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ツバサ再び

ある日突然、こんな続編がいいのでは・・・?と思いついてしまったので、取り合えず書いてみます。といっても今後の展開も予定も何もないので、果たしてどうなるのか・・・。

1 ツバサ再び

『この世界は、未曽有の危機に瀕しています。

 どうか、お救い下さい。

 出来ましたら以前、この世界の危機を救ってくださった、リーダーたちを再びお遣わし下さい。』


 シュートカットヘアーの美少女が、天に向かって一心に祈りをささげている。

 うーむ・・・かわいい・・・、でも、ちょっと見たことあるような・・・、あれ?誰だっけ?

 テレビでよく見る女優さんか?あるいは娘の好きなアイドルグループの1員だったかな?


 どこかで会ったことが・・・、それにしてもかわいらしい・・・ううむ・・・、できればお近づきに・・・いや、知り合ってどうこうという事はないのだが・・、困っているようだから何とか力になってあげられたら・・・。


『サグルさん、レイさん、源五郎さん・・・、どうかもう一度この世界へ・・・。』

 ありゃりゃ・・・、実名入りでずいぶんと具体的なお願い・・・って・・・・・・・・・、サグル!?


『ガバッ』・・・夢の中で自分の名を呼ばれて、思わず驚いてベッドから起き上がる。

 だがしかし、よく考えてみれば、これは俺の夢なのだから、自分の名前くらい呼ばれて当然だ・・・。


「ひえっ・・・なにっ?」『ガバッ』

 すると突然、ダブルベッドの隣に寝ていた妻も同じように跳ね起きる。


「おいおい・・・どうした?

 何か怖い夢でも見たのかい?昼間あまりにも暇だからって、レンタルビデオのホラー映画の見すぎじゃないのか?


 胎教にもあまりよくないぞ・・・。」

 臨月の大きなおなかを抱えた妻の腰のあたりをさすってやりながら、言いたくもない小言を告げる。


「違うわよ・・・、そりゃ今は産休だから昼間は暇だけど・・・、流石にホラー映画は控えているわよ。

 おなかの子供も、このくらいになると外の音も聞こえるっていうから・・、胎教のために昼間は毎日クラシック音楽を聴いているのよ。


 退屈だから大抵すぐに眠ってしまうけど、この子は起きて聞いているんでしょ?

 おかげで夜になかなか寝付けないのが、ちょっと困るけどね・・・。」

 そういって妻は、笑みを浮かべながら大きなお腹をさする。


「じゃあ、どうしたんだ?」

「あなたこそ、どうしたのよ・・・?」

 俺の質問に質問で返してくる・・・お互いに腹の探り合いだ・・、別にやましいことをしたつもりはないのだが・・・。


「いやあ・・・、ちょっと夢の中で・・・」

 まさか美少女に名前を呼ばれて飛び起きたとも言えずに、ちょっと困っていると・・・


「あっそうそう・・・、ツバサちゃんでしょ?

 あたしの夢にも出てきたわよ・・・、どうしてか知らないけど世界が危機に陥っているって。

 あなたとあたしと源五郎君に救いに来てほしいって・・・、その夢でしょ?


 やっぱり・・・・じゃあれは夢じゃなかったわけだ・・・、いや、やっぱり夢かな?

 夢だけど・・・、ツバサちゃんがあたしたちに連絡をしてきたという事よね?」

 妻は少しほっとしたように、胸をさする。


 自分だけの経験ではないことに安心したのだろう・・・、それにしても・・・そうか、あれはツバサだったのか・・・、顔もすっかり忘れていた。

 あれからすでに10年もの歳月が流れたわけだものな・・・。


 あの衝撃の事実を告げられた、ゲーム機の通信異常の説明会で出会ったことをきっかけに、俺とレイは付き合い始めて、ほどなく結婚した。


 ゲームキャラ通りとはいかないまでも、それなりの美少女を期待していたのだが、平々凡々とした26のOLであった彼女には少し出ばなをくじかれたのだが、彼女も俺のことを知的でたくましいスポーツマンと思っていたらしく、がっかりしたとデートのたびにつぶやかれていたから、まあ、お互い様だ。


 それでも、なぜか彼女とは気が合い結婚までこぎつけて、娘をもうけた後さらにもう一人家族が増えようとしている。


「でも、いったいどうして・・・?」

「そうよね・・・、ゲーム機はとっくに没収されてないものね・・・、もうアクセスする事もできなくなったわけだからね・・・。」


 ゲームの世界を飛び出して、異次元世界に実体化してしまって通信できなくなった後、何とかしてこちら側の次元に戻ってきたのは、なんとその翌日のことだった。


 何のことはない、ただの通信異常とも思えたのだが、実際のところ向こう側の世界では、俺たちの分身が苦労して何度かゲームをクリアしたのち、向こうの星の住民たちとも気持ちを合わせて元の世界に戻れるように願うことに成功し、再びゲームの世界に戻ってこられたのだと、ただ一人だけ通信異常の間の記憶があったツバサという美少女が教えてくれた。


