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アラフォーおっさんはスローライフの夢を見るか?  作者: サイトウアユム


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Quest11:薬草を採取せよ【後編】



 マコト達はたっぷりと食事休憩を取った後で出発した。


「この分だと街に着くのは夕方ね。はぁ、1日掛けて50Aか~」

「お前は黙って歩けないのか」


 マコトはわざとらしく溜息を吐くユウカに突っ込んだ。

 言動のせいで痛い目に遭ったのに反省することを知らないのだろうか。


「でも、日給50Aよ?」

「俺達のランクならそんなもんだ」


 マコトとユウカだけなら受けられなかったはずの依頼だ。

 ついでに言えばフェーネの力がなければ失敗していた可能性が高い依頼でもある。


「分かってるわよ。けど、こう、パーッと稼ぐ手段ってないのかしら?」

「地道に行こうぜ、地道に」

「冒険者が冒険しなくてどうするのよ!」

「お前の場合、ギャンブルをしたがってるようにしか見えねーんだよ」


 ビギナーズラックで大金を手に入れてのめり込んでいく姿が目に見えるようだ。


「フェーネ、大金を稼ぐ方法ってない?」

「強いモンスターを討伐すれば稼げるッスよ」

「そりゃ、そうなんだろうけど」


 スケルトン・ロードの討伐報酬は5万Aだった。

 スケルトン・ジェネラルなら討伐報酬は1000Aくらいだろうか。


「魔羆を討伐すれば2000Aは稼げるッスよ」

「おい、魔熊ってのはそんなに強いのか?」

「近隣最強っスよ」

「いや、俺が聞きたいのは一匹でそんなに討伐報酬が出るのかって意味なんだが?」

「討伐報酬は500Aって所ッス」

「近隣最強なのに500Aなのか」

「まあ、人数と装備さえ揃えれば勝てる相手ッスからね」

「そんなもんか?」

「そんなもんス」


 うんうん、とフェーネは何度も頷いた。

 どういう基準で報奨金が決められているのか非常に気になる所だ。

 近隣最強で500A、伝説のモンスターで1000Aは安すぎる。


「残り1500Aは何処から持ってくるんだ?」

「毛皮と魔石を売るんスよ」

「魔石?」

「ちょいと強めのモンスターは魔石っていう石を持ってるんス。ちなみに魔羆の毛皮は防具、魔石はマジックアイテムに使えるんスよ」


 まあ、モンスターから取れた魔石は売り所を選ぶんスけどね、とフェーネは付け加える。

 ふとマコトはダンジョンで倒したアンデッドのことを思い出した。

 嫌な予感がした。


「ひょっとして魔石はアンデッドも持ってるのか?」

「当たり前ッスよ。噂によれば一抱えもある魔石が存在してるそうッスよ」

「なんてこった」

「……だって、あたしも知らなかったし」


 嫌な予感が的中した。

 力なく見つめると、ユウカもまた力なく答えた。

 弱点とばかり思っていたが、まさか金になるとは――。

 いや、過ぎたことをグチグチ言っても仕方がない。


「どうしたんスか?」

「大丈夫だ。ところで、教会では素材の買い取りをしてないって聞いたんだが?」

「買い取ってくれる所は色々あるんス」


 う~む、とマコトは唸った。


「どうするッスか?」

「どうするって言われても探して見つかるもんでもないしな」


 マコトは足を止め、小さく溜息を吐いた。


 ――ッ!


