書かれたアンケート用紙
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言の葉に力があるとしたら、きっと、台詞は呪文なのかもしれない。開け!ゴマ!開け!心のドア!開け!届け!!私の声!私の言葉!
私は公演が終わると、すぐにロビーに出た。だって、だって、初めて、クラスの女子が観に来てくれた。
「ひらり~お友達~!」
「はーい!」
クラスの女子達はちょうど客席から出て来た所だった。
「あ、相田さ~ん!」
「本当に観に来てくれたんだ!!みんなありがとう!!」
嬉しい!嬉しい!みんなが観に来てくれた!!凄く、嬉しい!!
「なんで俺まで……。」
「いーじゃん!大勢の方が楽しいじゃん!」
何で昨日の二人もいるんだろう……?
「なんか、なんか……相田さんいつもと違って、キラキラしてた!」
「そりゃそうだよ。だって、恋してるんだもん。」
そう。私には夢中になれる物がある。
「えー!?彼氏いるの!?」
え?何でそうなるの?
「は?彼氏?彼氏はいないよ?」
「じゃ、好きな人?」
ああそうか。恋って言ったら人になるよね。
「違う違う。私、舞台に恋してるの。今は演劇に夢中って事。」
「なんだ~!」
「あの、もし、何か感想とかあったらアンケート書いてもらえると嬉しいな。みんなの励みになるし。お願い!」
また少し、勇気を出して、お願いをしてみる。みんなは優しい。みんな真剣に書こうとしてくれてる。
「アンケート、誰に渡せばいいの?お前に渡していいの?」
「え…………?」
アンケートを差し出され、驚きを隠しきれなかった。
「春壱もう書いたの?」
晴君も驚いてる。だって……だって、アンケート用紙は何行もの感想が書いてある。
「じゃ、俺、先に帰るわ。」
「え?壱、ちょっと待ってよ。」
晴君は慌てて書いて私にアンケートを渡すと、彼の後について行く。私は思わず、
「あ、あの~!」
と、叫んでいた。
「何?」
えっと……何か言わなきゃ。何か…………
「アンケート、書いてくれてありがとう!今日も観に来てくれて、ありがとう!」
「昨日よりマシ!」
…………嘘。……マシ?つまらないじゃなくて……昨日よりマシ!昨日よりいい!嬉しい!嬉しい!凄く嬉しい!!
「ありがとう!明日はもっと!もっとマシにするから!」
私は二人の後ろ姿に、全力で手を振ってお見送りした。




