表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラフォーおっさんはスローライフの夢を見るか?  作者: サイトウアユム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/138

【幕間2:フトシとコウキ】【修正版】



 コウキは下の階層に続く坂道の前で立ち止まった。

 斥候の話によればこの下が最下層らしい。


「いよいよ、最下層だ。準備はいいね?」

「はい」

「任せておけ」


 コウキが最後の確認をすると、キララとタケシは力強く頷いた。


「私達を頼って下さっても一向に構いませんが?」


 茶化すような声に振り返ると、騎士団長のルークがこちらを見ていた。

 両脇には二人の騎士が控えている。


「ルーク殿、お気遣い痛み入ります。ですが、これは私達の戦いです」

「私達の、戦い」


 ルークは噛み締めるように言い、嘲弄するかのように口の端を歪めた。

 言いたいことは分かる。

 このダンジョンを攻略するために騎士団も被害を受けた。

 とは言え、死者は出ていないし、重傷者も出ていない。

 被害という意味では自分達の方が大きい。

 特に五階層に現れた蜘蛛のような下半身を持つスケルトン――アラクネは強敵だった。

 支援チームまで投入して戦い、ようやく倒したのだ。

 そのお陰でコウキはレベル15になったが、被害を思えば喜べない。

 リスクを回避しながら全体的にレベルアップするのが理想だ。


「俺が先頭、次にコウキ、最後がキララでいいな?」

「ああ、頼りにしてるよ」


 コウキはタケシの胸を軽く叩いた。

 タケシは守護騎士――敵を引き付け、攻撃を受けることに特化したジョブだ。

 それにしてもいつの間に名前で呼ぶようになったのか。

 一応、口止めしておくべきか。

 そんなことを考えていると、キララが口を開いた。


「援護は任せて下さい」

「もちろんさ」


 コウキが微笑みかけると、キララは恥ずかしそうに俯いた。

 キララのジョブは聖乙女。

 聖乙女なんて失笑ものだが、適正レベル以上の魔法を習得し、威力に補正が掛かるレアなジョブだ。

 不意にタケシの視線を感じた。

 大方、嫉妬でもしているのだろう。

 よくない兆候だ。

 組織のトップとNo.2が仲違いしていてはルークに付け入られるかも知れない。


「行くぞ!」

「おう!」

「はい!」


 タケシを先頭に坂道を下ると、そこは広大な空間だった。

 地面は固まった溶岩のようにゴツゴツとしている。

 視線の先――空間の中央と思しき場所に祭壇らしきものがあった。


「ゆっくり近づこう」

「おう」


 タケシは盾を構え、ゆっくりと祭壇らしきものに近づいていく。

 近づくにつれて詳細が明らかになる。

 祭壇は黒曜石のような材質の石で作られていた。

 彫刻が施されているようだが、確認している暇はない。


「……タケシ」

「分かってる。嫌な気配がビンビンしやがるぜ」


 タケシは祭壇を睨む。

 正確に言えばその上にいるアラクネを、だ。

 五階層で見た個体より一回りは大きいだろうか。

 眠っているのか、眼窩に光はなく、八本の脚を折り畳んで座っている。

 このまま攻撃を仕掛けるべきか。

 そんなことを考えていると、アラクネの眼窩に光、いや、炎が灯った。

 赤い炎だ。

 さらに全身から赤い光が湯気のように立ち上る。


「――ッ!」


 アラクネが体を起こして叫ぶ。

 それは声ではない。

 魂に響くような衝撃だった。


「キララ!」

「ペリオリスよ! 不浄なる攻撃から我らをお守り下さい! 抵抗レジスタンス!」


 温かな光がコウキ達を包み、衝撃が和らぐ。

 文字通り、抵抗は魔法に対する抵抗力を上げる魔法だ。

 コウキとタケシはアラクネに襲い掛かった。

 アラクネがコウキに狙いを定め、口を開く。

 光が収束する。

 恐らく、光を撃ち出すつもりなのだろう。


「お、オオオオオオオオッ!」


 タケシが雄叫びを上げる。

 低い、地鳴りのような雄叫びだ。

 突然、アラクネはタケシの方を向き、光を放った。

 守護騎士は特殊な発声法で雄叫びを上げ、敵の注意を引き付けることができる。


衝撃反転リフレクション!」


 光が盾を直撃する。

 衝撃反転は攻撃を跳ね返す騎士系ジョブの技だ。

 今まで何度もこの技に助けられてきた。

 だが――。


「ぐ、ぐぅ……」


 タケシが苦悶の声を上げる。

 見ればジリ、ジリと後退している。

 アラクネは力で押し切ろうとしているのだ。

 一体、どれほど力量差があればこんなことができるのか。


「ぐぁぁぁぁッ!」


 タケシが叫び声を上げ、吹き飛ばされた。

 地面に触れるたびに火花が散る。