「また、電波を受信したの?」

「電波って言うなよ」


 せめて、テレパシーと言って欲しい。


「で、どっちなの?」

「あっちだ」


 マコトは森の奥を指差した。


「……あっちなんだが」

「何か気になることでもあるの?」

「今までと違って、愉しみつつも焦ってる感じなんだよな~」


 助けに行かなくてもいいんじゃないかと思う程度に逼迫感がない。

 ふと脳裏を過ぎったのはリブの姿だ。

 彼女がモンスターと戦っている。そう考えるとしっくりくる。


「どうするの?」

「助けに行く。知り合ったばかりとは言え、知ってるヤツが死ぬのは後味が悪ぃからな」

「仕方がないわねぇ」


 ユウカは肩を竦めた。


「お前も付いてくるのか?」

「当たり前でしょ」

「おいらも行くッス」


 フェーネは目を輝かせながら言ったが、全力で走るマコトとユウカに付いてくることは不可能だ。


「ユウカ、頼めるか?」

「分かってるわよ。さっさと行きなさい」


 ああ、とマコトは頷き、地面を蹴った。

 解き放たれた矢のように加速する。

 いや、矢はスピードが落ちていく一方なので、ロケットと言うべきだろうか。


「やっぱり、自分の限界が何処にあるのか分からない状況ってマズいよな」


 走りながらボヤく。風景が高速で流れていく。

 にもかかわらず、息苦しくないし、疲労も感じない。


「あとで考えよう。今は声に集中すべきだ」


 声の質が変化している。先程よりも焦燥感が強くなっている。

 かなり追い詰められているのだろう。

 それでも、愉しさの方が勝っているのだから始末に負えない。


「……あれか?」


 目を細めると、リブが巨大な熊と戦っていた。

 熊は後ろ脚で立ち、腕をぶんぶんと振り回している。

 リブは熊の攻撃を躱しながら隙を突いて反撃する。

 だが、ダメージを与えているようには見えない。

 体格差も理由の一つだろう。

 彼女自身もかなり背が高いが、熊はそんな彼女を見下ろすほど大きい。

 もう一つは隙が小さいせいだ。

 遠心力を利用して攻撃できればダメージを与えられるかも知れないが、熊が大振りの攻撃を許してくれないのだ。

 とうとう熊の攻撃がリブを捉える。

 だが、流石は傭兵と言うべきか。

 リブは熊の腕と自分の体の間に得物を割り込ませていた。

 そうしていなければ今頃、頭を吹き飛ばされていただろう。

 とは言え、それは致命傷を受けるのを先延ばしにしただけだ。

 リブは吹き飛ばされ、背中から木に叩き付けられた。

 どれほどの衝撃だったのか、木が激しく揺れる。

 まさに絶体絶命。

 そんな状況にもかかわらず、リブは獰猛な笑みを浮かべていた。

 熊は歩み寄り、とどめを刺すつもりか腕を振り上げる。

 マコトは溜息を吐き、両者の間に割って入った。

 突然の闖入者に驚いたのか、熊は距離を取った。


「お前な~。笑ってる暇があるなら武器を取れよ」

「よぅ、マコト。やられちまったぜ」


 マコトが溜息交じりに言うと、リブは鼻血を垂れ流しながら笑った。

 ポールハンマーは大きく歪み、腕は変な方向に捻れてる。

 皮膚から突き出しているのは骨だろうか。

 あまりの惨状に心臓がバクバクする。

 ちょっと吐きそう。


「……ゾンビでグロ耐性は付いたつもりだったんだけどな」

「マコト、危ねぇ!」


