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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第2章【苛烈なる右】
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第74話「ショッピングモール-1」

 翌朝と言うか、今日と言うか、まあとにかく俺が『Halhanoy2.txt』を読み終わり、そこで寝落ちして、夜が明けて起きたらやっぱり『Halhanoy2.txt』は無くなっていた。

 そして、それに合わせる様にワンスやトゥリエ教授たちの記憶についても改竄を受けたのか、皆の記憶からも綺麗さっぱり『Halhanoy2.txt』と例のUSBメモリーに関する記憶だけがすっかり抜け落ちていた。

 そのために一応と言うか悪あがきで俺はトゥリエ教授たちに説明を行い、俺たちに出来る範囲で後処理を手伝い、気が付けば……。


「で、これだけ帰ってくるのが遅れたと」

 トトリたちと約束した時刻はとっくの昔に過ぎ去っていた。


「うーん。ハル君が嘘を吐くとは思えないけど……」

「まあ、俄かには信じがたい話ではありますね」

「不思議と言うより気味が悪い話だね」

「いったいどうやればそんなことが出来るんでしょうね……」

「面目ない」

「みんなごめん」

 と言うわけで、本来は揃って家から出かけるはずだったのだが、やむを得ず今日の買い物をする17番塔第51層の駅で集合と言う形になり、俺もワンスもトトリたちと合流した所で平謝りする事になったのだった。

 ちなみに現在の時刻は正午過ぎである。


「まあ、仕事の結果として、遅れてしまった以上は仕方がないし、働いた分はきっちり後で残業手当を26番塔に請求しておけば良いだろう」

「うん。そうだね。それでいいと思う」

「元々、予定については今日明日の二日間を使うって事で、余裕を持たせてあったしねー」

「みんな、迷惑をかけて本当にごめん」

「い、いえ、ハル様が謝る必要だなんてそんな……」

「そうです。この件についてはハル様もワンス様も悪くは無いかと」

「そう言ってくれると助かるよ」

 で、昼のピークを過ぎて多少人影がまばらになったフードコートの片隅で食事と謝罪(俺とワンス限定)を済ませると、何時までも仕事の事を引きずっていてもしょうがないという事で、本来の予定をこなす事となった。


『い、ろ、は、に、ほ、へ、とー』

「さて、食事も済んだところで、まずはハル様とトトリ様の為に、改めてこの場所についての説明をしましょうか」

「お願いします」

「よろしく、ナイチェルさん」

 さて、そもそも何故俺たちは突然買い物に行くと言う事になったのか。

 そのためには幾つか説明しなければならない事が有る。


『ちりぬるをー、わ、か、よ、たれそー、つねならーむ』

「では……、ゴホン。ここ17番塔第51層を中心とした三層……つまりは今居るこの層の下の第50層から、この上の第52層はショッピングモールになっています。そして、この三層には大小様々な店舗が無数に存在しており、衣服や装飾品、日用品に各種小物から、専門職の方が使うような道具の一部に、家具や観葉植物、薬品、食品、家電、図書等々、ありとあらゆる物品が集まっています。そのため、ここに無い物は一般人には手に入らない物か、ダイオークスにはそもそも存在しない物とまで言われています」

「ふむふむ」

 まず、俺たちの家に新たに引っ越してきたナイチェルさんたちだが、彼女たちの部屋に用意されていた家具は個人個人の好みが事前には分からなかったという事情の為に、最小限の物しか用意されていなかった。

 加えていきなり四人も住む人間が増えたりすれば、当然のように食器や椅子などのように足りないものも出てくる。

 そんなわけで、色々と買い足す必要が有ったという事情がまず一つ。


『うゐのおくやーま、けふこえてー』

「また、ここは配達サービスも完備されていますので、どれだけ物を買っても持ち帰りに支障をきたす事は有りませんし、同じ家具にしても複数の店舗が存在しているおかげで、安くかつ自分の好みに合わせた物を購入する事が可能となっています」

「なるほど」

 まあ、当然の話ではあるが、これだけの人数にとって必要な物を購入するとなると、それだけお金もかかるのだ。

 なので、出来る限り安く買い揃えたいのが俺たち全員の本音ではあった。

 と言うわけで二つ目の事情だが……うん。


『あさきゆめみしーゑひもせすー』

「そんなわけですので、この広い17番塔ショッピングモール内で目標の物を見つけられるように、私がしっかりと皆様をご案内させていただきますね」

「「よろしくお願いします」」

 ナイチェルさんが17番塔出身であり、ここのショッピングモールについて詳しかったと言うのがあった。

 実際、このフードコートに来るまでに、幾つかの商品の値札を確認してみたが、明らかに26番塔で同じものを買うよりも安かったんだよなぁ……代わりにナイチェルさんのような案内役か、どれがどこに在ると言うのを予め調べておかないと、まず間違いなく目的の物を見つけることは出来ないとも思ったが。


『いのとろとは、いちのななにいななー』

「ではナイチェル」

「そうですね。では、そろそろ行きましょうか」

「まずは家具だねー」

「大物は先に見ておかないと困りますからね」

「楽しみー」

「確かにそうだね」

「みんな元気だなー……」

 そして、ナイチェルさんの簡単説明が終わったところで俺たちは席を立つと、ショッピングモール全体に流されている音楽を聞きながら、最初の目的地である家具売り場へと向かうのであった。

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