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アクセス開始

6 アクセス開始

「願いが叶うといっても、その実現はそう簡単ではないこと・・・関係者全員が同時に願わなければならないという条件を説明し、変な使い方はできないという事を繰り返し強調して、ある程度は理解していただいていた。


 そのうえでゲームの世界にアクセスして体験していただくつもりだった・・・、日本だけではなく世界各国の研究者がアクセスする事により、我々の主張が正しいことは、すぐに判明するつもりでいた。

 そうすればゲーム機は元の持ち主に返却されると信じていたわけだ。


 確認のためにキャラを上書きされてしまっているから、再度キャラづくりからやり直しにはなってしまうが、まだゲームを開始して1ケ月と少ししか経過してはいなかったから、やり直しとなっても購入者たちには許していただけるものと考えていた。


 ところがアクセスしようとしてもゲームを開始することすらできない・・・、ゲーマーが趣味で行うわけではなく状況確認目的のため、裏コマンドを教えて最初から経験値100万でアクセスしたはずなのだが、それよりも魔物の方が経験値で10倍も上だ。


 経験値を稼ぐためだけのクエストをこなさなくても、ゲームの最終画面までサブボスキャラを打ち破って行けると説明してアクセスしていただいていたにもかかわらず、初期画面さえもクリアできなかったというわけだ。

 それもそのはず・・・こんな魔物が潜んでいたわけだからな。


 おかげでゲーム機自体がただの催眠装置として、面白いゲーム展開を望むユーザーたちの、個々人の夢・・・つまり空想の産物でしかないと結論付けられた。


 つまり裸の王様と同じことだな・・・実際は何も起こっていないのに、あたかも異星へアクセスして現実離れしたリアルなゲームを毎晩続けているのだと思い込ませてしまう・・・、高額な買い物だったので何も起こらないはずがないと思わせる詐欺の手口だと評価されてしまった。


 あるいは証拠隠滅のため、アクセス機能を停止してしまったと勘繰られたわけだな・・・。

 だからゲームの世界にアクセスできないというのは逆に、我々にとって不利な結末を生じさせる要因となってしまったわけだ。


 ゲーム以外に使用できないことが明らかになりさえすればすぐに解決すると、ゲーム機を没収される前に全社員に少しの辛抱だからと説明して納得させておいたのだから、そんな馬鹿なことを行う社員がいたとは到底考えられない。」

 大空翔が、思い切り否定する。


 そうだったのか・・・、素直に没収に応じたのが裏目に出たという事だな・・・。


 まあ確かに願いが叶うと分かってからも、俺は普通にゲームを楽しんでいただけで、願いをかなえて何かをしようとはしなかったな・・・、ゲームの早期攻略を願うことは逆に楽しみを奪われるようなものだし、他に何を願うこともなかったうえに、関係者が同時になんてことなど、それこそ叶うはずもない。


 いくら調べてもゲーム以外に使用方法がないことを証明するつもりだったのだろうな・・・、ところがアクセスすらままならなかったと・・・そのため詐欺の汚名を着せられて、会社は倒産してしまったというわけだ。

 そんなこと社員だったらしでかすはずもない・・、では一体だれが・・・?


「ふうむ・・・そうなると、向こうの世界は本当に大変なことになっているというわけだな・・・、どんな勇者であってもとてもかなわないレベルの魔物たちが何百も生息している・・・。


 世界最強の超人たちであれば何とか勝てるのだろうが、あくまでも魔物と1対1の場合であって、複数を相手にする場合はちょっと厳しいという事だね?

 じゃあ、これから向こうの世界へ行く俺たちはどうすればいい?」


 そんなとんでもないことになっていようが、助けを求めている声が聞こえたのだから、行かないわけにはいかないのだ。


「ああ・・・まあ最強レベルの町民たち同様、経験値を最大・・・つまり99999999に初期設定してアクセスするしかないね。

 そうすれば、始まりの村へ到達することは可能だろう。


 あとは・・・各地域のダンジョンを攻略して、けた外れの強さを持つ魔物たちを退治していくことだね。

 同じ冒険者に対しては1度しか出現しないクラスの魔物ばかりだから、数を減らしていくことはできるはずだ。


 クエストをクリアしていけば、そのうちに冒険者から勇者となって魔王たちもそれなりのレベルで目覚めるから、事情を察した彼らも一緒に協力して、魔物たち退治に走るだろう。


 といっても魔王たちがいくら魔物を倒しても復活するから、勇者のために魔物を一ケ所に集めておくとか、退治しやすい設定をする程度にとどまるだろうがね。」

 綾瀬が申し訳なさそうに説明してくれる・・・いやまあ・・・、彼のせいでも何でもないわけなのだが・・・。


「だがそれもこれも、ゲームの体裁を保っていた場合に限られるわけだろ?