 リブが叫び、マコトは前を見る。

 すると、熊の腕が間近に迫っていた。

 避けるべきかと膝を屈め、背後にリブがいることを思い出す。

 仕方がねーな、と腕を立てた次の瞬間、衝撃が炸裂した。

 足を踏ん張ってみたが、わずかに体が傾ぐ。

 マコトは熊の懐に飛び込み、拳を繰り出した。

 先程に倍する衝撃が炸裂し、熊は砲弾でも喰らったように吹っ飛んだ。

 地面を二転、三転し、ようやく立ち上がる。

 力量差は明かだ。

 にもかかわらず、熊は逃げようとしない。

 死を覚悟したって訳じゃねーよな。所詮、畜生だし、とマコトが考えたその時、熱風が押し寄せてきた。

 赤い光が熊を中心に渦巻いている。

 注意深く観察してみると、赤い光は光り輝く小さな粒子が集まってできていた。

 魔法を使おうとしているのだろう。


「ああ、なるほど」


 ようやく合点がいった。

 熊は魔法があるから逃げなかったのだ。

 恐らく、魔法によって何度も窮地を乗り越えてきたために。


点火イグニッション!」


 漆黒の炎が右腕から噴き出す。


「炎だ――」


 言いかけて口を噤む。

 炎弾を使ったら毛皮と魔石を手に入れられないと思ったからだ。


「……収束コンバージェンス


 燃え盛っていた炎が右手に収束し、漆黒の輝きを放つ。


「グル――――!!」


 熊が低く唸る。

 動物の気持ちは分からないが、戦意を失っているようには見えない。

 それだけ魔法に自信を持っているのかも知れない。

 収束だけで十分だと思うが、とマコトは右手を見る。


「マコト、逃げろ! アレはヤバい!」

「ゴォォォォォォォッ!!」


 熊が吠えると、炎が押し寄せてきた。

 まるで火炎放射器だ。

 こんなことなら出し惜しまなければよかった。

 しかし、泣き言を言っても遅いのだ。


「クソがッ!」


 マコトは右手を突き出した。

 右手は炎を裂き、その後ろに安全地帯を生み出す。

 残念ながら熱風はどうにもならない。


「リブ! 俺の陰に隠れろ!」

「お、おう!」


 マコトが叫ぶと、リブは素直に従った。

 焦げた臭いが漂い、肌がピリピリと痛んだ。

 物理・魔法耐性はあくまで耐性でしかないらしい。

 能力を把握しておかないと本気でマズいかもな、と考えたその時、視界が開けた。

 炎が途切れたのだ。


「グルゥゥゥゥ」


 熊が唸ると、赤い光が再び渦を巻いた。

 自分の攻撃が効かないはずがない。

 あと一撃で殺せる、とでも考えているのかも知れない。

 そこに――。


「リュノ・ケスタ・アガタ! 無窮ならざるペリオリスよ、穿て穿て礫の如く、我が敵を貫く礫となれ! 顕現せよ、魔弾ブリット!」


 ユウカの声が響き渡り、光弾が熊の顔面を吹き飛ばした。

 血、肉、骨、毛皮の破片が周囲に飛び散り、脳みそが露わになる。

 熊はスイッチが切れたように倒れるかと思いきや四つ足でこちらに突進してきた。

 脳と血肉を撒き散らしながら突進してくる様は恐怖を掻き立てる。


「大人しく!」


 マコトは大きく足を踏み出し、拳を振り上げた。


「死んでろ!」


 拳を振り下ろすと、熊は頭から地面に突っ込んだ。

 拳を構えつつ、熊を見据える。

 しばらくして拳を下ろす。


「ああ、仕留め損なった!」


 ユウカが文句を言いながら茂みから出てきた。

