羽多とひらりの結託
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次の日のお昼休み、私と羽多ちゃんは二人で一緒に非常階段前に向かった。
「何で羽多も一緒なの?」
「1人で来いって言われなかったから。」
晴君はあからさまに嫌な顔をしていた。その様子に羽多ちゃんは気まずそうにした。
「やっぱり私お邪魔だったよね?」
「邪魔だよ。邪魔!」
晴君は小動物を追い払うように手を振った。
「邪魔じゃないよ。ここにいていいからね。」
私は羽多ちゃんにここにいていいと言って帰らせないようにした。
「晴君、女子に邪魔とか言わないの。フェミニストがあきれるよ。」
「僕がいつフェミニスト公言した?」
「してたよ!言わなくてフェミニスト気取ってたよ!」
いつものように軽く口喧嘩になった。
「ひらりちゃん本当に意地悪だね。本当にムカつく。」
「まぁ、わざとだからね。」
すると、羽多ちゃんは笑いだす。
「あははは!ひらりちゃん、晴喜といつもこんな感じなの?そっか。私……いつの間にか、嫌われたくないって思って、言いたい事言えてなかった。晴喜に理想を押し付けてるって言われて、今は何となくわかるかも。」
「十分言いたい放題だろ?」
「まだまだ足りないよ。ご飯食べるときはちゃんと座って。だらだらするのダサい。」
羽多ちゃんの一喝に、私は拍手した。
「おお~!さすが!」
「ひらりちゃん拍手しないでよ。」
「晴君って厳しい人に甘やかして欲しがるめんどくさい人なんだね。認められたい願望だね。」
「それあるよね。基本チキンで、自分に自信がないから、強い人に依存したがるんだよね。」
「本人目の前で分析しないでよ。」
「私も強くなって、これからどんどん晴喜をしつけて行くつもりだから。」
「うん、心強い。」
羽多ちゃんとしっかりと握手した。
「うわ~何なの?その結託~!やめてよ~」
「まぁ、しばらくはかまってあげられないけど……。ひらりちゃん、今日は演劇部来れる?」
私は晴君の方を見ると、晴君は言った。
「ひらりちゃん行くって。」
「でも……春壱が……」
まだ、許してもらえてない。
「春壱も反省してるから。」
「何?何で春壱が?」
私と羽多ちゃんの顔を、晴君はキョロキョロ交互に見る。
「春壱がひらりちゃんに、練習来るなって言ったの。ごめんね。私が戻って欲しいって言ったのに、春壱にあんな風に言われて……」
「そんな事ないよ。悪いの私だよ。春壱にしてみれば、裏切り者って感じだよね。わかる。誘っといて辞めるって無責任だもん。」
私が膝を抱えて、落ち込んでいると、晴君が言った。
「ひらりちゃんさ、1つ解決方法があるのにわからないの?」
「解決方法って?何?」
羽多ちゃんは晴君に、疑問をぶつけた。
「それは、全部僕のせいだって話しちゃえばいいんだよ。」
それは……そうだけど……
「そんなの……わかってる。でも……私は春壱の怒った顔も、ガッカリした顔も見たくない……。」
「ひらりちゃん……。」
晴君は軽く笑った。
「え?どうして?僕は春壱にいくら怒られても平気だよ?春壱は謝ればいつも許してくれるし。」
私は晴君の方に向かって、正座に座り直して言った。
「晴君、人は誰でも謝れば許すよ?大事な幼なじみだったらなおさら、いいよ。って言う。でも、それに甘えて、人を……春壱を、傷つけたらいけないよ。小さい傷だって数を重ねれば、いつかは爆発もする。何より信頼を無くす。信ずるべきは友達でしょ?幼なじみでしょ?」
「ひらりちゃん、ありがとう。私と同じ、うんん。私よりもちゃんと二人の事考えてくれて。」
羽多ちゃんも正座に座り直して、そう言った。
「羽多ちゃんも大変だね。こんなの二人に幼い頃から挟まれて……端から見れば、男二人に囲まれてキャアキャア言ってるだけの、バカ女に見られるのに……。」
羽多ちゃんはガックリ肩を落とた。
「うーん……。ひらりちゃん……本当の事だけど辛辣……。」