 ちょっと考えたんだが、プログラマーを送り込んでいたわけだから、けた外れに強い魔物たちや最大経験値の一般市民たちが送り込まれてきたら、異常と感じてプログラマーは対処していたはずじゃあないのか?


 いくら最大経験値を持っていたとしても、あくまでも設定上でしかないわけだから、プログラムの書き換えでいくらでも対処できたと思うのだが・・・。」


 今更だが、ふと思いついたことを口にしてみる。

 管理者側が送られてきた魔物や市民たちの経験値を小さく設定変更しなおしたりしてしまえば、こんな問題は起きなかったわけだ。


「いや・・・有料ゲームの特性上、どのような不正が行われたとしても出現したキャラの経験値を操作することはできないようプログラムされている。

 さらに、ゲームの初期段階で中断してしまったから、恐らく関係者はまだ目覚めていないはずだ。


 ゲームの進行に伴って目覚める関係者は、もう少し先まで進まなければいなかったはずだ。

 だからこそ、冒険者たちが願う事によってあの星の別次元へ実体化してしまうというトラブルが発生したのだからね。」

 大空翔が難しい顔をして答える・・・、そういえば通信異常の説明会でそんなことを聞いたような気が・・・。


「それに対処するために、ゲーム当初にも目覚めている関係者を送り込んだわけだが、最初の数ケ月間は何もやることのない役割のため、ただの見張り役だけを送り込んだわけだ・・・だからなにも手出しできなかっただろう。

 恐らく、すでに中央の管理部門は敵の手の内に落ちていると考えた方がいい。


 それを取り戻すことを第一に行うべきことだと言えるだろうな・・・、そのためにも数少ない協力者であろう魔王や魔神たちを目覚めさせる必要性があるという事だ。」

 すると続けて定男が説明に加わる。


「分かった・・じゃあ、悪いがその・・・裏コマンドとやらを教えてくれ。

 それでアクセスしてみる・・・中断してしまったが、まずは俺からアクセスする・・・、次はレイだ・・。


 始まりの村へ一旦行って記録したらすぐに戻ってくるから、レイは俺の姿が見えなくても、動かずに待っているように・・・、いいね?」

 レイに向き直って、しっかりと念を押しておく。

 勝手に変な方角へ行かれては困るのだ。


「分かった・・・、待ってる・・・。

 でも、あたしだってたたかうんだよ・・・、心配しなくても、まものたちには負けないよ・・・。」

 レイは自信満々の様子だ・・・、頼もしい限りではあるのだが・・・。


「じゃあ・・・源五郎・・・、悪いが少しの間レイの面倒を頼む・・・。」


「はい、もちろんですよ・・・。」

 源五郎は嫌な顔一つせず、笑顔で頷いてくれる。


「じゃあ俺から行かせてもらう・・・、向こうの世界のことを知っている奴が多いようだから一応聞いておく。

 ツバサと会うにはどうすればいい?」


 通信異常から再開したときは、翌日にはツバサがやってきてくれていた。

 北部大陸の生まれだが、ゲームの手順から始まりの村へと必然的に送られてきたとか、わけのわからないことをコメントして・・・。


 だが、あれから10年以上も経過しているわけだ・・・、俺たちはお別れ会をした後に消滅してしまった・・・。

 なにせ突然の政府通達であったわけだからな・・・ゲーム機は青空商会へ一旦回収されて俺たちの分身は消滅させられ、その後ゲーム機は政府に没収されるのだという説明を受けた。


 しかし恐らくそう遠くない時期に戻ってくるだろうという事をほのめかされていたのだが、1年半後にゲーム機が戻ることはないとの通知書が送られてきて、そうして振り込んだ金額の半額だけが戻ってきたわけだ。