 背中にはフェーネの姿がある。


「念のために言っておくけど、報酬は等分だぞ、等分」

「わ、分かってるわよ!」


 ユウカは顔を真っ赤にして言った。


「ほら、さっさと下りなさいよ」

「超怖かったッス」


 フェーネはユウカから下りるとその場に座り込んだ。

 顔面蒼白で今にも吐きそうな顔をしている。


「っと忘れる所だった」


 マコトは背後に向き直り、顔を顰めた。

 リブの髪は焦げ、炎で炙られたせいか、全身が真っ赤になっている。

 開放骨折した腕が痛々しい。

 と言うか、吐きそうだ。


「あまり大丈夫そうに見えねーけど、大丈夫か?」

「ああ、マコトのお陰でな」


 そう言って、リブは愛嬌のある笑みを浮かべた。


水薬ポーションは持ってるか?」

「もちろんさ」


 リブはポーチから小瓶を取り出し、地面に置いた。

 何をするつもりかと思っていたら薄汚れた布を取り出し、軽く噛む。


「……まさか」

「ぐぅぅぅぅッ!」


 そのまさかだった。

 リブは突き出した骨を押し込んだのだ。

 想像を絶する苦痛を味わっているのだろう。

 べとつく汗が全身を濡らしている。

 小刻みに震える手で瓶の蓋を開け、水薬を頭から被る。

 どういう原理なのか、水薬はキラキラと輝きながら蒸発する。

 光の中で傷が急速に癒えていく。

 真っ赤になっていた肌は元の色を取り戻し、傷は急速に癒えていく。

 リブは布を手に取り、荒々しく呼吸を繰り返した。


「本当に大丈夫か?」

「あ、ああ、これくらい慣れっこさ」

「慣れっこ、ね」


 マコトは改めてリブを見つめた。

 注意深く観察していると、体のあちこちに古傷が残っている。

 斬られたと思しき傷、矢によるものと思われる傷、刃物を突き刺し、掻き回したとしか思えない大きく引き攣れた傷もある。


「兄貴、兄貴! 解体するのを手伝って欲しいッス!」

「お前な」


 マコトは小さく溜息を吐き、振り返った。


「その前にやることがあるだろ?」

「やることッスか?」

「……?」


 フェーネとユウカは不思議そうに首を傾げた。

 二人の様子を見て、再び溜息を吐く。


「話し合いだよ、話し合い。リブ?」

「お、おう」


 マコトが呼びかけると、リブは居住まいを正した。


「報酬は等分でいいか?」

「な、何を言ってんのよ!」

「そうッスよ! 兄貴が倒したんだから魔羆はおいら達の物ッスよ!」


 ユウカとフェーネが詰め寄ってくる。


「あのな、先に戦ってたリブにだって取り分を主張する権利はあるだろ?」

「は? 倒したのはあたしとマコトでしょ!」

「そうッスよ! 倒したヤツに優先権があるッスよ!」


 う~む、とマコトは唸った。

 二人には恨みを買わないようにするという発想がないのだろうか。

 肩越しにリブを見るが、援護は期待できない。

 それどころか、自分の取り分を放棄してしまいそうな雰囲気がある。


「あたいはいらないよ」


 案の定と言うべきか、リブはそんなことを言った。


「ほら、本人もいらないって言ってるじゃない」

「そうッスよ」

「……その代わり」


 リブが続けると、ユウカとフェーネは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「あたいに魔羆の毛皮と魔石を捌かせてくれねーか?」