 俺たちゲーマーの一員でありながら、実は地球人ではなく願いがかなう星の住民で、特別に一人だけゲーム機を与えられて参加しているのだといっていた。


 俺たちの分身がゲームの世界ごとツバサたちの次元に実体化したときに俺たちの存在に気が付いて、世界の危機を救うべく・・・というか、自分と外観が同じ地球人とともに行動するために冒険に参加したのだと自己紹介してくれた。


 タンクとチョボは子供ができたからといって、説明会当日にゲーム機の返却手続きを済ませていたため、俺たちのパーティが源五郎と2人だけになって弱っていたところに、何とレイと一緒にシメンズメンバーとしてやって来てくれたのだった。


 レイには仲間がいたようだったが、次元移動して戻れないと思った時にすぐに自殺してしまうような、情けない仲間は嫌になったといって、ツバサと一緒に来てくれたのだった。


 これで晴れてゲームに没頭できると喜んでいたのだったが、それから2週間と経たずに異世界との通信ゲーム禁止令なるものが国会を通過した。


 通信異常から現地の様相を想定し、俺たちユーザーのために緊急説明会を開いてくれたのだが、どうやらその内容がネット上を騒がして公のものとなり、異世界との通信・・・とりわけ他の知的生命体が生存する惑星との通信に対しての危険性という事が、国会で取りざたされ始めたのだ。


 願いがかなう星など、通常は信じられるはずもない荒唐無稽な話を各国要人は信じ、最重要項目として説明会当日の深夜から対応策を論じ始めたという事らしい。


 ゲームを通じてあの星での出来事を目の当たりにしていた俺たちは、それなりに信じられたのだが、それでも俺の記憶は実体化して村の人たちに願いがかなう星だという事と、同時にその弊害も教えてもらった事、その後何とか元のゲームに戻ろうと画策し始めたのだが、翌日の晩に宿屋で眠るまでの記憶しかない。


 恐らく様々な困難を乗り越えて、何とか願いをかなえて元のゲームの世界に戻ってきたのだろうが、その間の記憶は一切ない。

 それでも話のつじつま合わせとして、自分のわずかな記憶とツバサの説明がマッチしたことにより、俺自身は願いが叶うことを信じるに至った。


 にもかかわらず、ゲーム機に触ったこともないはずの各国のお偉いさんたちは、ゲーム機と称した惑星間通信装置だの、超人作成装置だのと称して戦略兵器としてゲーム機を危険視し始めたのだ。

 しかも願いがかなう星自体を、世界を破滅に導く破壊兵器として認定してしまった。


 特に、お隣の国や友好国である世界の強国など諸外国からの追求は厳しく、表向きは未知なる文明へ通信することにより、地球という星に文明があることが全宇宙に知れ渡り、地球を征服せしめんとする異敵を呼び寄せてしまう恐れがあると、早急なる通信停止の圧力がかかったのだ。


 そのような危険はなくともネットワークの一片に、他星との通信経路があると情報漏洩もありうるとして、ゲームの即刻停止が世界中で叫ばれた。


 青空紹介の面々がどのように安全性を説明しようと、その安全性は保障されないと頭ごなしに否定され続け、再開からわずか2週間でゲームの世界の中で盛大なお別れ会を催して終了となった。

 まだ北部大陸に到着したばかりのときだったので、それから先の展開を見ることなく終了するのは非常に悔やまれたが、法律で決まったことではどうしようもない。


 さらにゲーム機はその翌日には専用の回収車が来て、没収されてしまった。

 行政没収であるためゲーム機に支払った百万円は戻ってくることはなかったが、青空商会の方で申し訳ないからと半分の50万円だけ戻ってきた。


 残りは部品代など必要経費であり、すでに支払い済みで返却できないという説明があり、まあ、仕方がないとあきらめたのだった。


 同時に青空商会は資金が尽きて倒産したところを見ると、本当に残りの資産をすべて返却に回してしまったのだろうと、少し気の毒に感じたほどだ。

 なにせ従業員への給料と退職金は、大空翔の私財から支払われたと伝え聞いたときは少しショックを受けた。


 今でも青空商会があったビルは、持ち主不在のまま空き家同然で残っていると聞いている。

 あまりにも抵当金額が大きすぎて、本社ビルの買い手がつかないのだと聞いたことがある。


 そこまでして俺たちにゲーム機代を支払わなくてもよかったのに・・・、とも感じたのだが、当時の俺にとっては半分の50万円が戻ってきただけでも、ずいぶんとありがたかったことを記憶している。

 そうして、わずか1ケ月と少しだけの期間のゲーム費に、50万円もの大金をつぎ込んでしまったことを後悔したことも、覚えている。


 それでも、その1ケ月間はやはり貴重な経験であり、そうして大切な人たちと知り合うこともできた。

 それはもちろん妻と知り合えたのが一番大きな収穫と言えたし、ITベンチャーの社長として年商何億もの会社を経営している源五郎とは今でも連絡を取り合い、たまに酒を飲みかわす間柄である。


