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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第2章【苛烈なる右】
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第62話「第32小隊-2」

「では、まずは私から自己紹介をさせてもらおうか」

 ミスリさん似の女性はそう言うと、席から立ち上がって、懐中時計で時間を見ながら全員の顔が見える位置に移動する。


「私の名前はシーザ・タクトス。そこに居るミスリ・タクトスの姉で、ここ26番塔の出身者であり、今日付けで我々第32小隊の隊長として任命された。以後よろしく頼む」

 ミスリさん似の女性改めシーザさんはそう言うと、俺たちに対して軽く頭を下げる。

 それにしてもミスリさんの姉だったのか……そりゃあ、何処かで見た覚えがあってもおかしくないし、ミスリさんと同じ橙色の髪になったり、妙に時間を気にしていたりするのも当然か。

 まあ、目の色が銀色だったり、目つきがかなり鋭くてきつい感じだったり、胸もワンスと同じくらいでミスリさんより明らかに小さかったりと、似てない部分も結構あるけど。


「ふん」

「ん?」

 と、シーザさんは何故か俺の方を一度見て鼻を鳴らしながら席に戻る。

 うーん……微妙に不躾な事を考えていたのが顔に出ていたか?

 後、隊長と言う事にも突っ込みたいが……まあ、全員の自己紹介が終わってからだな。


「じゃ、じゃあ、次は私で」

 まあ、それはともかくとして自己紹介は続き、次はミスリさんである。


「私の名前はミスリ・タクトスと言いまして、第32小隊の装備品全般についてを担当させていただきます。以後よろしくお願いしますね」

 ミスリさんはそう言うと大きな胸を僅かに揺らしながらお辞儀をする。

 う、動くものに目が行ってしまうのは、生物の性何だからしょうがない。

 しょうがないと言ったらしょうがない。

 だから、俺の両脇の二人(トトリとワンス)。密かに俺の足を踏んづけたり、つねったりは止めてくださいお願いします!


「じゃあ、次は僕だね」

 ミスリさんの次は金色の髪を短く切り揃えた赤い目の少女だった。


「僕の名はセブ・アルマストロイ。22番塔出身で、キャリアーの運転手をさせてもらいます!それから、ハル様たちの補佐役もさせてもらいますね!後、僕のことはセブって気軽に呼んでください!」

 セブさんと言うよりはセブちゃんと言った方が正しそうな少女は、自己紹介を終えると勢いよくお辞儀をする。

 何と言うか、常にそこら中を駆け回っている小動物のような感じだな。うん。

 ただ、草食性の動物と言うよりは雑食性な感じがどうしてもする。理由は分からないけど。

 とりあえず、心の中では本人も言っている通り、素直にセブと呼んでおくか。


「では、次は私ですね」

 セブの次はその隣に座っていた、黒い髪を長く伸ばした藍色の目に落ち着いた黒色の眼鏡をかけた女性だった。


「私の名前はナイチェル・オートスと言いまして、第32小隊の事務と、ハル様たちの補佐役の方を努めさせていただきます。出身は17番塔……実質、26番塔(ここ)のお隣ですね。以後よろしくお願いします」

 セブの雰囲気を動としたら、ナイチェルさんの雰囲気は静と言った感じだった。

 あれだな。掛けている眼鏡や役割も含めて、図書委員の委員長とかそんな感じだ。

 なお、ナイチェルさんのアソコはミスリさんといい勝負である。

 だから摘まないでって!?


「おい、後はお前たちだけだぞ。時間も押しているし、早くしろ」

「すみませ……っつ!?」

「「……」」

 ほら、そんな事をしているから、シーザさんに怒られた。


「とりあえずアタシから行くよ」

「じゃあ、その次は私で」

 どうやらまずはワンスから自己紹介をし、その後にトトリがするらしい。

 てことは俺が最後か。


「アタシの名前はワンス・バルバロ。31番塔の出身で、ハルの護衛役兼小隊員としては歩哨役を務めさせてもらう事になる。まあ、適当によろしく頼むよ」

「私はトトリ・ユキトビと言います。ハル君と同じく異世界の出身で、こちらの世界では特異体質を生かして、瘴巨人乗りとして働かせてもらっています。これからよろしくお願いしますね」

「…………」

 そうして二人は揃ってゆっくりとお辞儀をする。

 ……。何でだろうか?ワンスとトトリの全身から闘気と言うか、威圧感のような物が立ち昇っている感じがしてしょうがないのは。

 あー……アレだな。

 犬とか猫とかが、自分の縄張りの中に入ってきた他の動物を警戒しているような感じ。

 そんな感じに近い気がする。

 どうしてそんな気配を二人が放っているかまでは理解できないけれど。


「じゃ、最後は俺だな」

 いずれにしても、後自己紹介をしていないのは俺だけなので、とっとと自己紹介をして話を進めさせて貰うとしよう。


「俺の名前はハル・ハノイ。トトリとは同じ世界の出身で、特異体質として瘴気の形態性質の無効化能力を持っている。で、今は歩哨として26番塔の外勤部隊に籍を置かせてもらっている。どうしてこの場にこの面々が集まっているのかについての詳細は分からないが、まあ、よろしく頼む」

 俺は立ち上がって軽く頭を下げ、音だけで周囲の反応を探る。

 ワンスとトトリ、ミスリさんの三人は満足している感じだな。

 他の面々は……セブとナイチェルさんについてはちょっと分からないが、シーザさんについては……何か不満を抱いてる感じか?訳が分からん。

 まあ、訳が分からないものはしょうがないので、とりあえず頭を上げると、席に着いておく。


「こほん。さて、これで全員の自己紹介が終わった事だし、本題に入るとしよう」

 俺が席に着いたところで、シーザさんが再び立ち上がり、一度時計を確認してから俺たち全員の顔を見る。


「先程の自己紹介でもう分かっている者も居ると思うが、此処に居る七名を小隊員として、26番塔外勤第32小隊が本日付で結成されることとなった」

「ボソッ……(姉さん頑張れー)」

「そして、それぞれの出身や補佐役と言う言葉から分かるように、この小隊は26番塔の外勤部隊の中でもかなり特殊な位置づけとなり、それに合わせて様々な義務や責任も生じる。その事については各々しっかり留意しておいてほしい」

「「「……」」」

 シーザさんの言葉に俺たちは揃って静かに頷く。


「では、まずは第32小隊全体に関わる連絡事項から伝える」

 そして、俺たちの頷きに満足したように、シーザさんは話を進める。

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