりちゃんまた明日ね!」
二人を見送った後は、着替えて…………
「ひらり?どうしたの?」
受付の先輩の声が聞こえた時にはもう、立っていられないくらい辛い…………半端なく体が重い……。
「大丈夫?ちょっと!熱あるんじゃない?片付けはいいから、保健室行きな。1人で行ける?」
「はい……。」
着替えだけはしないと……衣装が……もうろうとした意識でどうにか着替えをして、保健室への道を探した。とにかく今すぐ横になりたい……。辛い…………辛い…………。
なんとか下駄箱までたどり着くと、さっきの男子二人がいた。
「どうしたの?」
返事する余裕すらなかった。とにかく、ベッド…………
「ひらりちゃん大丈夫?」
うるさい……!話かけないで!今、私それどころじゃないから。
「大丈夫……。」
普通の女子なら…………助けてって言えるのかな……?
「僕に寄りかかっていいよ。」
え…………?
無理やり腕を肩にかけられ、腕が引っ張られる。嬉しいけど……けど…………この人、背が高くて、逆に辛い……!
「晴、代われ。お前の背に合わせたらこいつ逆にキツイだろ」
「助かったよ壱。中腰キツかったんだ~」
キツイなら助けなくていいよ……。
「キツイなら助けるなよ。お前ならお姫様抱っこぐらい平気でやると思ったけどな。」
「僕は壱みたいに鍛えてないから。じゃ、壱、ひらりちゃんを頼んだ!僕これから約束あるから。」
え……!?こっちの人に丸投げ!?
「別に鍛えてない。」
こっちの人、ちゃんと肩貸してくれてる……。さっきよりよっぽど楽……。体重……なるべくかけないように歩かないと…………。
「何の為に肩貸してると思ってんだよ。体重預けろ。お前の体重がこんなに軽い訳ないだろ。」
この人は…………
「晴が運べない重さだぞ?俺に無意味な事をやらせるな。1人で歩けるなら1人で歩けよ。」
良い人なのか……どうなのか……
そもそも、あっちの男子の方は運ぼうとすらしてないし……いや、重いし悪いから別にいいんだけども……辛いなぁ…………。あぁ……保健室、遠いなぁ…………。




