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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第1章【堅牢なる左】
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第5話「廃墟-4」

「ニース!」

「分かっています!」

「なっ!?」

 人型の何かが人の名前らしき言葉を叫ぶ。

 と同時に崩れた壁の向こう側の空中に人影が現れる。

 だがそれは有り得るはずがない光景だった。

 と言うのも、人影は金属と革を組み合わせた宇宙服のような物を身に着けており、間違っても軽快に動けるとは思えないし、ましてや二階まで垂直に一息で飛び上がる事が出来るような装備とは思えなかったからである。


「くっ!」

 だが現実として人影は片手に剣のような物を持って、二階にまで飛び上がって来ている。

 どうやって垂直飛びからこちらに来るのかは分からない。

 分からないが、油断は間違っても出来なかった。

 故に俺は人影がどう動いても対応できるようにと短剣を鞘から引き抜くと、腰を多少落としながら身体の前に構える。


「はっ!」

「!?」

 そして、その対応は間違っていなかった。

 俺が柱の影から躍り出た時、空中に居た人影は有ろうことか()を踏み、異常な加速を得た上でこちらに向かって突進を仕掛けていたからだ。


「人間!?」

「え!?」

 俺の短剣と相手の剣の刃が正面からかち合い、大きな音と火花を撒き散らす。

 同時に相手から何かに驚くような声が上がる。

 だが、その驚きの意味を俺が問う機会は無かった。


「まず……!?」

 何故なら、その前に相手の剣から青白い稲妻の様なものが発せられ……


「イギッ!?」

 短剣を通じて俺の身体に流れ込み、その電撃の効果なのか俺の全身が仰け反り、痙攣を始め、電撃が止んだ時には俺は全身が痺れ、指一本まともに動かせない状態でその場に倒れていたからである。


「あー、やってしまいましたね……」

「ちょっと待てニース!今お前人間って言ったか!?」

「あ……ぐ……」

「ええ、そう言いました」

 剣を鞘にしまった上で、ニースと呼ばれた人間が俺の首元に多少強く手をやる。

 脈か何かを取っているのだろうか?

 俺としてはどうにかして会話をしたいと思っていたのだが、未だに身体は動かない。


「幸いな事に生きているようです。ドクターの言っていた珍しいものと言うのは彼の事で間違いないでしょうね」

「人型のミアズマントと言うわけじゃないんだな?」

「ええ、体温も脈もありますし、こちらの言葉に対して反応も返そうとしています。これでミアズマントだったらそっちの方が驚きと言うか……仮にミアズマントだったとしても珍しいものには変わりないかと」

「な……に……」

 頭上では会話は続いているが、俺の体は未だに動かない。

 と言うか本当に一体何を言っているんだコイツらは。

 ミアズマントって何だ?


「だとしても瘴気の中に居ても全く問題の無い人間か……珍しいとか特異体質だとか、そんな次元を通り越して居る気がするな……」

「ついでに言えば、狼級(ウルフクラス)のミアズマントなら即分解物の電撃を受けても生きてますし、耐久力の方も人間離れしているようですね」

「ま、ま……て……」

 って、ちょっと待て!瘴気とか、珍しいとか、特異体質だとか色々と気になる単語も有ったし、言っている言葉の意味が全て分かるわけじゃないが、さっき俺が喰らった電撃は耐えられたら人間離れしていると言われるほどにヤバい物だったのか!?

 そんなにヤバい物を人間相手に撃つような連中に俺は接触しようとしていたのか!?

 いやまあ、今俺の頭上でしている会話からして、ワザとでは無かったようだけど……もしかしなくても、早まったか?


「ふう。着いた着いた。ま、どちらにしてもドクターが言う珍しいものがそれだって言うんなら、回収すればいいんじゃないのか?」

「コルチ」

 と、ここで今まで何処に居るのか分からなかった、もう一人の宇宙服が階段を上って現れる。

 その腰には鉈が提げられ、左手には小ぶりな盾が填められている。

 ニースと言う宇宙服の言葉からして、どうやらこちらはコルチと言う名前らしい。


「そうだな。コルチの言うとおりだ。とりあえず回収するべきものをとっとと回収しちまおう」

「そうですね。ではコルチ。荷物の方は私が持ちますので、彼はお願いします」

「あいよ」

「う……ぐ……」

 コルチが俺の腰のあたりを掴み、まるで紙切れでも持ち上げるように容易く持ち上げる。

 先程のニースの動きと言い、もしかしなくても彼らが身に着けているこの宇宙服のような服には身体強化を上げるような力が有るのかもしれない。

 そして、コルチが俺を、ニースが俺の荷物を運ぶ中で、俺の耳が最後の一人……人型の何かに乗った奴の声を捉える。


「ああ俺だ。ダスパだ。ああ、うん。そうだ。ドクターの言っていた珍しいものと思しきものは回収したから、キャリアーの方を回してくれ。うん。うん。そうだ、ミアズマントの方も何匹か仕留めてある。そうか、この辺りで竜級(ドラゴンクラス)のミアズマントが確認されたって話が出てきてるのか。なら急いだ方が良さそうだな」

 どうにも最後の一人、ダスパと言う男性が誰かと会話しているようで、気が付けばエンジンの音がこちらに近づいて来ている。

 それにしても竜級って……もしかしなくてもあのビルを齧り取った奴の事か?


「おいニース!コルチ!お前ら二人とも急げよ!チンタラやってると拙い事になりそうだ!!」

「分かりました!」

「分かった!」

「ぐっ……」

 そして、幾つもの疑問が頭の中で浮かんでは巡り、訳が分からないことだらけの中で、俺は何処かに運ばれて行くのを感じつつも今までの疲れが出てしまったのか意識を落とした。

ここからは毎日12時投稿となります。


02/25誤字訂正

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