表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/163

BGM

105


美術室はとても静かで、しばらくみんなが描いていると、晴君が言い出した。

「何だか静かだね。いつもこんなに静かに描いてるの?」

「晴君、うるさくしちゃダメだよ?みんなの制作の邪魔になるから。」

私は子供に言うような台詞に晴君に言った。

「じゃあ、ひらりちゃん何か歌ってよ。」

「なんつー無茶ぶり!」

思わず本音でツッコんだ。ついさっきうるさくするなって言ったのに……。


「ひらりちゃんが歌うの嫌な人~!」

そう叫んで晴君は美術室を見渡す。

「誰もいない。はい。歌って。鼻歌でもいいから。」

いやいや、ここで手あげる人普通いないから!

「突然言われても何歌えばいいのか思いつかないよ~」

「最近何聞いたの?聞いた曲歌って。」

最近聞いた……私はふと、春壱の家で見た映画をもう一度見たくて、ちょうど昨日見ていた。その映画はミュージカルだった。

「最近聞いた曲……下手だよ?みんなは耳ふさいでてね!」

「先輩、耳ふさいだら描けないですよ~!」

「じゃ、心に蓋をして!」

「あはは!はーい。」


私はを歌う。サウンドオブミュージック

「……………。」

私が歌い終わると、やっぱり、美術室は微妙な雰囲気になった。


「これでいいでしょうか?歌ってるとこっちの手が止まる。じゃ、次は晴君ね。」

私は無茶振りに答えて、晴君に振り返した。

「この後に歌うのは気が引けるなぁ……」

「人に歌わせてずるいよ~?流行りの歌でも歌えよ~」

晴君が歌う歌を悩めば悩むほど、下書きが進んで来る。

「もう少し。暑い……」

もうそろそろ終わろうかと思うほど、汗をかいて描いていると、晴君は突然歌い始める。『エーデルワイス』を歌った。私はその歌声に、思わず手が止まる。途中からまた下書きを描き始め、所々、一緒に歌う。やっぱり、あの時、春壱の家で晴君は、少しも寝てなかったんじゃないのかな……?わざと寝たふりしてたのかも……。チャラいし、軽そうに見えるけど、本当はそうじゃない。人は外見からじゃ見えない所がある。外見で判断できる事もある。


私の絵は、どう判断されるんだろう。絵を描きながらそんな事を考えていた。


「あははは!晴君歌上手いね~!」

「ひらりちゃんこそ、鼻歌のレベルを越えてたよ?」

「日々発声練習やってたから、軽く歌うとかできないんだよね~次は慎ちゃんね!」

私は慎ちゃんも巻き込んだ。

「はぁ!?」

「こうゆうのに巻き込まれるのが慎ちゃんのキャラだから。」

「歌ってたら描けない。」

確かにそうだとは思う。でも、私達だけ歌うのは恥ずかしいし、おもしろくない。だから……

「じゃ、一緒に歌おうか!う~ん、何がいいかな~?」

「ドラえもんとかは?」

晴君はドラえもんの歌を提案してきた。

「じゃ、ドラえもん!1年生も一緒に歌えるよね?!」


何故かみんなでドラえもんを合唱する。すると、準備室からしいちゃんが出て来る。

「どうしたの?」

「あ、椎名先生、すみません。うるさくして。」

慎ちゃんは謝る。晴君は、冗談で私のせいにする。

「先生、ひらりちゃんがBGMが欲しいってワガママ言ったんですよ~!」

「ちょっと晴君の無茶ぶりでしょ~!?」

「あははは。楽しそうでいいね。そうだ!音楽かけてあげるの忘れてた。」


しいちゃんはデッキの場所を教えてくれた。

「ここ、聞きたい音楽かけていいからね。曲はみんなで話合って。音楽は絵画に影響されるから。そうだな~相田さんはロックとかいいけど、片岡君はクラシックの方がいいかも。まぁ、好きな時間に好きにかけていいからね~?」

「なーんだ。ひらりちゃんと歌えなくなっちゃったね。」

「だから、歌いながら描けないって。私器用じゃないんだから。」


しいちゃんはパネルの近くに来て言った。

「相田さん下書き終わりそう?」

「まだメインの線が決まらないっていうか……所々決めていくと、修正したい所が出て来るっていうか……」

「相田さんは完成のイメージがはっきりしてるんだね。そのまま描き進めてみて、納得いく下書きになったら色をつけて行こうか。」


その絵を見て晴君は珍しく提案をしてきた。

「ずっと思ってたんだけど、これ、モノクロだとカッコいいかも。」

モノクロ……白と黒だけか……。

「モノクロもカッコいいね。色がない方がよりクールな感じになるね。」

「色でごまかせない方が難しくないですか?」

「まぁ、油絵とかじゃないから、考えて塗り進めるのは同じだから、考えてみて。縮小版を描いて、どっちもやってみるのはどう?」

「じゃあ、スケッチブックにやってみます。」

私はスケッチブックを出し、描いてみる。晴君はその真剣な眼差しをみつめる。

「ん?どうしたの?」


少し考えたら、私の行動はおかしい事に気がついた。

「あ、下書き終わったら帰るって言ってたよね?ごめん描き始めちゃった。」

私が片付けを始めようとすると、晴君は私を止めた。

「いいよ。いくらでも待つよ。」

「本当に?いいの?」

「いいよ。」

晴君は笑顔を浮かべて言った。


私は晴君の視線に気がついて言った。

「そんなに見つめられると描きづらいんだけど……?」

「なんかさ、男前だなぁ~って思って。」

「どうも。……それって誉めてる?」

「誉めてるよ。」

「ありがとう。」

そう言うと、私はまたスケッチブックに描き始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