イメチェン作戦決行
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昨日は久しぶりにお姉ちゃんに会えた。私には、電話をかける勇気がなかった。春壱のおかげで、またお姉ちゃんに会えた。2年ぶりくらいかな……?全然変わってなかった。相変わらず強引で、でも明るくて優しくて……イメージチェンジで部長に心配させない作戦も、お姉ちゃんは協力してくれた。
お姉ちゃんに手伝ってもらって、なんとかイメチェンに成功した。眼鏡からコンタクトに、お化粧も少しして、髪もちゃんとセットした。これならきっと、先輩達も納得行って稽古やってくれるはず!!
と、意気込んで私は、3年生の教室の前に来て、部長を呼び出してもらった。先輩は私を見るなりこう言った。
「まさか、遅れてきた高校デビューを果たしたから、稽古しろとか言うんじゃないでしょうね?」
「はい……。」
部長は私をじろじろ見て、少し考えるも、すぐに考える事を放棄した。
「ん~無理!!もうみんな遊ぶモードになっちゃったも~ん!」
ですよね~。
「ひらりの初めてのデート、みんなで楽しむ……あ、違った、応援するから~」
今、楽しむって……
「楽しむって言いましたよね?」
「そう?そんな事言ったかな~?あ、放課後部室集合ね!じゃ!」
そう言い残して部長は教室へ入って行った。完敗だ……。
先輩に完敗した私はとぼとぼと自分の教室に帰って行く。今日は何だか妙にざわついてる。何かあったのかな?
「ひらり?ひらりなの?」
「おはよう莉奈。」
いつものように莉奈が登校してきた。
「おはよ~なんか、めちゃくちゃ変わったね~何かあったの?」
「ああ、これには事情があって……。」
私は莉奈に事の経緯を話す。
「で、完敗して帰って来たんだ。でも、いいじゃん!こっちの方がいいよ!」
「毎朝こんなに小綺麗にする時間ないよ~!」
そこへ春壱が登校して来る。
「あ、春壱おはよう!」
「お前…………誰?あ、ひらりか。」
「春壱、昨日はありがとう。おかげで髪もお化粧もやり方全部お姉ちゃんに教えてもらったよ。」
春壱はしばらく私を見て、立ち止まる。
「お姉ちゃんいたんだ~」
莉奈の声に我に帰った気がした。また……あの目だ。春壱は一体今何を考えたんだろう……。色恋事じゃない事だけは何故かわかる。
「なんか、変かな?変だよね?」
私は春壱から、感想を引き出そうと必死だった。でも、春壱は少し考えて、
「別に?外見変わっても中身は変わってないだろ?」
と言った。その言葉に莉奈のツッコミが入る。
「壱~!そこは、普通、そんな事ないよ。可愛いよ。って言うもんだよ?」
何だか恥ずかしい。何だか誤魔化したい。
「うん、まぁ、残念ながら中身は全然変わってないよ。実際にお見せしましょうか?ヒラリー婦人の顔真似!!」
お得意の変顔をしてみる。
「ぶー!変顔やめれ!!佐藤が引いてるだろ?」
「ひらり……せっかく可愛くなったのに……。」
莉奈、そんなに気を落とさなくても……。