 板金鎧を身に着けていなければ血塗れになっていただろう。


「タケシさん!」


 キララが悲鳴を上げるが、タケシに構ってはいられない。

 背を向ければ攻撃を受ける。

 それだけの簡単な理屈だ。

 コウキは剣を構え、突進する。

 アラクネがこちらを向き、口を開いた。

 光が放たれる。

 コウキは強く地面を蹴り、光を躱した。

 背後で爆発音が響き、バラバラと小石が振ってくる。


「痛ッ!」


 コウキは顔を顰めた。

 攻撃を躱したはずなのに腕がヒリヒリと痛んだ。

 アラクネが祭壇から飛び降り、拳を振り下ろす。

 コウキは前に出る。

 相手のリーチは剣を持っているコウキより長い。

 ならば懐に飛び込んだ方が有利だ。

 アラクネが振り向き様に拳を繰り出す。


剣気解放オーラ・ブレード!」


 コウキの剣が純白の光を放つ。

 剣に秘められた力を解放する剣聖の技だ。

 純白の光に包まれた剣がいとも容易くアラクネの腕を切断する。

 アラクネが跳び退り、コウキは追い縋ろうと地面を蹴った。

 だが、動きが止まる。

 光の帯が体に絡み付いていた。

 この魔法は――。


捕縛陣バインドだって!」


 コウキは思わず叫んだ。

 もちろん、アンデッドだって魔法を使う。

 だが、まさか、アンデッドが捕縛陣を使うなんて予想外だった。


「く、クソッ!」


 腕に、脚に力を込めるが、光の帯はビクともしない。

 もう一つのジョブ――聖騎士は魔法に対する抵抗力を与えてくれるはずなのだが。

 アラクネがこちらを向き、口を開いた。

 光が収束していく。


「ペリオリスよ! 不浄なる力を打ち消したまえ! 解呪ディスペル!」


 キララの声が響き、光の帯が不規則に明滅する。


「ハァァァァッ!」


 コウキは叫び、光の帯を引き千切った。

 アラクネが光を放つ。


「ペリオリスよ!」


 コウキは叫び、左手を突き出した。

 光の盾が展開し、敵の攻撃を遮る。

 だが、聖騎士の魔法は魔法職に及ばない。

 縁から徐々に浸食されていく。

 コウキは渾身の力で対抗する。


「ペリオリスよ! 我に不浄なる敵を打ち倒す力を! 聖光弾ホーリー・ブリット!」


 白い弾丸がアラクネの側頭部を殴打する。

 圧力が弱まり、コウキは光をいなして横に逃れる。

 アラクネが光を放つ。

 狙いはキララだ。


「キャァァァァァッ!」

「キララ、危ねぇッ!」


 キララが悲鳴を上げ、タケシが間に割って入る。

 守護騎士の面目躍如と言うべきか、盾で光を防ぐ。

 チャンスだ。


「剣気解放!」


 コウキは切っ先をアラクネの胸――弱点である魔石に向かって突き出す。

 だが、切っ先は魔石に突き刺さらなかった。

 火花が散っているが、それだけだ。


「くッ!」


 コウキは呻き、切っ先を押し込もうと力を込めた。

 火花が激しくなる。

 焦燥が胸を支配し、ルークに助けを求めればという考えが脳裏を過ぎる。

 馬鹿なことを、と否定する。

 あの男に力を借りれば死なずに済む。

 だが、それは軍門に降るということだ。

 それだけはできない。

 できないのだ。


「ペリオリスよ! 彼の者に邪悪を討ち滅ぼす力をお与え下さい! 祝聖刃ホーリー・ウェポン!」


 キララの声が響き、剣が眩い光を放つ。

 視認することさえ難しい。


縮地アクセラレーション!」


 これは数メートルの距離を一瞬にして踏破する剣聖の技だ。

 しかし、この状況ならば運動エネルギーを攻撃のために使える。


「ガァァァッ!」


 コウキは獣のように吠えた。

 肩に、腕に激痛が走る。

 要は作用と反作用の法則だ。

 火花が激しさを増し――切っ先が魔石を貫いた。

 アラクネの眼窩から光が消え、その場に頽れた。


「……勝った」


 コウキは肩で呼吸しながらアラクネを見つめた。


【レベルが上がりました。レベル18――】


 御使いの声が響き、ダンジョンの崩壊が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コミック第3巻絶賛発売中‼


同時連載中の作品もよろしくお願いします。

HJ文庫様からリブート!!

クロの戦記 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです

↑クリックすると作品ページに飛べます。


小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=878185988&size=300
ツギクルバナー

特設サイトができました。

画像↓をクリックすると、特設サイトにいけます。

特設サイトへ

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