 その後、青空商会は倒産したわけだが・・・不思議と俺たちの中ではだまされていたとか詐欺にあったとか、青空商会を非難する奴はいなかった・・・それだけの経験をさせてもらったのだと、とりあえずは納得したのだが、あまりにも短い時間だったことだけが悔やまれたのだ。


 まあタンクやチョボたちのように、通信異常の説明会時点でキャンセルしてゲーム機を返却した奴らもいたしな。

 残っていたのは通信異常が必ず解消すると信じて、そうしてあのゲームのことが心底気に入っていた奴らばかりだっただろうからな・・・。


 普通なら絶対にゲームの動向について他人に・・・特にゲームの開発者たちに向かってなにか聞くことはあり得ない・・・、ロープレなどというゲームは自分で一生懸命考えて謎解きをしながら進んでいくのが楽しいのであって、先行きがどうなるとか、どこに行けばどんなキャラに出会えるとか、そんな予備知識は不要なのだ。


 だがしかし今回ばかりは別だ・・・・、何かとんでもないことが起きている様子だから、少しでも早くツバサに出会って、何とか打開策を検討する必要性がある・・・というか、何が問題なのかをまず確認する必要性がある。


「そうだな・・・超人を上回るくらいの経験値を持った市民たちは南部大陸のヨランダの住民という設定だから、まずはそこに行ってみるのがいいだろう。

 賢者のトンネルは知っているよな・・・2番目の扉の行きつく先が魔王城近くに続いているのだが、そこを北上するとヨランダの村だ。


 賢者のトンネルのカギはクエストをクリアしていかないと手に入らないのだが、お前たちが冒険していた時はいちいちカギをかけずに開けっ放しにしていたはずだから、恐らくツバサは今でもそうしているだろう。

 そこからあたってみるのがいいだろう・・・もしそこにいなければ、うーんどこだろうか・・・。


 ペレンの東の砂漠の中の遺跡から魔王城の地下へと続く通路があるのだが・・、ここはダンジョンをクリアしていって鍵を手に入れないと入れないかもしれんな・・・金属板も必要になるしな。」

 定男とかいう長髪男が、ゲームの設定を思い出しながら教えてくれる。


「ツバサというのは北部大陸のあんず村が故郷のはずだから・・・、そこへ行ってみるのもいいかもしれない。

 あんず村は賢者のトンネルの7番目の扉で行けるから、そこから北へ結構歩かねばならんが、まあ何とかつけるだろう。」

 すると、今度は綾瀬がツバサの出身地を教えてくれる。


「北部大陸へ行くのであれば、7番目の扉を南に下ると先ほど俺様が言った砂漠の遺跡があり、其の先がペレンの街だ、そこへ行ってみてもいいかもしれんな。」

 またもや定男が、口を出してきた。


「分かった・・・賢者のトンネルの2番目と7番目の扉だな・・・、ありがとう。

 早速行ってみるよ。」

 俺はそういって、ゲーム機の中へ横たわろうとする。


「さっきも言ったように、ツバサと出会ったら一緒にパーティを組んで、クエストをこなしていってくれ。

 そうすれば勇者にもなれるし、魔王や魔神たちを目覚めさせることもできるはずだ。

 奴らはきっと役に立つ・・・はずだ。」


 すると、定男が再度念を押すように言ってきた。

 そうだろうな・・・こいつの分身が魔神なのだものな・・・、一緒に参加させてくれと言いたいのだろう。

 まあ、検討させていただくことにしよう。


 それでは・・・キャラ設定は・・・、まあ外観はあまりこだわらないし時間があまりないからダミーデータの外観のままでも構わないとして・・・、裏コマンドは入力してもらったから経験値は99999999だと・・・凄いね・・・。


 やっぱり俺は剣士がいいので剣の戦闘技術に経験値の8割、2割を回復系の魔法技術に割り振ることにする。

 服装は・・・まあ修行着的な作務衣のような服があるから、とりあえずそれを選択しておこう。

 森の中を歩くのだから靴は運動靴を選択・・・およそ冒険に行く恰好とは思えないのだが・・・、まあ初期設定だから仕方がない・・・、始まりの村についたら最初に与えられるGで少しは武器や防具をそろえよう。


