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神の魔術師~Fall MOON and Golden FLAME~  作者: 壱ノ瀬和実
先導者

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第二章――SSパッケージ 1

 和川奈月と出海夕夏は、目的地の町の駅に到着した。


 さすがに駅前ともなると飲食店があるだろうと思ったが、道中感じた印象とは一ミリも違わず、言わばただの田舎だった。数分も歩けばスーパーとコンビニはあるが、それがなければ目も当てられない。


 ローカル鉄道の駅舎の前に、数台分の駐車場がある。埋まっているのは一台分だけ。もう一台分には、腕組みをして苛立つジャージー姿の男性がのさばっていた。


「遅いぞ和川。十三分も待ったぞ何してたんだ!」番場最人が怒声を上げた。


「走って向かってたんですよ! タクシー組が偉そうにするな!」


 和川の声が、田舎では嫌にこだまする。


「ごめんなさい和川くん、出海さん。うちらだけ楽しちゃって」


「ああ、いいよ別に。途中不貞腐れそうになったけどな。で? その刀鍛冶さんとやらはどこにいるんですかね番場さん」


「出発前に不知火が言ってただろ。知らねえ」


「はあ!? 俺らより十分以上も早く着いてたんだから調べておいてくださいよ!」


「合流最優先だっての。敵がいるかもしれないんだから」


 ぐぬぬ、と和川は歯を食いしばる。


 敵、すなわち、今回のターゲット。窃盗犯、魔術結社『先導者(ヴァンガード)』の前身組織である『SSパッケージ』の魔術師。


「さて、ここからは三手に分かれようと思う。刀鍛冶を捜索する組と、この駅に待機する組だ」


 番場がそう言うと、和川が訊ねた。


「なんで待機?」


「敵の移動手段が分からないんだ。鉄道使って来るなら、ここで降りるかもしれんだろ」


「なるへそ」


 駐車場の一角を迷惑にも独占した魔術師達は、日常の中で非日常をやりとりする。


「でもそもそも、事件が起きてから確か二日くらい経ってるんですよね。北陸分所からここまで、急げば一日も掛かりませんし、もう刀鍛冶に渡されていると考える方が自然のような気がするんですが」


 涼風の疑問も当然だ。相当な間抜けでもない限り、目的の遂行に無駄に時間を掛ける奴はいない。余程慎重な奴なら、話は別だが。


「いえ、それは難しいかと」出海が口を開く。


「何故難しいと?」不知火が問う。


「『風裂(かぜ)』と『波断(なみ)』はなまくらと化していますが、刀を使いなれない魔術師が魔力を行使しますと、そもそもが強力な術具なので、大きな反応を残してしまい、わたしたち北陸分所の魔術師ならば容易に足取りを追えてしまいます。魔術を使って隠したり、安易に術者自身を隠したりすることもできません。となると、どうしても悪目立ちします。北陸分所は、『切り拓きし者(グランドブレイカーズ)』の力も借りて捜索しましたが、それらしき人物、集団は発見できませんでした。『SSパッケージ』の面々は徒歩、もしくは車で移動をしたと見られるのですが、それではどうしても日数が掛かってしまうので、一日で辿り着くのは不可能です」


「いや、電車とかあるだろ」和川の横槍が入る。


 しかし、その言葉に気付かされたのが不知火だ。


「そうか、雪か。北陸分所は確か豪雪に見舞われたんだったね。敵は簡単にこちらへは来られない、ということか。そしてそれは……少々由由しき事態を想起させるね」


「そうです。北陸は大雪でした。ということは、主要な交通機関、とりわけ鉄道各線は軒並み止まっていたんです。少なくとも、雪の被害が少ない地域まではタクシーを含む車、もしくは、徒歩しか移動方法はありませんでした。

 加えて、車等の出入りは『切り拓きし者(グランドブレイカーズ)』の魔術師が主要道路を魔術で監視していたので、こちらも容易に通りぬけることはできません。そうなると――」


「雪道を徒歩かよ。馬鹿だなそいつら」番場はせせら笑いながら言う。


「なるほどね。敵は主に徒歩で移動し、可能なら鉄道、もしくは……街にさえ来ることが出来ればレンタカーもあるかな。魔術的な補助を使えないとなると、一日やそこらでは移動出来ない。それでも丸二日は掛からないと思うが……そもそも敵は刀を打ち直してもらいに来るんだ。刀を刀鍛冶に預けて、この辺りに潜伏している可能性は高いね」


