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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第2章【苛烈なる右】
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第92話「視察-2」

「はー……」

「ほへー……」

 俺とトトリの視界には、何処までも続いているように思える青い空と、久々に見た覚えのある真っ白な太陽。

 そして、起伏に富んで、うねり続けている血のように赤い海原と、水平になるよう正確に均された灰色の地面が映り込んでいた。


「どうですか?ハル様。凄い光景だと思いませんか?」

「いや、凄いと言うか……何と言うか……」

 その光景は、確かにここが現実の世界であるにも関わらず、まるで幻想の世界のような光景であり、改めて俺たちが今居るこの世界が、俺とトトリが元居た世界とは違う世界なのだと理解させられる光景だった。


「凄すぎて言葉にならない……」

「うんうん」

「それは嬉しい事だね」

 そう、ここはダイオークスの屋上……内と外を分ける隔壁の天井部分、直径10kmの空間を使って作られた場所。

 地上部分で内と外を繋げる十六方位のゲートと同じように、ダイオークスの中と外を繋げる玄関口の一つ。

 ダイオークス空港である。


「でも、ハル様にトトリ様?いつまでも驚きっ放しじゃ困るから、そろそろ落ち着いてね」

「あ、え、うん」

「あ、ああ……分かった」

 さて、何故俺たちが此処、ダイオークス空港に居るかだが。

 それはダイオークス空港が22番塔が管理運営する施設であると同時に、今回俺たちの視察場所として、ダイオークス空港が選ばれたからである。

 ああうん。まさかダイオークスの屋上に空港なんてものが有るとは思わなかったからな。

 22番塔の大エレベーターに乗ったら、第91層どころか、その上までエレベーターが昇って行った時には本当に驚いた。

 まあ、よくよく考えてみたら、直径10kmの水平な空間なんて、都市運営をする上で放置しておくには勿体無さ過ぎるし、何かしらの形で利用するのは当然だよな。


「さて、と。それじゃあ改めて説明するけれど、ここダイオークス空港は僕が所属する22番塔が管理運営する施設です。日によって色々とマチマチですが、安全かつ確実に他の都市との交易や人の行き来を行う為には飛行機が一番よく、その飛行機を運用するためには決して欠かせない施設となっております」

 セブが俺とトトリの二人に対して、ダイオークス空港に関する説明を始めてくれる。

 ちなみに22番塔はあくまでもダイオークス空港と言う施設を管理運営しているだけで、飛行機の整備については22番塔以外の塔が担当しているそうだ。

 恐らく、利益の独占などを防ぐための措置なのだろう。


「交易の内容としては、やはり、輸出ではダイオークスだけで作られている物。輸入ではダイオークスでは作られていない物が中心となっていて、その大半が嗜好品に属するような物になります」

「ふむふむ」

 これは当然の話だろう。

 最低限必要な物……生活必需品と呼ばれるような物はダイオークス内部で全て作れるようになっているはずだしな。


「それで交易に飛行機が用いられている理由ですが、その主要因としては瘴境より下はミアズマントを含めた、様々な危険が存在している事が挙げられます。と言うのも、やはり飛行機に比べるとキャリアーや浮瘴船では運べる量に対してリスクやコストが見合っていないんです」

「見合ってない?」

「はい」

 セブの話が進んでいくが、その前にちょっと単語の意味を思い出しておく。


 瘴境……それは瘴気の有する特殊な性質故に生まれた言葉である。

 理由は不明だが、どうにも瘴気と言うのは何かしらの器で運ぼうとしない限りは、一番近くの地面または水面からおおよそ500m程の空間までにしか存在できないらしい。

 なので存在できる空間と存在できない空間の境界を指して、瘴境と言うそうだ。


 浮瘴船……こちらは、簡単に言ってしまえば瘴境を進む船と言ったところか。

 一部の瘴金属が有する浮力を発生する固有性質を利用した船で、飛行機に比べれば遅く、瘴境を進むために危険も多いが、運べる量そのものについては飛行機よりも格段に多いそうで、ダイオークスにも浮瘴船用の港が幾つかあるらしい。

 なお、何故か人工物やミアズマントはどれだけ大きくても瘴境に影響を及ぼす事はないらしいので、三百年前の遺物が暗礁の様になっている地域もあるらしく、航行の際には注意する必要があるそうだ。


 ちなみにこの世界の飛行機は、昔は化石燃料のような物を使っていたらしいが、今は完全に瘴気動力になっているそうだ。

 そうなると……まあ、何かを運ぶなら飛行機の方が良いよなぁ。

 燃料代がほぼタダみたいなものなんだし。


「とまあ、一先ずダイオークス空港内を視察するにあたって、事前に説明しておくべき事柄はこれぐらいだね」

「はぁ……何と言うか、色々と凄いんだな……」

「警備が厳重なのもうなずける話だね……」

 と、この場でする分の説明はこれでお終いらしい。

 しかし、他の都市との交易にも関わる場所か……そりゃあ、俺、トトリ、セブの三人だけで中を歩き回っても問題ない程度には警備も厳重になるよな。

 問題の内容によっては、都市間の問題に発展する可能性もあるわけだし。


「じゃあ、次は実際に見てみようか。皆、僕について来て」

「分かった」

「よろしくね。セブ」

「はいはーい」

 どうやら次は今説明が有った物に関わる幾つかの場所を実際に見に行くらしい。

 さて、どんな物が有るんだろうな?

 うん。ちょっとワクワクしてきた。

05/24誤字訂正

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