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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第2章【苛烈なる右】

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第61話「第32小隊-1」

 次の日。

 俺たち三人は、26番塔からの指示でもって26番塔第1層の格納庫……正確には俺たちに割り当てられた第32格納庫に向かっていた。


「で、向かうのは良いけれど、今日は何をするんだと思う?」

「そうだねぇ……昨日が休みにしてしまった事を考えると、本来昨日やるべきだった事をまずはやるんじゃないかい?」

「そうなると、防護服に『テンテスツ』の調整かな。今回の任務で何が余計で、何が足りないのかがちょっと見えてきた部分もあるし」

 それで、二人に今日の仕事が何なのか予想がつくのか聞いてみたところ、二人からはこんな返事が返ってきた。

 まあ実際、初任務を終えてみて、俺にしてもトトリにしても机上の計算では必要だと思っていた機能が実戦では必要無かったり、その逆のパターンもあったしな。

 で、そう言った物に関する調整だと言うのなら、確かに任務が終わって直ぐに話し合う必要が有るし、ミスリさんの部屋では無く、瘴巨人が置いてある格納庫併設の待機室へ集合するように呼び掛けられるのも納得か。


「要するにアレか。『鉄は熱いうちに打て』だな」

「まあ、意味合いとしてはそう言う事だね」

「あ、この世界にも同じような諺があるんだ」

 ちなみに、今更の話になるが、俺たちの世界の言葉とこの世界の言葉は、似通った部分もあるが違う部分も有ると言った感じであり、本来ならば言葉が混ざって中々に面倒な事になるはずなのだが、気が付いたら読み書き含めて特に問題なくなっていた。

 たぶん、あのスピーカーの声の主の仕業だろう。

 うん。全体的には感謝できない相手だが、この点についてだけは感謝してもいいかもしれない。

 おかげで生活に不便を感じることは無いし。


「と、着いたね」

「時間も問題ないよ」

「じゃ、入る……」

 やがて俺たちは第32格納庫の階段に辿り着き、待機室に繋がる扉の前に立つ。

 そして、俺は扉に手を掛けるが……そこで気づく。


「ん?誰か居るな?それも複数」

 待機室の中から複数の物音が聞こえて来る事に。

 うーん、音の感じからして、三人か四人ってところか?


「複数?ミスリさんと職人の人たちかな?」

「いや、待機室に職人が入って来る事はまず無かったはずだよ?」

「まあ、開けてみれば分かるか」

 俺は念のために【堅牢なる左】をいつでも出せる様にしつつ、俺は扉を開ける。


「26番塔外勤部隊ハル・ハノイ来……」

「あっ、ハルさ……」

 扉を開け始めた俺の視界に、橙色の髪の女性……ミスリさんの顔が映り込む。

 そして、俺が待機室の中に声を発しながら入ろうとしたところで……、


「ハル・ハノイ他二名の時間内の到着を確認。と」

「資料に添付されていたお顔の通りですし、間違いなさそうですね」

「硬いなぁ……もうちょっと気楽に行こうよ」

「ました?」

「ま……」

 見知らぬ三人の女性が待機室の中に居るのが目に見えた。

 ああいや、三人の女性の内の一人、懐中時計を持って時間を確認しているミスリさんに似た女性に関しては、何処かで見た気がするな。

 何処で見たんだ?


「ん?どうしたんだい?ハル?」

「ハル君。どうしたの?」

「ワンス。トトリ」

 と、俺の後ろについていた二人も俺を押しのけるように待機室の中に入ってくる。

 そうして部屋の中に入ってきた二人の表情は困惑と……納得?いや、確認?敵視?うーん、良く分からない。

 なお、前者がトトリの表情で、後者がワンスの表情である。


「えと、ハル君。この人たちは?」

「や、俺にはさっぱり」

 トトリが俺に質問をしてくるが、俺にも彼女たちが此処に居る理由や彼女たちが何者なのかと言う事は分からないので、答えようがない。


「そこも含めて、これから説明する。まずは適当な席に着け。ハル・ハノイ。トトリ・ユキトビ。それにワンス・バルバロ」

「あ、はい……」

「ひうっ……」

「あいよ」

 と、そうしていた所、橙髪に銀色の目をしたミスリさんにどこか似た……けれどミスリさんと違って色々ときっちりしている感じの女性が俺たち三人に対して、席に着くよう指示をする。

 ミスリさんがジェスチャーで『ごめんなさい』と言っている所も見ると、やはりミスリさんの知り合いと言うか肉親なのだろうか?

 まあ、いずれにしても、俺たちが席に着かない限り話が進む事は無さそうなので、俺たちは揃って待機室内の適当な場所に腰掛ける。


「さて、マルキュウマルマル。定刻だ。集まるべきメンバーも全員揃ってもいるようだし、話を始めるとしよう」

 ミスリさん似の女性が懐中時計を持ってそう言う。

 ただ俺としては、話を進めるよりもまずは彼女らが何者なのかと言う事を明らかにしたいんだが……。


「そうですね。ただ、まずは全員で順々に自己紹介をするべきかと。我々と違って彼らは事前に連絡を受けていなかったようですし」

「と言うか僕らもお互いの顔と名前を多少知っているだけで詳しい事は何も知らないんだし、自己紹介は真っ先にするべきだと思うんだけど?」

「わ、私もまずは自己紹介をするべきだと思います!ボソッ……(姉さん気付いて!姉さん一人だけ先走り過ぎてるから!)」

「そうだね。アタシも何となくあの時見た覚えがある程度だし、話を円滑に進めるためにもまずは名乗るべきだと思うよ」

「うん。私もそう思う」

 と、俺以外の皆もそう思っていたのか、口々にそう言う。


「む、そうか。ならばまずは自己紹介と行くか……」

 そして、自分以外の全員の意見を受け、渋々と言った表情でミスリさん似の女性もまずは自己紹介をする事を受け入れてくれた。

 さて、本当に彼女らは何者なんだろうな?

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