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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第1章【堅牢なる左】
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第43話「M1-4」

「えと、キャリアーと瘴巨人の最終確認ですが、キャリアーの方はハル様とワンス様のお二人で、瘴巨人の方は私とトトリ様のお二人で行います。それで問題ありませんか?」

「問題ないよ」

「大丈夫です」

「うん。大丈夫」

 キャリアーと瘴巨人の元に行く途中に、ミスリさんが確認対象に関する説明を俺たちにする。

 割り当てがこうなった理由は……まあ、単純だな。

 瘴巨人はトトリ専用の機体で、しかも外から見るにしても専門知識が必要だからであり、キャリアーの方は瘴巨人に比べれば構造が単純な上に、俺とワンスが運転を行うからだろう。

 うん。キャリアーの運転についてはしっかり基礎訓練で仕込まれたし、教わった通りにやれば、第1小隊のキャリアーに付いて行くぐらいなら問題ないはずだ。


「じゃ、ハル君も点検頑張ってね」

「おう」

 やがて、トトリの瘴巨人が片膝を立てた状態で座っているのが確認できたところで、俺とワンスはトトリとミスリさんの二人から離れて、キャリアーの点検を始める。


「それにしてもアレがトトリの瘴巨人か……」

 さて、トトリの瘴巨人だが、パッと見た感じではダスパさんの使っていた瘴巨人や、入隊試験の時に乗った瘴巨人とそこまで違うようには感じなかった。

 ただ、トトリ曰く基本の設計から合わせてあるとの事なので、キャリアーの確認作業の支障にならない程度にどこか違うのかを考えてみる。


 まず全体的なフォルムとしては丸みを帯びていて、シミ一つ無い純白の装甲含めて女性的な感じがしていた。

 それ以外の特色としては……妙に膨らんだ両手両足の裾部分の装甲と、腰回りに複数付けられていた直方体状の物体と、武器と思しき短剣が両腿に付けられていたのが挙げられるかな?

 後は……うーん、特に思いつかないな。


「しかし、トトリの瘴巨人は完全な新型だと聞いていたけど、見た目には特に変化は無かったね」

「ワンス」

 と、俺と一緒にキャリアーの確認作業をしていたワンスも、同じことを考えていたらしく、そんな事を呟く。


「ハルはトトリの瘴巨人について何か聞いていないのかい?」

「つい先日出来上がったばかりとかで、特には何も。ただ、トトリの特異体質に合わせて作ってあると言う事と、細かい操作や探査を得意にしているとは聞いてる」

「特異体質に合わせてねぇ……そうなると、弄ってあるのはやっぱり中身なのかね」

「中身?」

「ああ」

 そう言うと、ワンスは瘴巨人の構造についての簡単な説明をしてくれる。

 ワンスの説明によればだ。

 瘴巨人の基本構造は五種類……装甲も兼ねた外骨格、パイロットの意思を伝える指令系、逆にパイロットに情報を与える感覚系、瘴気の供給を行う瘴液庫、これらの物体を繋ぎ支える緩衝系とあり、その五つを組み合わせることによって、瘴巨人は作り上げられているらしい。

 加えて言えば、瘴巨人の操作方法が瘴巨人に乗り移って操るような物である関係上、大きく人の形から外れた形態をとらせるのは難しいのだとか。

 まあ、確かに第三の腕とか、尻尾とか付けても普通の人には動かせないだろうし、訓練して動かせるようになっても、それだけの苦労をする価値が有るかと言われればなぁ……うん。

 ちなみに、そんな事情が有ってか、瘴巨人の基本的な構造については、成立してから百年以上経っているにも関わらず、それほど変化していないそうだ。


「しかし、そうなるとトトリの瘴巨人で弄ってあるのは緩衝系、感覚系、指令系の三つって事か」

「まあ、そうなるだろうね。外骨格にはそこまでの変化は見られないし、瘴液庫にはそれほど弄る価値が有るとも思えないしね」

 なお、現在の俺たちはキャリアーの内装を確認しているのだが、ぶっちゃけ、以前乗ったダスパさんたち第3小隊のキャリアーとそれほど差は無い。

 リビング部分には三段ベッドに絨毯とテーブル、小さなキッチンに防護服を修繕するためのキットと応急治療用のキット、それに数日分の食料と水がしっかりと用意されているし、それ以外の部分……運転席、トイレ、エアロックに荷台についても、確認した限りでは問題なさそうだった。

 まあ、ミスリさんが手配してくれた職人さんたちが本格的な点検については予めやっていてくれたはずだしな。

 問題が無い方が当たり前か。


『ハル君聞こえる?』

「ん?」

 と、ここで運転席の方からトトリの声が聞こえてくる。

 どうやら、瘴巨人の通信機能を使って、こちらに連絡をしてきているらしい。


「ああ聞こえるよ」

『うん。私もハル君の声が聞こえるよ。通信機能に問題は無さそうだね』

「だな」

『それじゃあハル君。私の方は終わったから、キャリアーの荷台に瘴巨人を乗せてもいい?』

「分かった。ちょっと待ってくれ。ワンス」

「分かってるよ」

 あー……ワンスと喋りながら確認作業をしていたせいで、気が付かない程度に作業効率が落ちていたらしい。

 トトリの確認作業の方が先に終わってしまったようだ。

 俺とワンスは慌てて瘴巨人を置く部分に関する点検を終わらせて、問題が無い事を確かめると、トトリの瘴巨人を荷台の上に乗せて、しっかり固定をする。

 なお、キャリアーの中でも瘴巨人を乗せる部分は最後尾に有り、緊急時に発進し易くするために覆いなどは付けられていない。


「はい。お疲れ様です。出発前の点検・確認・準備作業完了です」

 で、瘴巨人を乗せる部分が最後の点検事項であった為、トトリが瘴巨人の中から出てきた時点で、ミスリさんがそう告げた。


「では、皆様の御無事をお祈りしています」

「ありがと」

「はい。頑張りますね」

「行ってくるよ」

 そして、ミスリさんの無事を祈る声を聞いた俺たちは全員キャリアーに乗り込み、俺が運転席に座るのと同時に回廊に繋がるシャッターが大きな音をたてながら開いていった。

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