「持ち逃げする気ッスよ、持ち逃げ!」

「そんなことしねーよ!」


 リブは声を荒らげ、取り繕うように咳払いをした。


「あたいに任せてくれりゃ2000Aで捌いてみせる」

「嘘ッス! そんな高値で捌ける訳ないッス!」

「あたいにはコネがある」


 フェーネは喚いたが、リブは自信に満ちた口調で言った。


「2000Aで捌けたら手数料として500Aくれりゃいい。悪くない取引だろ?」

「ああ、悪くない」


 リブの取り分がある点が特にいい。

 視線を向けると、ユウカは軽く肩を竦めた。


「アンタが決めなさいよ」

「いいのか?」

「リーダーはアンタでしょ。フェーネもいいでしょ?」

「……兄貴が決めたことなら」


 フェーネは呻くように言った。


「分かった。毛皮と魔石はリブに捌いてもらう」

「いいのか? 持ち逃げするかも知れねーんだぞ?」

「その時は俺に見る目がなかっただけの話だ」


 金を貸す時は戻ってこないと思って貸すがマコトのモットーだ。

 相手を選び、諦められる金額を貸すということでもある。

 今回は金を貸す訳ではないが、条件を満たしていると言える。


「その前に毛皮を剥いで、魔石を取り出さなきゃならねーけどな」


 マコトが手を差し出すと、リブは照れ臭そうに頬を掻き、握り返してきた。



 翌日、マコトが目を覚まして一階に下りると、リブがカウンター席に座っていた。

 シェリーはいつも通りカウンターで朝食の準備をしている。


「おはよう」

「よ、よう」

「おはようございます、旦那」


 挨拶すると、リブは照れ臭そうに、シェリーはいつも通り返してくれた。

 マコトは欠伸を噛み殺しながらリブの隣に座った。


「マコト、約束の1500Aだ」

「ありがとよ」


 リブから小さな布袋を受け取り、ポケットに収める。

 もちろん、あとでユウカとフェーネに渡すつもりだ。


「確かめねーのか?」

「座ったままってことは約束の金額が入ってるってことだろ?」

「そうだけどよ。マコトはお人好し過ぎるぜ」


 何故か、リブは不満そうに唇を尖らせる。


「なあ、マコト。傭兵になるつもりはないか?」

「昨日も言ったが、しばらくは今の生活を続けるつもりだ」

「本気で考えてるか?」


 リブは身を乗り出して言った。

 昨日とは打って変わって熱の籠もった口調だ。


「マコトが傭兵になればいくらでも稼げるぜ。もっと豪華な宿にだって泊まれるし、女だってよりどりみどりだ」

「悪くはねーな」

「だろ? 本気で考えて欲しいんだよ。最初の内は……いや、面倒臭いことはあたいが全部やってやるからよ」


 リブは真剣そのものだ。

 バイソンホーン族的に何か感じ入るものがあったのだろう。

 だから、申し訳なく思う。


「悪ぃ、答えは変わらねーよ」

「マコトには欲がねーのか?」


 リブは苛立ったようにカウンターを叩いた。


「欲はあるぜ」

「だったら……」

「最後まで聞いてくれ。正直、俺だって金は欲しい。けど、豪華な宿にも、女にも興味はねーよ。念のために言っておくが、男に興味があるって意味じゃねーからな」


 豪華な宿に泊まり、代わる代わる美女を抱く生活も悪くない。


「金は欲しいが、人殺しを商売にしたくはねーんだよ」

「冒険者だって人を殺すじゃねーか」


 リブはムッとしたように言い返す。

 もしかしたら、自分の仕事を馬鹿にされたと感じたのかも知れない。


「確かに冒険者は人を殺すかも知れない職業だ。けど、絶対に殺さなきゃいけない訳じゃないだろ?」

「まあ、な」


 リブは渋々という感じで頷いた。


「それに、俺はユウカとフェーネの命を預かってるんだ。できるだけあの2人の手を汚したくない」

「偽善臭ぇぞ」

「そんな大層なもんじゃない。気分の問題だ」

「気分か」

「ああ、気分は大事だろ」


 理屈なら論破できるが、感情は難しい。


「気分の問題じゃ仕方がねーな」

「悪ぃな」

「分かった。マコトを傭兵にするのは諦めるよ。けど、最後に1つだけ聞かせて欲しいんだ」

「答えられることならな」

「マコトの欲って何だ?」

「……」


 マコトは押し黙った。

 カウンターを見ると、シェリーの口元が綻んでいた。


「答えなきゃ駄目か?」

「ああ、答えなきゃ駄目だ」


 リブはこれ以上ないくらい真剣な表情を浮かべていた。

 嘘を吐くことはできるが、本気には本気で答えるべきだろう。


「……スローライフ」

「スロ?」

「だから、スローライフだよ、スローライフ。若い内にできるだけ金を稼いで、早期リタイヤしてのんびりと暮らしてーの、俺は」

「しょ、本気か?」

「本気だよ。そのためにも……」


 マコトはざっくりと目標金額を計算する。

 六十年生きるとして60年×365日×100Aで219万Aだ。


「余裕を持って300万Aは貯金が欲しいな。ああ、いや、報酬は三等分だから900万Aは稼がねーとか」

「……」


 リブは無言だ。


「……な、なあ」

「何だよ?」

「あたいを仲間に加えてくれねーか?」

「構わねーよ」


 戦力を充実させるに越したことはないし、彼女のコネクションは役に立つ。


「けど、今までのキャリアを捨てるような真似をしていいのか?」

「その点は心配しなくてもいいぜ。そこそこ名前は売れてるけどよ、正直に言えば限界を感じてたんだ」


 本当だろうか。

 いや、疑っても仕方がない。

 少なくとも彼女は自分にメリットがあるから仲間になりたいと申し出たのだ。


「ま、まあ、お前に惚れたってのもあるけどよ」

「…………そうか」


 マコトは間を開けて答えた。勘違いするなと自分に言い聞かせる。

 リブの言う惚れたとは強さに感服したみたいな意味合いだろう。

 その気になって傷付くのは自分なのだ。

 自意識過剰はよくない。


「ユウカとフェーネに事情を話さないとだな」


 マコトは小さく呟いた。

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