 そうして・・一番肝心な・・・、向こうへ着いて始まりの村でデータ保存したら、もう一度東の森へ戻るよう設定しておく・・・、こうすれば俺が目覚めた後もレイたちを迎えに行くことになる。

 保存したからそれで本日は終わりとして翌日・・・、とはなってほしくないのだ。


「じゃあ、行くよ。」

『ガァッ』そういってから俺は、繭のようなゲーム機に横たわって上蓋を閉じる。


 

『ぶもー・・・』目の前が開けたと思ったとたん、オレンジ色の巨大な小山がその形を変化させながら、襲い掛かってきた。

 ひえー・・・ついた早々かよ・・・、すぐに腰に手をやるが、当たり前だが武器は装備していない。

 なにせ、まだ初期データ記録前でキャラも生まれていないのだ。


 すぐに辺りを見回し、手ごろな木の枝が落ちているのを見つけ、すかさず拾い上げると斬りつけてみる。

『バギッ』『ぶぶーっ・・・』底面が直径2メートルで高さも2メートルはありそうな円錐状の魔物は、その表面はねばねばと柔らかそうに見えたが、太さ5センチほどの木の枝で叩き付けたが枝は中ほどからもろくも折れた。


 ううむ・・・東の森には弱い魔物しか生息していないはずだったが、やはり経験値10000000なんていう魔物が生息しているのだろうか・・・?何の装備もないのに裏コマンドで設定した経験値だけで勝てるのか?


『ズゴッ』すぐに、もう少し太めの木の枝を拾い上げると、今度は木の枝を突いてみる。

『ズゴッズゴッズゴッズゴッ』やはり、もろい木の枝でも突き刺すことはできるようで、にゅるにゅると体の一部を変形させながら攻撃してくるのを何とか避けながら、ひたすらゼリー状の巨体に木の枝を突き続けた。


『ぐもももー・・・』どのくらい突き続けただろうか・・・恐らく30分以上ではないのか・・・、ようやく巨大なゼリー状魔物を倒すことができた・・・。

 すると魔物を葬った後から一冊の本が出現した・・・、表紙には上級魔導書と記載がある。


 おお流石・・・レベルの高い魔物を倒したのだから、それなりにいいものがもらえるようだ・・・、でも俺は基本は剣士なのだから、剣をくれた方がよかったのではないかと感じる・・・、まあアイテムをくれただけありがたいと思わなければならないのだろうが・・・。


 そういえば・・・回復系の魔法技術に経験値を割り振ったはずだな・・・、99999999もの経験値だから、2割配分とはいえ魔法技術もそれなりに向上していることだろうし、上級魔法でも使えるだろう。

 戦えそうな呪文がないか、魔導書を見ながら歩き始める。


『ぶもももー・・・』すぐに今度は緑色のゼリー状の巨大魔物が襲い掛かってきた。


「ようし、光剣(ペカ)!!!」

 すぐに今見つけたばかりの呪文を唱えながら、木の枝を魔物に突き刺してみる。


 光の攻撃魔法だが、杖などの武器に融合させることもできるようだ・・・、杖ではなく木の棒だし剣士なので剣のイメージで唱えさせていただくとしよう・・・。


『ピカーッ・・グザッ・・・』『ぴぎー・・・』ただの木の枝が黄色みがかった閃光に包まれ神々しく輝くと、まるで鋭利な刃物であるかのように、魔物の体に突き刺さった。

 先ほどまでのように、渾身の力を込めて突き刺さなくても、軽い力で深く突き刺さっていく。


『ぶびー・・・』魔物がひるんで少し引き気味になった・・・、見ると突き刺した部分が黒く焼け焦げているように見える・・・、どうやら効果がありそうだ。


光剣(ペカ)!!!光剣(ペカ)!!!」

『ジュバッズッパァーンッ』すぐに木の枝を引き抜き今度は袈裟懸けに斬りつけて、返す刀で魔物の体を真っ二つに斬り捨てると、魔物の姿は消滅した。


 さすがに今度は何も出現せず少しがっかりだが、魔法攻撃に確かな手ごたえを感じた。

 回復系の魔法も仕入れておく必要性があるので、魔導書を読みながら歩いていこう。



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