表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/163

月のお姫様


嫌な予感がしつつ、俺は放課後に帰り支度をしていた。

「壱~!一緒にひらりちゃんの公演観に行こう!」

やっぱり女を引っかける事に関しては本気だな。

「1人で観に行く勇気ないからさ、一緒に行ってよ。」

「女口説く勇気あるのに、1人で観に行く勇気はないんだな。」


新入生歓迎公演って新入生が行くもんだろ?しぶしぶ晴について見に行くが、案の定、数人の1年以外誰もいない。


「こんにちは~中へどうぞ~!」

受付でパンフレットのような物とアンケート用紙を渡された。前回見た時は、感想を書く気にもならなかった。俺達は目立たないように一番後ろに座る。晴に捕まらなければ、こんなに無駄な時間を過ごす事なかったのに……。


「開演の時間になりました。入口閉めます!」


音楽が止まり、照明が暗くなる。別の音楽が大きくなる。音楽がまた低くなると、数人の役者が出て来る。あいつ、何役だっけ?月のお姫様?あれがお姫様やるのかよ。笑える。


月のお姫様……?ふと、資料集のプロフィールシートを思い出した。あれは、役のプロフィールか……。


「私は、もう姫ではありません。ただの月の住人です。」


しかし……見違えた。あれが?眼鏡ブスのあれ?なのか?女は化けるって言うが…………あれは詐欺だ。

「ひらりちゃん出てきた?」

「最初から出てるだろ。ほら、あれ。」

俺は姫役の方を指で差す。

「え?っ嘘!あれがそうなの?」

「お前声が大きい!この紙にはそう書いてあるだろ?」

そりゃそうだ。チラシすら読まない晴が、パンフレットを読むはずがない。


「壱、ちゃんと読んだんだ。偉いね。」

「偉くねーし。」

俺は映画や舞台は先にパンフレットを読む。それにしても、正直、前回より悪くない。それにしても、見られるってレベルだ。

「ひらりちゃん、いつもと全然違うね。」

「役だからな。」

「ほら~だから言った通りでしょ?」

晴は前の席の背に肘をかけ、身を乗り出して、得意気にこっちを見る。

「は?」

「眼鏡を取ったら可愛い。」

確かにあいつ…………あんな顔してたんだ……。全然知らなかった。


こればっかりは、晴を馬鹿にはできない。それが少し悔しい。

「目ぇ悪いのか?眼鏡取ったらマシになった程度だ。」

悔しいから、可愛いなんて絶対言ってやらない。


しかし、月のお姫様というより…………小さな蝶?みたいだ。ヒラヒラした衣装が動く度、羽のように一生懸命もがいているように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