 あまりに雑然とした時間に、ここで「あのぉ」と、涼風が手を挙げた。「ここで議論していても何も進まないので、皆さんとりあえず行動しませんか」


 コントのように膝を崩す男子諸君。


「お前から端を発してんだよ涼風!」


 番場がキレて、行動に移す為のステップへ。


「班を分ける。刀鍛冶は、和川と涼風、俺と不知火で探す。夕夏ちゃんは駅で待機ってことでいこう。夕夏ちゃんしか『SSパッケージ』の風貌を知らないからそこは確定で、俺はとにかく楽をしたいから不知火と組む。残りもんは残りもんで上手くやってくれ」


 統率力があるのやら、ないのやら。


 態度や言動にやや不満はあるが、和川や不知火に異論はない。楽がしたいとかほざいた瞬間は殴ってやろうかとも思ったが、内容自体は別段の問題はないのだ。


 だが、白く小さな手が、出海の袖口からすっと覗いた。


「すみません。わたし、捜索班の方にしてください」


「え、なんで?」番場がぽかんとして、出海の方を向く。


「『SSパッケージ』が駅に来る可能性もあるとは思いますが、確率で言うと、そこまで高いとは思えないんです。追手がいることくらい、彼らも分かっているでしょうから、最後の移動手段に逃げ場のない鉄道を使うとは思えません」


「あ、ああ、そう?」露骨に番場が落ち込んだ。


「ぷっ、まあ、ドンマイ……ぶふぅっ!」


 番場の肩に手を置きながら笑いを堪えられない和川に、当の番場は、「後でシバく」と脅迫をした。


「教師の言葉じゃないですよ、せーんせ」


 こちらはこちらで生徒らしくない、という自覚は、和川にはない。


 不知火が咳払いをした。小うるさい二人を睨みつける。蛇に睨まれた小兵。番場と和川もさすがに黙る。


「パーティを組み直すならば、」


 歩み寄り、不知火は和川の肩に触る。


「和川と僕で組んで、」


 そしてまた徐に寄って行きながら、涼風の肩に触れ、


「涼風が出海とかな」


 最後に、出海の肩に軽く手を置いた。出海は「はい」と小さく返事をした。


「となると、番場さんはここで待機。丁度いいんじゃないですか。番場さんはまだ手負いでしょう。無理はしない方が身のためです。大人しく待っていてください。鉄堂光泉(てつどうこうせん)氏を見つけたら、すぐに連絡しますから」


「えー、また一人かよー。ってかお前もまだ怪我治ってないだろ不知火。一緒に待機するか」


「いえ。治癒力が雲泥の差ですので」


「うわぁ、うぜえ。まあいいけどさ。最悪、あくまで最悪だよ? 寂しくなったら笹見とか呼んでもいい?」


「高校教師が女子中学生に頼らないで下さいよ、恥ずかしい」


「ろ……ろりこん……」出海は後ずさる。


「引かないで! これでも普段は真面目に働く善良な教師なの! ちょっと最近疲れがたまってて人肌恋しいだけなの! それだけなの!」


 さすがにドン引いた出海夕夏に番場は必死に弁解しながらも、出海の心は番場から離れていく。和川らが嘆息をついた時、番場は我に帰って、ようやっと、任務開始のお時間が来た。


「では、行動を開始する。鉄堂光泉を発見し次第すぐに各自連絡を取ること。敵と出くわした場合、無理はせず、時間稼ぎ役と連絡役とで上手く連携を取ろう。いいね。じゃあ、最善を尽くそう。散!」


 不知火の号令で、五人の魔術師は一瞬にして分散した。


 一人、駅前に取り残された番場は、いかにも体育教師らしいジャージー姿のまま、しゃがみこんで一言呟く。


「あのさ、一番年上、俺なんだけどさ……あいつのカリスマ性の前には年齢とか関係ないのかね」


 年下に嫉妬する大人って見苦しいよね。と、番場自身が一番理解している。


「でも……待機はさすがに辛いわ」


第二章のスタートです。よろしくお願いします!

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