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書かれたアンケート用紙

10


言の葉に力があるとしたら、きっと、台詞は呪文なのかもしれない。開け!ゴマ!開け!心のドア!開け!届け!!私の声!私の言葉!


私は公演が終わると、すぐにロビーに出た。だって、だって、初めて、クラスの女子が観に来てくれた。

「ひらり~お友達~!」

「はーい!」


クラスの女子達はちょうど客席から出て来た所だった。

「あ、相田さ~ん!」

「本当に観に来てくれたんだ!!みんなありがとう!!」

嬉しい!嬉しい!みんなが観に来てくれた!!凄く、嬉しい!!

「なんで俺まで……。」

「いーじゃん!大勢の方が楽しいじゃん!」

何で昨日の二人もいるんだろう……?


「なんか、なんか……相田さんいつもと違って、キラキラしてた!」

「そりゃそうだよ。だって、恋してるんだもん。」

そう。私には夢中になれる物がある。

「えー!?彼氏いるの!?」

え?何でそうなるの?

「は?彼氏?彼氏はいないよ?」

「じゃ、好きな人?」

ああそうか。恋って言ったら人になるよね。

「違う違う。私、舞台に恋してるの。今は演劇に夢中って事。」

「なんだ~!」


「あの、もし、何か感想とかあったらアンケート書いてもらえると嬉しいな。みんなの励みになるし。お願い!」

また少し、勇気を出して、お願いをしてみる。みんなは優しい。みんな真剣に書こうとしてくれてる。

「アンケート、誰に渡せばいいの?お前に渡していいの?」

「え…………?」

アンケートを差し出され、驚きを隠しきれなかった。


「春壱もう書いたの?」

晴君も驚いてる。だって……だって、アンケート用紙は何行もの感想が書いてある。

「じゃ、俺、先に帰るわ。」

「え?壱、ちょっと待ってよ。」

晴君は慌てて書いて私にアンケートを渡すと、彼の後について行く。私は思わず、

「あ、あの~!」

と、叫んでいた。


「何?」

えっと……何か言わなきゃ。何か…………

「アンケート、書いてくれてありがとう!今日も観に来てくれて、ありがとう!」

「昨日よりマシ!」

…………嘘。……マシ?つまらないじゃなくて……昨日よりマシ!昨日よりいい!嬉しい!嬉しい!凄く嬉しい!!

「ありがとう!明日はもっと!もっとマシにするから!」


私は二人の後ろ姿に、全力で手を振ってお見送りした。


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