 まあ、そんなわけなので、ツバサとは実際には2週間も一緒に冒険することができていない。

 向こうはずいぶんと俺やレイ、源五郎に関して詳しい様子だったが、なにせ異次元世界にいたときの記憶はほとんどないのだから仕方がないのだ・・・、そのため顔を覚えていなかったことは勘弁してもらいたい。


 何年もの間苦楽を共にした、大切な仲間の顔をたった10年ほどで忘れたという事ではないのだ。

 レイが、よくツバサの顔を覚えていたものだと、感心しているくらいだ。


「だが、しかし・・・、どうしたらいいものか・・・。」

 俺とレイが同時に感じたという事は、実際にツバサの身に危機が訪れているという事だ。


 まあ世界最強の格闘家だから、そう簡単にやられることはないだろうが、少なくともあの星に対して、尋常ならざる危機が訪れているという事に変わりはない。

 だが・・・、どうする?すでにゲーム機は没収されてしまって、手元にはないぞ。


 ゲームに飽きたから、使わなくなったとかゲーム機を下取りに出したとかと訳が違う。

 なにせ政府に没収されたわけだからな・・・、もうあのゲームの世界にアクセスする手段はないわけだ。


 ツバサだって、それは承知しているはずだ・・・、なにせお別れ会の時に、大空五郎本人(五朗じいさんが扮している分身だが)から、地球での事情説明が行われ、星をあげての壮大なロープレプロジェクトが終了したこと、それでも地球側から冒険者としてのアクセスがなくなるだけで、依然として魔物やゲームキャラは存続し続けることを告げられたと聞いた。


 そのため、ツバサはたまに修行代わりにゲームにアクセスして、魔物たちとバトルすることを許されたのだ。


「本当にそうよね・・・・、まあ、まずは源五郎君に連絡してみたらどう?

 彼なら、何かいい考えを持っているかもしれないわ。」


「ああ、そうだな・・・・源五郎の奴も、ツバサの夢を見てメッセージを受け取っている可能性が高い。

 明日・・というか、今日の朝か・・・電話してみよう。

 まあ、まずは寝ようじゃないか・・・、真夜中に夫婦で議論していても始まらない。」


 時計の針は、深夜の2時を指していた。

 いくら親しいとはいえ、こんな夜中に電話するわけにはいくまい。


 なにせゲームで知り合った女の子が夢枕に立った・・・という件で電話するというだけで、普通なら頭がおかしくなったと勘繰られるくらいであるのだが、願いがかなう星が関係しているために、何があってもおかしくはないのだと、ぎりぎり現実として考えられる事柄ではあるのだが、流石に深夜はまずいだろう。


 せいぜい出勤前に電話してみるしかない・・・内容からして緊急性は伝わっているのだが、まあ平和な一般社会である地球の、その中でも更に平和な国日本であるのだから仕方がない。



『トゥルルルルートゥルルルルー・・・・、おかけになりました電話番号は、ただいま電波の届かない場所にあるか、若しくは電源が入っておりません。お手数ですが、もう一度・・・、ガチャッ』


「どうしたの?電話に出ないの?」

 妻が朝食の支度を整えながら、キッチンの食卓から電話する俺に問いかけてくる。


「ああ・・・留守電にすらなっていない・・・、どうやらこちらからの呼びかけに、答えるつもりはなさそうだ。」

 目が覚めてから、10分おきに3度電話してみたが、いずれも通じることはなかった。


 携帯に登録してある番号で、何度も通話している番号だから番号違いはあり得ない。

 電話を変えるという話は聞いていないし、仮に番号が変わったのであれば、そのような連絡をしてきているはずだ、なにせ先週にだって電話して声を聞いたばかりなのだ。


「仕方がない、会社についてからと昼休みにでも電話してみるよ・・・、あいつは早起きだから朝の方がよかったのだが、まあ休憩時間中であれば問題はないだろう。」


 あきらめて、朝食をいただくことにする。

 ぐずぐずしていると、会社に遅れてしまう。


 俺が務めている会社は以前と同じ小さな商社だ・・・、小さな・・・というのは謙遜でもなんでもなく、実際に小さい・・・というか、1時期つぶれかけてますます小さくなったといった方がいいだろう。

 大きなプロジェクトがとん挫して、その負債のために倒産寸前まで追い込まれたのだ。


 その原因ともいえるプロジェクトを担当していた俺の同期の加納は、会社が傾いた途端に辞表を提出し、とっとと転職していった。


 残された社員である俺たちは、必死で立て直して何とか盛り返し倒産の危機を乗り越えたのだが、手を広げようとしていた事業のほかに、有力事業を負債清算のために売却し、会社規模は以前よりも小さくなったことは否定できない。


 それでも愛着のある会社だし、つぶれずに済んだのだから、無理に転職先を探すこともなく今日に至っている。


 加納のことを目にかけていた部長は、奴のことを恩知らずだなんだと非難ばかりしていたのだが、結局自身も辞表を提出(プロジェクトに失敗した責任を取るというのが表向きの理由)し、いずこかへと消えた。

 2人がいなくなった後の方が処理はスムーズに進み、徐々に業績が好転していったのだった。



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