エチュード
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今日はひらりちゃんが学園祭実行委員会に出ていて、1人で演劇部に来た。すると、春壱に訊かれた。
「あれ?羽多、ひらりは?」
「今日は委員会があるから先に行っててって。」
「そうか。そういえばあいつ実行委員だったな。じゃ、着替えて来る。」
そう言って春壱は男子更衣室へ行った。春壱が出て行くと、廊下で1年生がひそひそ話をしているのが聞こえた。
「年功序列だって……。新学期公演も手伝ってないんじゃ私達より知らないんじゃない?」
一年生の太田さん?だっけ?
「あーあ。私今回は出られると思ったんだけどな~」
この子は誰だっけ?
「ごめんね。私だけまた……。」
「宮ちゃんは新学期公演頑張ったじゃん。当たり前だよ。」
宮島ちゃんは宮ちゃんって呼ばれてるんだ。
「後から入って下手くそより全然納得いくよ。」
まぁ、予想してたし、ごもっともな話なんだけど……少し……辛いかも。
私が少し凹んでいると、そこへ元部長の井上先輩が練習教室に入ってくる。
「おはよ~!ひらりが前半来られないから、頼まれたから来たよ~!あれ?春壱は?」
「着替えに行きました。」
「そうなんだ。まだ基礎練習はじまってないんだ。じゃ、羽多、少し遊ぼう。はい、1年生も集まって~!先輩と少し遊ぼうか」
先輩はどんどん仕切って、みんなを集めた。
「何して遊ぶんですか?」
「羽多は兄弟いる?」
「いませんけど……。」
「じゃあ、姉、妹、どっちが欲しい?」
え?欲しい?
「えと……じゃあ、お姉さん?」
「じゃあ、三姉妹にしてみようか。1年生、1人出て。はい、最初はグー!じゃんけん、ぽん!私の勝ち~!私は末の妹役~二人でじゃんけんして。」
太田さんとじゃんけんをすると、
私が勝つ。ひぃ~さらに角がたつよ~先輩はどんどん話を進める。
「長女と次女どっちがいい?」
「じゃあ、長女で。」
どうして、長女だの何だの選ぶんだろう。
「大田は次女ね。いい?設定はこう。明日は両親の結婚記念日。三人でサプライズを用意する。ま、とりあえずやってみようか。」
「え?台本は?」
「台詞は役になって自分で考える。」
「は?」
私は混乱した。台本の台詞を読むだけで精一杯なのに、自分で考えるなんて!
「少し考える時間必要?ま、とりあえずやってみよう。」
「誰か、手叩いて~!」
宮島ちゃんは容赦なく手を叩き始める。
「よーい、スタート!」
突然、先輩と私と一年生、三人の即興演技が始まった。
「お姉ちゃん、リモコン取って~!」
先輩は私の方を見た。
「……あ、私?そっちのお姉ちゃんの方かと思った。」
え?どうすればいいの?リモコンなんてないし。そう思っていたら、先輩は私の前に来て、エアでリモコンを持つふりをした。そっか。そうゆうことなんだ……。じゃあ……確か……
「あ、明日、お父さんとお母さんの結婚記念日だけど、何かサプライズしようか?」
「サプライズって?何するの?」
太田さんはさらっと台詞が出た。
「うーん。思い付かない……。何かいい案はないかな?」
どうすればいいの?苦しい……頭が回らない!
「ケーキとお花とか?」
太田さんも苦しそう……。
「それじゃ、ありきたりだよね。でも、それしかないかな……?」
「…………。」
とうとう……全員黙ってしまう。
すると、先輩がポツリと言った。
「そもそも、お祝いなんて必要なの?」
「え?」
私と太田さんは同じタイミングで
「お互いに興味ないのに、子供の私達にお祝いされて嬉しいのかな?」
え?えーえー!!先輩、そうゆう展開ですか?
「そ、それは……!」
「で、でも、お祝いすれば、何か変わるかも?よ?」
太田さんは語尾が裏返ってしまった。先輩は少し笑って言う。
「よ?って何?お姉ちゃん。」
「そ、そうだよ。子はかすがいって言うし、私達が協力してあの二人を元の夫婦関係に戻せるかも……」
先輩はじっと私の顔をしばらく見つめる。な、何?何なの?
「お姉ちゃん達甘~い!それで戻らなかったら……離婚したら、どっちと暮らすのかな…」
「…………。」
ど、どうしたらいいでしょうか?
私が困っていると、春壱が手を叩いて演技を止めた。気づけば春壱はとっくに練習教室に入って来ていた。
「何してるんですか?先輩」
「あはははは!あー面白かった!アドリブの練習?時間があったから、遊びでエチュードやってたの。」
先輩は1人で笑っていた。
すみません先輩……私は、全然笑えないです……。
「エチュード?」
「即興劇ってゆうのかな?本当はお題もなく突然始めるんだけどね。今回は初めてだから、わかりやすくお題ありでやってみた。」
「変な汗かいた……。」
達成感より、解放感の方が大きかった。私がぐったりしていると、太田さんが近くに来て話しかけて来た。
「先輩、初めてなのに、よく台詞出ましたね。」
「太田さんもさらっと出てたよね?凄いよ!」
「私なんか乗っかっただけで、全然……。」
先輩は私と太田を見てニヤニヤしていた。
「あー。二人の焦る顔が面白かった~」
「部長~!急にすごい展開になるからびっくりしましたよ!」
先輩はきっと……私と一年生の間を気にして……
「もう部長じゃないって。だって、日常ばっかり見せても面白くないじゃない?不仲の方が面白かったでしょ?」
「確かに。場が動いた気がしました。」
宮島ちゃんは真面目なんだ……。
「見てる人は非日常を楽しんでるの。みんなも、役になりきって非日常を楽しんでね。じゃ、遊びはおしまい。基礎練習行ってらっしゃ~い!」
「はーい!」
みんなはどんどん練習教室を出て行く。
「小河先輩、今日ひらりちゃんいないなら一緒にストレッチしてください」
「いいよ!じゃあ、私も羽多って呼んでよ。」
そう言って私も練習教室を出た。




